知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律一部改正法律案

2019年10月21日

議案番号:22927

提案日:2019年10月21日

提案者:無所属 文喜相(ムン・ヒサン)議員外11人

提案理由

現行法上、不正競争行為および営業秘密などの知的財産権に準ずる法益が侵害されると、該当行為によって営業上の利益を侵害された者(以下、“被害者”という)は、その侵害行為に対する損害賠償を請求することができ、これに対し法院は損害賠償額を算定する際に、営業上の利益を侵害した者(以下、“侵害者”という)の利益額を被害者の損害として推定可能にすることで適切な民事的救済ができるよう、制度が運営されている。しかし、同損害額の算定方式は推定規定に過ぎず、被害者の生産能力の範囲内で損害額が認められるため、侵害者が被害者より生産能力が優れている場合には、侵害者が被害者の損害を賠償してもその利益額が残り、「侵害した方が得」と認識する問題点が提起されている。

また、同損害額の算定方式を適用するためには、被害者が侵害者の利益額を立証しなければならず、侵害者が保有している営業秘密などの主な情報を被害者が立証し、これを裁判過程で明らかにすることは事実上不可能であるため、立証責任が適正に分けられるよう制度を見直されなければならないという指摘がある。

不正競争行為および営業秘密などの知的財産権に準ずる法益はその侵害行為による被害が莫大であるにも関わらず、その侵害行為と損害を立証するには関連証拠が侵害者に偏重しており、関連紛争においての実体的な真実に接近するのが簡単ではないという問題がある。

そこで、侵害者がその侵害行為から得た利益額を侵害された者の生産能力とは関係なく、損害として認められるようにし、立証責任の範囲を適正に分ける一方、侵害者が保有した証拠に対し提出命令の対象と範囲を拡大し、法院の証拠提出命令に対する不応時の制裁効果の導入を通じて、提出命令の実効性を向上し、営業上の利益を侵害された被害者の効果的な権利救済を図るためである。

主要内容

イ.損害額を算定する方式の中、侵害者の利益額を侵害された者の生産能力とは関係なく損害と認められるようにし、営業上の利益を侵害された者及び侵害した者がそれぞれ立証すべき事項を明確に区分する(案第14条の2第2項)。
ロ.提出拒否の事由についての妥当性を確認するために、法官だけが事前に確認する秘密審理手続きを導入する(案第14条の3第2項新設)。
ハ.侵害の証明又は損害額の算定の際に必ず必要な場合には、営業秘密であっても提出義務を課し、法院の提出命令に従わないときには、相手の主張事実を真実のものと認められる制裁規定を導入する(案第14条の3第3項から第5項まで新設)
二.損害額の算定のための鑑定人に対し当事者の説明義務を課すことで、迅速・的確な損害額の算定を図る(案第14条の8新設)。

不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律一部改正法律案

不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律の一部を次のとおり改正する。

第14条の2の題目 「損害額の推定等」を「損害額の算定等」とし、同条第2項中「侵害行為により利益を受けたものがあるならば、その利益額を営業上の利益を侵害された者の損害額と推定する」を「侵害行為により得た売上額の中、侵害行為と関連して追加的にかかった費用を除いた金額を、営業上の利益を侵害された者が受けた侵害額と推定するものの、侵害した者の生産能力は考慮しない。この場合、その売上額は営業上の利益を侵害された者が証明しなければならず、その費用は営業上の利益を侵害した者が証明する」とする。

第14条の3の題目以外の部分を第1項にし、同条第1項(従来の題目以外の部分)本文中「該当の侵害行為による損害の額を算定する」を「該当侵害の証明及び侵害による損害を計算する」とし、同条第2項から第5項までを次のとおり新設する。

(2)法院は資料の所持者が第1項による提出を拒否する正当な理由があると主張する場合には、その主張の当否を判断するために資料の提示を命ずることができる。この場合に法院は、その資料を他人に供してはならない。

(3)第1項により提出しなければならない資料が営業秘密に該当するものの、侵害の証明又は損害額の算定に必ず必要なときには、第1項ただし書きによる正当な理由として認めない。この場合に法院は、提出命令の目的内で閲覧することができる範囲又は閲覧することができる人を指定しなければならない。

(4)当事者が正当な理由なしに資料提出命令に従わないときには、法院は資料の記載に対する相手の主張を真実のものと認めることができる。

(5)法院は第4項に該当する場合、資料の提出を申請した当事者が資料の記載に関して具体的に主張することが顕著に困難な事情があり、資料で証明する事実を他の証拠で証明することも期待することができないときには、その当事者が資料の記載によって証明しようとする事実に関する主張を真実のものと認めることができる。

第14条の4第1項第1号中「準備書面又は既に調査したか調査しなければならない証拠」を「準備書面、既に調査したか調査しなければならない証拠又は第14条の3第2項によって提出したか提出しなければならない資料」とする。

第14条の8を次のとおり新設する。

第14条の8(鑑定事項の説明義務)不正競争行為、第3条の2第1項か第2項を違反した行為又は営業秘密の侵害行為による営業上の利益の侵害に関する訴訟にて、法院が侵害による損害額の算定のために鑑定を命じたときには、当事者は鑑定人に鑑定に必要な事項を説明しなければならない。

附則

第1条(施行日)この法は公布した日から施行する。

第2条(適用例)第14条の2、第14条の3、第14条の4、第14条の8改正規定は、この法の施行以後、最初に提起される訴訟から適用する。

新旧条文対照表

現行 改正(案)
第14条の2(損害額の推定等) (1)~(省略) 第14条の2(損害額の算定等) (1)~(現行と同様)
(2)不正競争行為、第3条の2第1項か第2項を違反した行為又は営業秘密の侵害行為による営業上の利益を侵害された者が、第5条又は第11条による損害賠償を請求する場合、営業上の利益を侵害した者が、その侵害行為により利益を受けたものがあるならば、その利益額を営業上の利益を侵害された者の損害額と推定する。 (2)不正競争行為、第3条の2第1項か第2項を違反した行為又は営業秘密の侵害行為による営業上の利益を侵害された者が、第5条又は第11条による損害賠償を請求する場合、営業上の利益を侵害した者が、その侵害行為により得た売上額の中、侵害行為と関連して追加的にかかった費用を除いた金額を、営業上の利益を侵害された者が受けた侵害額と推定するものの、侵害した者の生産能力は考慮しない。この場合、その売上額は営業上の利益を侵害された者が証明しなければならず、その費用は営業上の利益を侵害した者が証明する。
(3)~(7)(省略) (3)~(7)(現行と同様)
第14条の3(資料の提出) 法院は、不正競争行為、第3条の2第1項か第2項を違反した行為又は営業秘密の侵害行為による営業上の利益の侵害に関する訴訟にて、当事者の申請により、相手方の当事者に対して該当侵害行為による損害の額を算定するのに必要な資料の提出を命ずることができる。但し、その資料の所持者がその資料の提出を拒絶する正当な理由がある場合には、この限りでない。 第14条の3(資料の提出) 法院は、不正競争行為、第3条の2第1項か第2項を違反した行為又は営業秘密の侵害行為による営業上の利益の侵害に関する訴訟にて、当事者の申請により、相手方の当事者に対して該当侵害の証明及び侵害による損害を計算するのに必要な資料の提出を命ずることができる。但し、その資料の所持者がその資料の提出を拒絶する正当な理由がある場合には、この限りでない。
新設 (2)法院は資料の所持者が第1項による提出を拒否する正当な理由があると主張する場合には、その主張の当否を判断するために資料の提示を命ずることができる。この場合に法院は、その資料を他人に供してはならない。
新設 (3)第1項により提出しなければならない資料が営業秘密に該当するものの、侵害の証明又は損害額の算定に必ず必要なときには、第1項ただし書きによる正当な理由として認めない。この場合に法院は、提出命令の目的内で閲覧することができる範囲又は閲覧することができる人を指定しなければならない。
新設 (4)当事者が正当な理由なしに資料提出命令に従わないときには、法院は資料の記載に対する相手の主張を真実のものと認めることができる。
新設 (5)法院は第4項に該当する場合、資料の提出を申請した当事者が資料の記載に関して具体的に主張することが顕著に困難な事情があり、資料で証明する事実を他の証拠で証明することも期待することができないときには、その当事者が資料の記載によって証明しようとする事実に関する主張を真実のものと認めることができる。
第14条の4(秘密維持命令) (1)法院は、不正競争行為、第3 条の2 第1 項か第2 項に違反した行為又は営業秘密侵害行為による営業上利益の侵害に関する訴訟で、その当事者が保有した営業秘密に対して次の各号の事由をすべて疎明した場合には、その当事者の申請によって決定で他の当事者(法人の場合にはその代表者)、当事者のために訴訟を代理する者、その他該当訴訟によって営業秘密を知ることになった者に、その営業秘密を該当訴訟の継続的な遂行以外の目的に使用するか、その営業秘密に関連したこの項による命令を受けた者以外の者に公開しないことを命ずることができる。ただし、その申請時点までに他の当事者(法人の場合にはその代表者)、当事者のために訴訟を代理する者、その他該当訴訟によって営業秘密を知るようになった者が、第1 号に規定された準備書面の閲覧や証拠の調査以外の方法でその営業秘密を既に取得している場合には、この限りでない。
1.既に提出したか提出すべき準備書面又は既に調査したか調査すべき証拠に営業秘密が含まれているということ
第14条の4(秘密維持命令) (1)法院は、不正競争行為、第3 条の2 第1 項か第2 項に違反した行為又は営業秘密侵害行為による営業上利益の侵害に関する訴訟で、その当事者が保有した営業秘密に対して次の各号の事由をすべて疎明した場合には、その当事者の申請によって決定で他の当事者(法人の場合にはその代表者)、当事者のために訴訟を代理する者、その他該当訴訟によって営業秘密を知ることになった者に、その営業秘密を該当訴訟の継続的な遂行以外の目的に使用するか、その営業秘密に関連したこの項による命令を受けた者以外の者に公開しないことを命ずることができる。ただし、その申請時点までに他の当事者(法人の場合にはその代表者)、当事者のために訴訟を代理する者、その他該当訴訟によって営業秘密を知るようになった者が、第1 号に規定された準備書面の閲覧や証拠の調査以外の方法でその営業秘密を既に取得している場合には、この限りでない。
1.既に提出したか提出すべき準備書面、既に調査したか調すべき証拠又は第14条の3第2項によって提出したか提出すべき資料に営業秘密が含まれているということ
2.(省略) 2.(現行と同様)
(2)~(5)(省略) (2)~(5)(現行と同様)
新設 第14条の8(鑑定事項の説明義務)不正競争行為、第3条の2第1項か第2項を違反した行為又は営業秘密の侵害行為による営業上の利益の侵害に関する訴訟にて、法院が侵害による損害額の算定のために鑑定を命じたときには、当事者は鑑定人に鑑定に必要な事項を説明しなければならない。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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