知的財産情報(知財関連法律改正の動き) 特許法一部改正法律案

2018年12月28日

議案番号:2017894

提案日:2018年12月28日

提案者:共に民主党 パク・ボンゲ(朴範界)議員外10人

提案理由および主要内容

特許制度は最初の発明を特許権として保護することで、他人の実施を制限し、特許権者には該当特許権に伴って発生する実施料など利益を享受できるようにして産業発展を図り、特許権を侵害した場合は損害賠償制度に基づき、特許権者が被った損害のてん補および特許権侵害行為を抑制している。

このような観点から、市場では特許権を侵害した者が特許権者の生産能力を超過する場合に特許権者の生産能力を限度にして損害賠償するのは、侵害者が不当な利益を取ることになるため、制度の本来の機能が発揮できないとの指摘がある。

つまり、特許権を侵害した者の生産能力が10,000で、特許権者の生産能力が100とすれば、特許権者が受けられる最大の賠償範囲を100に限定することになるため、特許権者の生産能力を超過する9,900に伴う利益については侵害者が保有することになり、特許権侵害を防止することができないということである。

そのため、市場では特許権の正当な利用料を支払うよりは、侵害になる恐れがあっても実施して利益を得て、侵害が確認されればその時に損害賠償額を支払った方が良いという認識広がっているのが現状である。

一方、特許権者又は専用実施権者は裁判に勝訴しても実質的な損害賠償額ではなく少額しか受けられず、裁判をあきらめるなど特許権侵害の悪循環が繰り返されている。 このような適正でない損害賠償額の一因は損害賠償を算定する方式にある。特許権侵害に対する損害額算定において、有体財産権に適用する伝統的損害賠償の法理である実損てん補の原則に則り、特許権者の生産能力を損害の最大値に限定するためである。

しかし、今日、特許権を活用した製品の製造方式がOEMをはじめ、多様な方式で行われていること、生産をしなくても特許権者は多くの製造業者と実施契約を締結して実施する可能性があることなど特許権の特性を考えれば、侵害者が特許権者の生産能力を超過して取得した利益は当然、特許権者が得ることができた利益と見る必要がある。

これに関連して現行特許法に侵害者の利益を特許権者の損害と推定する規定があるが、これも特許権者の生産能力の範囲内での損害に制限して解釈するため、侵害者は特許権者の生産能力を超過する利益額を保有することになる不合理なことが起きている。

そこでこの問題を解決し知的財産権の特性を踏まえて、特許権者が侵害者を相手取って侵害行為によって得た利益額についての全額返還請求を可能にする規定を追加するためである。

このような侵害者利益の全額返還請求はEU、ドイツ、英国、中国、台湾などで採用されており、特にドイツでは75%、台湾では90%以上を判決で活用している。 これに対し、知的財産権をめぐる侵害訴訟に関する世界的な流れに沿い、不法行為に対する定義に合致するように、侵害者が侵害行為を行って得たすべての利益を特許権者が返還請求できる権利を新設するとともに、特許権者は侵害者の売上高を立証し、侵害者は侵害行為にかかった費用を立証するようにし、特許権者が特許訴訟で損害額を算定するための立証資料を確保することが難しい問題も解決するためである。

また、現行損害賠償請求権と損害額算定方式に関する規定の正確な法理を伝えるために、関連規定を整備するためである((案)第128条第1項から第4項までおよび第8項)

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