知的財産ニュース 特許審判院、「審判-調停連携制度」により半導体特許紛争を解決

2025年6月26日
出所: 韓国特許庁

紛争より共生を選んだ中小企業の事例、今後も協力関係の強化へ

韓国特許庁の特許審判院は、半導体装備分野の国内企業間での特許無効審判事件が調停によって当事者間で迅速な合意を通じて事件を終結させたと発表した。

調停:裁判外紛争解決手続き(ADR、Alternative Dispute Resolution)の一つであり、第三者である調停人により解決を図るもので、調停成立時は裁判上の和解といった効力がある

知財権の紛争は審判・訴訟手続きによって解決することが一般的だが、紛争解決に長時間や高額の費用がかかるデメリットがる。また、審判・訴訟は勝訴・敗訴といった結果になるため、紛争終結後に当事者間で協力を図ることは難しいという。

このような点からこれまでは商標・意匠分野を中心に審判-調停連携制度を施行してきたが、今年特許分野においても同制度を活性化するための制度や手続きを設け、今回韓国の半導体企業間での特許紛争を解決したのが初事例となった。

審判-調停連携制度:審判長が審判手続きより調停による解決が適合していると判断した審判事件について量当事者から同意を得て産業財産権紛争調停委員会による調停手続きに回付する制度。この場合に限って審判長と審判官が調停委員として参加し、調停期間は最長6月以内で、別途費用はかからない。

審判院は、半導体装備にかかる特許について無効理由を判断するに先立ち、紛争の原因を把握した上で対立が高まる前に調停手続きを活用することをすすめた。この意見に両社が同意して当該事件は調停手続きに回付(2025年3月10日)され、審判官が直接参加する調停部が迅速に構成された。両側は2回にわたる調停会議(2025年4月~5月)と複数回の協議を経て当該特許権を共有することで合意し、3か月で調停成立・事件終結(2025年6月10日)という結果となった。さらに、両社は納品など協力契約を再開し、今後共同で技術開発を進めることで合意した。

今回の事例は、単なる紛争解決ではなく両当事者間で協力関係を回復させる成果となった。とりわけ、世界的に技術開発競争が激しい半導体分野で、国内企業同士で力を合わせて韓国の半導体技術の優位を確保し、産業の競争力強化に寄与する事例だと評価できる。

今回、調停制度を利用した企業の代表は「審判部から調停制度を利用するよう推奨されなかったら、紛争が長く続いて経営にも大きな負担になっていたと思う」とし、「調停手続きにより紛争を迅速に解決し、両社が協力関係を回復させることができた。調停部に大変感謝する」と感想を述べた。

特許審判院長は「今回の事件は『審判‐調停連携制度』が紛争の有効な解決手段の一つになることを証明した事例だと思う」とし、「今後も調停制度の方が適合している事件の場合は知財紛争を迅速かつ柔軟に対応して企業間の共生を図れるよう努力する」と述べた。

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