知的財産ニュース 韓国特許庁、産業財産権紛争調停委員会の発足30周年記念式を開催
2025年5月14日
出所: 韓国特許庁
個人・中小企業の知財紛争を解決する心強い存在
韓国特許庁は5月14日水曜日、朝鮮(チョソン)パレスソウル江南(カンナム)(ソウル市江南区)にて産業財産権紛争調停※委員会(以下、「委員会」)発足30周年記念式を開いた。
※特許・商標・営業秘密など知財紛争を専門家の相談を受けて当事者間の対話と合意により解決する制度で、迅速で経済的に紛争を解決でき、調停成立時に確定判決と同一の「裁判上の和解」の効力があるため、訴訟に代わる紛争解決手段として使われる
産業財産権紛争調停の発足30周年を記念して成果の共有および褒賞などイベントを行う
記念式には、キム・ワンギ特許庁長、オ・ミンソクソウル中央地方法院長、キム・ヨンソン韓国知識財産保護院長をはじめ、産業財産権紛争調停委員など約100人が参加し、30周年の記念やこれまでの成果を振り返り、紛争解決機能の強化に向けた制度の改善策について話し合った。
記念式では、技術的・法律的な専門性を基に当事者間で紛争の合意による解決を図ってきた調停委員に褒賞を与えた。今年の受賞者は、チョン・ヨンギ弁理士(特許法人チョンアン、商標・意匠分野)、チョン・へヤン弁理士(キムアンドチャン法律事務所、特許分野)、イ・ジウン弁護士(法律事務所リバティ、法律分野)であり、最近3年間の紛争調停実績、紛争調停制度の発展への寄与度、業務の難易度などを評価し最優秀な3人が選ばれた。また、最も長い間、産業財産権紛争調停の発展のために献身してきたキ・ウナ弁護士(タソル特許法律事務所)には感謝牌を授与した。
産業財産権の紛争調停、1995年4件→2024年160件と着実に成長
1995年発足当初は産業財産権の紛争調停の申請件数が4件に過ぎなかったが、2017年57件、2021年83件、2024年には160件へと急増するなど着実に成長し、企業の知財紛争を解決する手段として定着している。
とりわけ、直近10年間(2015年~2024年)における産業財産権紛争調停制度の活用状況を分析したところ、活用主体でみると、個人・中小企業による申請(697件)が91%と、比較的に紛争に要する費用や時間の負担が大きい個人・中小企業が多く活用していることがわかった。調停対象をみると、商標・意匠事件(491件)が全体事件の64%と最も多く申請されたが、特許・営業秘密の紛争(179件)も23%を占め、さまざまな知財分野で幅広く利用されているといえる。期間については事件の受付から処理まで平均79日がかかり、訴訟に比べて約5~8倍※迅速に処理されていることがわかった。
※直近5年間(2019年~2023年)第一審の平均処理期間:特許606日、商標368日(2023年、知財保護政策執行に関する年次報告書)
成立率をみると、両当事者が調停に応じた件数全体の半分以上(62%)は調停が成立されるなど効果的に紛争を解決したとみられる。知財紛争は、技術の類似性や権利侵害の成否などを判断する難しい内容の紛争であるが、委員会の専門性を積極的に活用した結果、一般的な調停制度※に比べ30%ポイント以上高い調停成立率となっている。
※民事調停成立率30.6%(2024年、司法年鑑)
特許庁長は「産業財産権紛争調停委員会は、技術紛争調停委員会の中で最も歴史が長いだけではなく、最も多くの紛争を受け付け解決している委員会である」とし、「今後も特許庁はより多くの企業が訴訟の代わりに紛争調停により解決を図れるよう、委員会の専門性の強化、裁判所・警察など関係機関との連携の強化、電子調停システムの導入など、ユーザーフレンドリーな制度改善を進めていく」と述べた。
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