知的財産ニュース 韓国特許庁、企業の経営戦略に役立つ直近10年の商標登録出願ビッグデータ約230万件を公開
2025年5月7日
出所: 韓国特許庁
大手企業では専門サービス業、中小企業では卸・小売業分野の出願件数が増加
韓国特許庁は6日、直近10年間(2015年~2024年)の商標ビッグデータを基に、産業別の商標出願の動向、主要・コア産業の変化、商標と景気変動の関係、出願人類型別の産業の特徴などを分析した結果を企業が活用できるよう提供すると発表した。
製造業、情報通信、卸・小売業からの出願の割合が増加
特許庁は、直近10年間集めた約230万件の商標登録出願データを基に産業分野別の出願や割合の変化などを分析した。
産業分野別の出願動向をみると、製造業による商標登録出願が約125万件と最も多くなっている。次は通信サービス/コンテンツ/ゲームなど情報通信関連産業が約46万件、流通・販売の卸・小売業が約40万件の順となっている。製造業の場合、食料品など日常生活に密接に関わる分野での出願が多かった。
産業分野の割合の変化をみると、卸・小売業は13.7%から20.6%と増え、情報通信業は17.4%から19.9へと増加している。一方、化粧品など製造業の件数は55.1%から52.2%と減少している。これは、韓国経済の産業構造が製造業からサービス業へとシフトしており、商標登録出願の動向もこのような産業構造の変化から影響を受けていると思われる。
大手企業は専門サービスや情報通信分野、中小企業は卸・小売業分野の出願が増加傾向
出願人を類型別でみると、大手企業は研究開発や情報分析といった知財基盤の高付加価値の専門サービスや情報通信分野の出願件数がこの10年間、それぞれ年平均3.2%、2.8%増加している。
一方、小規模事業者など中小企業の場合はオンライン消費の拡大やオンライン上での流通の活性化により、卸・小売業分野の出願件数がこの10年間年平均8.4%と最も大きく増えた。
商標ビッグデータ、産業や景気の動向を把握する資料として活用できる
韓国銀行が発表した「企業景気予測調査(BIS)」を基に産業別に商標登録出願と景気変動の関係を分析した結果、製造業、卸・小売業、専門サービス業での商標登録出願は景気の動きと「一致」または「遅行」して反応することがわかった。
一方、「建設業、運輸倉庫業」では景気の動向に先行していることがわかった。これは、産業や景気の動向を把握・予測できる統計資料として商標登録出願データが活用できることを意味する。
特許庁は2023年から商標情報を産業的な観点から分析して有望な市場分野を把握し、企業のビジネス戦略をサポートする「商標ビッグデータ分析事業」を行っている。今後も商標情報が景気指標の一つとして活用されるよう統計関連機関との連携も進めていく考えだ。
また、このような分析結果を基に毎月、産業別の協会や団体を訪問し、産業別に商標制度やビジネス戦略について説明し、現場の声を集める考えだ。
特許庁の商標デザイン審査局長は「この10年間における商標登録出願ビッグデータの分析により、韓国経済や産業の流れを把握し、企業が商標を使ったビジネス戦略を立てる上で有用な情報を提供できると期待される」とし、「今後は海外市場の環境や世界的なライバル会社の商標まで分析の幅を広げ、韓国企業の海外進出により積極的に寄与できる方向性で事業を拡大していく」と述べた。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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