知的財産ニュース 韓国特許庁、「名品特許」に向け「知財戦略研究会」を発足
2025年3月26日
出所: 韓国特許庁
企業・研究機関・学界・法曹界と「名品特許」を生み出す知財政策のパラダイムシフトへ
韓国特許庁は3月26日水曜日、ソウル三井(サムジョン)ホテルにて「知財戦略研究会」(以下、「戦略研究会」)を立ち上げ、第一次会合を開いた。戦略研究会は、「名品特許」で知財政策のパラダイムを変える方策について議論する趣旨であり、ペク・マンギ韓国知識財産研究院理事長が委員長を務め、企業・研究機関・学界・法曹界など17人の主要人物※が参加している。
※韓国中堅企業連合会常勤副会長、知識財産サービス協会長、大韓弁理士会長、知識財産学会長、研究所技術移転協会長、大学技術移転協会長、韓国革新学会長、半導体産業協会常勤副会長、LGエナジーソリューション、現代(ヒョンデ)自動車、ABION BIO(株)、(株)TECHRAN、韓国科学技術研究院、電子新聞など
韓国は経済規模に比べて特許出願件数※が多いが、源泉・コア特許の不在により産業財産権の貿易収支※※の赤字が続いており、経済的価値の向上が迫られている。科学技術界からも特許成果について量から質へとシフトする必要があるとの指摘が相次いでいる。さらに、トランプ政権の再登場以降、米国が強い特許へと戦略を進めている中で、米中間の技術覇権争いが激化していくとみられ、このような背景から高品質の特許の重要性が浮上している。
※GDP比内国人による出願(2023年、件/10億ドル):韓国73.1、中国48.8、日本39.7、ドイツ12.1、米国11.1
※※産業財産権の貿易収支(億ドル):(2022年)△24.6→(2023年)△16.6→(2024年)△18.4
これまで特許庁は、儲かる特許という意味の「名品特許」を生み出し、経済的利益を上げるために知財政策の方向性をシフトする作業に取り組んできた。「名品特許」とは、経済的価値の高い革新的な技術について独占権を広く確保し、第三者にとって有効かつ明確であって権利の安定性の高い、儲けになる特許をいう。
特許庁はこのような「名品特許」を生み出せるよう、今回の戦略研究会を通じて研究開発、特許出願・審査・審判、取引・事業化、輸出、知財権保護など知財エコシステムの全般において重点課題を洗い出し、企業・研究機関など技術革新の主体と専門家からの意見を幅広く取り入れて政策の実効性を高めていく。
会合に参加した委員は、特許分析基盤の研究開発による成果の品質向上、企業・研究機関・代理人による特許出願の品質向上、革新的技術を「名品特許」にする審査の革新、特許権の安定性を高める審判制度の改善、「名品特許」を経済的利益につなげる事業化・輸出の促進、裁判において知財価値を正しく保護する基盤づくりなど、推進戦略について議論した。
会議を主宰したペク・マンギ委員長は「価値のある特許というのは、優秀な技術力だけで生み出せるものではなく、市場と政策の支えがあってこそ実現できるものだと思う」とし、「知財戦略研究会は、韓国特許の価値を高めるために各主体からの意見の取りまとめや認識の向上に取り組んでいく」と述べた。特許庁と戦略研究会は来月から「知的財産戦略フォーラム」を毎月開き、踏み込んだ議論の場を設け、民間からの意見を幅広く取り入れることにした。
とりわけ、特許庁は、特許を基盤にグローバルリーダーとして成長していく中堅企業※が堅実な「名品特許戦略」を構築できるよう、さまざまな意見を集める考えだ。そのため、韓国中堅企業連合会が戦略研究会と知財戦略フォーラムに積極的に参加し、4月2日水曜日には特許庁と韓国中堅企業連合会間で業務協約を結び、知財政策のシフトや企業の競争力強化に向けた協力を高めることで合意した。
※韓国において中堅企業の数は企業全体の1.4%に過ぎないが、全体輸出の18%、売上高の15%、雇用の14%を占め、保有する産業財産件数は平均51.5件(特許・実用新案20.7件、商標26.6件、意匠4.2)となっている(2023年時点)
キム・ワンギ特許庁長は「特許制度の最終的な目的は産業の革新であり、それを実現するために知財政策の方向性を品質中心へとシフトする時期に来ている」とし、「今後も関係部処と共に各主体が知財エコシステムの全般にわたって『名品特許』を生み出せる方向へと政策の実行に取り組んでいく」と述べた。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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