知的財産ニュース 韓国特許庁・釜山(プサン)回生法院、「回生・破産企業のIP活用促進に向けた業務協約」を締結
2025年1月17日
出所: 韓国特許庁
企業の回生・破産手続きの有効活用に向けた知財権の売却・活用を本格的に支援
回生・破産企業における保有IPの活用事例
#自分が保有する特許を担保に(以下、「担保IP」)銀行から融資を受けたソフトウェア会社A社は、コロナ禍による経済停滞の影響を受けて2022年に回生手続き(企業再生と似た概念)を行ったが、経営を正常化するための回生計画の許可を受けることが難しかった。そのためには債務の一定額を返済する必要があったためだ。しかし、A社は特許庁の「セール・アンド・ライセンスバック(Sale&License Back)プログラム※(以下、「SLBプログラム」)」の支援を受けて、担保IPを処分して債務返済に活用したことで、裁判所から回生計画の許可を受けることができ、処分した担保IPを続けて使用したことで経営の正常化を早期に実現することができた。
※SLBプログラム:特許庁が企業から担保IPを買い入れて企業の債務返済を支援するとともに、担保IPに対し実施権を与えて引き続き担保IPを活用できるように支援する
#自動車部品メーカーB社は、2018年破産手続きに入り、保有していた特許権、意匠権など26の知財権を活用して債務返済を試みたが、適切な購入先が見つからず危機に直面していた。
しかし、韓国発明振興会所属の知的財産取引所は長年にわたるIP仲介の経験を基にB社の知財権の購入を希望するC社に売却させ、債務の返済に大きく役立った。
韓国特許庁と釜山(プサン)回生法院(裁判所に当たる)は1月17日金曜日、釜山回生法院(以下、「法院」)にて「回生および破産企業の知的財産権(IP)活用促進に向けた業務協約」を締結したと発表した。今回の協約は、釜山(プサン)・蔚山(ウルサン)・慶南(キョンナム)地域所在の企業が知財(IP)を活用して経済的回復や正常化を図れるよう支援することに重点を置く。
協約の締結により、回生企業は裁判所からの迅速な許可を基に特許庁、韓国発明振興会、インテレクチュアルディスカバリー(株)からなる「IP担保貸出回収支援機構※」を介して担保IPを売却し一定額の債務を返済できる。また、SLBプログラムの支援を受けて所定の実施料で担保IPを活用して事業を継続させることができ、経営正常化後には売却した担保IPを再度買い入れる優先権が与えられる。これは、円滑に回生手続きを行う可能性を高め、経営正常化にも大きく寄与すると期待される。
※IP担保貸出回収支援機構:特許庁、韓国発明振興会、インテレクチュアルディスカバリー(株)が所属し、中小企業がIPを担保に融資を受けた後、債務返済不能になった場合、その担保IPを銀行から買収することで金融機関の損失を軽減する機能を担う
これまでIP取引市場で需要のある企業を見つけることが難しかった破産企業は、特許庁の知的財産取引所と協力して知財売却のための取引の支援を受けることができる。特許庁は専門家により破産企業の知財売却を仲介し、法院はそれに対する仲介手数料を払うなど円滑な手続きを支援する。これにより、破産企業は知財権をより迅速かつ効率的に清算できるとみられる。
今回の協約により、回生および破産手続きを行う企業が知財権を有効活用して債務を返済し、経済的基盤を作り直すにも重要な役割を果たすと思われる。
釜山回生法院長は「今回の特許庁との業務協約は、法人回生手続きと法人破産手続きの両方を包括しているという点で意義がある」とし、「回生企業は迅速に知財を売却し、安価に実施権を付与されることで経営を立て直すことができ、債権者は需要先を見つけることが難しい知財権の売却が活性化されることで債権を回収する可能性が高くなると思う」と述べた。
特許庁長は「首都圏エリアに限られていた破産企業への支援を釜山・蔚山・慶南地域まで拡大させることができた」とし、「今後も釜山回生法院と協力して回生および破産企業が知財権を活用して危機を乗り越えることができるよう手厚く支援し、革新的な企業が知財権を基に資金を調達し、危機的な状況の中でも資産として活用できるよう環境づくりに取り組む」と述べた。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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