知的財産ニュース 技術流出防止、医薬品の特許権の存続期間の延長などを盛り込んだ「改正特許法」が成立

2024年12月27日
出所: 韓国特許庁

国防上必要な発明の秘密取扱命令の違反時の処罰、特許発明の実施行為に輸出を追加、医薬品の特許権の存続期間の延長に上限を導入など

韓国特許庁は、特許技術の海外流出の防止に向けた特許法、実用新案法改正案と、医薬品の選択権の拡大に向けた特許法改正案が12月27日金曜日、国会の本会議で成立※したと発表した。
※2025年1月中、改正法律案の公布予定→公布後6月経過した日から施行

<改正事項1>国防上必要な場合、外国に特許出願することを禁止若しくは特許発明を秘密として取り扱うようにする政府命令(以下、「秘密取扱命令等」という)を違反した場合5年以下の懲役又は5千万ウォン以下の罰金に処する※
※特許法第229条の3及び実用新案法第49条の3の新設

現行法では、秘密取扱命令等を違反した場合における罰則の規定が不在するため、違反した際に対する制裁が十分ではないところがあった。一方、米国・日本・中国など主要国では秘密取扱命令等を違反した者に対する刑事処罰の規定※が定められている。
※[懲役/罰金](米国)2年以下/1万ドル以下、(日本)2年以下/100万円以下、(中国)3~7年

従って、国防上必要な場合、秘密取扱命令等の実効性を確保するために秘密取扱命令等を違反した者に対し適用する罰則規定を新設した。また、秘密取扱命令等の違反者に併せてそれに対する管理監督の義務のある法人、代表者等に対してもその責任を問う目的から1億ウォン以下の罰金に処する両罰規定※を追加した。
※特許法第230条及び実用新案法第50条に本人に対する罰金刑(5千万ウォン)の2倍に規定

<改正事項2>特許発明の実施行為の類型の一つに輸出を追加※することで、特許権者は特許侵害製品を輸出する者に対しても特許侵害の差止請求ができるのみならず、損害賠償請求又は侵害罪※※に対する責任を問うことができる
※特許法第2条第3号、実用新案法第2条第3号(実用新案の場合、考案の実施に輸出を追加)
※※特許法第225条(侵害罪):特許権侵害者に対し7年以下の懲役、1億ウォン以下の罰金を処する

韓国は2023年時点、世界8位の輸出国、世界10位の輸入国である、世界的に大きな貿易規模にもかかわらず、現行の特許法では実施行為の類型に輸入は含まれているが、輸出※は含まれていない。
※知識財産権法のうち、商標法は1974年、デザイン保護法は2011年に輸出を追加

関税法や不公正貿易行為の調査及び産業被害救済に関する法律(「不公正貿易調査法」)では、特許侵害製品が輸出されることを税関で防止するか課徴金を科すことはできるが、損害賠償請求又は侵害罪等の積極的な保護については規定されていない。

今回の法改正により、輸出においても特許権者をより積極的に保護することができる。

<改正事項3>医薬品の特許権の存続期間の延長は、医薬品の許可等から14年を超過できないように上限※を設け、一つの許可等について延長可能な特許権数を1つに制限する※※
※特許法第89条第1項の但し書の新設/※※特許法第90条第7項の新設等

特許権の存続期間の延長制度は、医薬品の特許は食品医薬品安全処から許可等を受けるには長時間がかかるため、特許を受けたにもかかわらず、許可等を受けることができなかったため、発明を実施することができなかった期間を一定の要件の下で延長する制度である。

ただし、韓国の特許法は諸外国※とは異なり、医薬品の特許権の存続期間の延長に上限がなく、一つの許可に延長可能な特許権数にも制限がない。
※[存続期間の上限/一許可当たり延長特許数](米国・中国)許可等~14年/一つ、(欧州)許可等~15年/一つ

そのため、一部の医薬品の場合、主要国より特許権の存続期間が相対的に長く延長されるため、ジェネリック医薬品の販売がその分遅れることにより、国民の医薬品への選択権の縮小、健康保険の財政悪化などの問題が生じ得るとの指摘があった。

今回の法改正により、医薬品の存続期間の延長を米国、欧州など主要国の基準に合わせ、過度な存続期間の延長を防止することで国民の医薬品への選択権を拡大し、健康保険の財政問題の解決に寄与できると期待される。

特許庁の特許審査企画局長は「国民が期待する水準に合わせて特許権の確保による革新的な技術を保護することが国家競争力の確保につながると思う」とし、「今回の特許法改正により、国家安全保障や経済に直接かかわる韓国の特許技術への保護や国民健康の向上に寄与できると期待する」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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