知的財産ニュース 意匠登録出願手続きの国際調和を図る「意匠法条約」がリヤドで採択

2024年11月26日
出所: 韓国特許庁

韓・米・日の連携により国益にかなう方向で条約の内容を策定

韓国特許庁は、「リヤド意匠法条約(Riyadh Design Law Treaty)(以下、「条約」)」がサウジアラビア・リヤドで開催(2024年11月11日~22日)された外交会議で採択されたと発表した。韓国政府は、今回の外交会議に特許庁・韓国知識財産研究院からなる代表団を派遣して同条約が国益にかなう国際ルールになるよう米国や日本など主要先進国と緊密な連携を図り積極的に対応した。

【「リヤド意匠法条約」の概要】
・(目的)各国で異なる意匠登録出願における手続きを簡素化することにより、出願人の負担を軽減することを目的とする手続法性格の条約の策定
・(経過)2005年議論開始以降、2011年に条約の草案が作成されたが、条約の履行において開発途上国などへの技術支援および能力強化などをめぐり意見が対立(2012年~)、2022年に外交会議の開催を決定
・(内容)出願日の認定要件および出願書上の必須記載事項に係る規定、期間延長/権利回復など救済手続きの確立、部分意匠/複数意匠/秘密意匠など意匠権の強化に向けた先進的な制度の確立
・(その他)知財インフラの格差解消に向け開発途上国・後発開発途上国への技術支援および能力強化に関する規定の策定

特許・商標に次ぐデザイン保護法に係る国際条約の策定

世界知的所有権機関(WIPO)がまとめる特許法条約(PLT、2000年)と商標法に関するシンガポール条約(STLT、2006年)に次ぎ、リヤド意匠法条約(Riyadh DLT)が採択されたことにより、産業財産権の主要3法に関する国際条約がすべて確立された。とりわけ、意匠分野は、特許・商標に比べて各国で制度が異なるところが多く、韓国企業が海外で意匠権を取得することが難しかった。同条約は20年間にわたる検討や交渉を経て意見の違いを狭めた結果であり、先進国と開発途上国の立場をバランスの取れた形で反映したものと評価される。

世界各国における意匠登録出願・登録手続きの調和を図る

条約によると、出願書上の必須記載事項が最小限化され手続きを簡素化する。また、出願の前に先に意匠が公開されたとしても1年以内に出願した場合、自身による公開行為では拒絶査定の理由にならない。優先権を出願時に主張できなかったとしてもその内容について追加・訂正する機会が与えられる。さらに、特許庁への提出書類を締切期限まで提出できなかった場合は、所定の要件を満たせば期限を延長するか、喪失された権利を回復できるなどユーザーフレンドリーなさまざまな救済策が設けられた。

一方、条約に加盟している国は部分意匠※・複数意匠※※など韓国をはじめ主要先進国で運用しているさまざまな制度を導入しなければならない。また、出願人が希望する場合には最短6か月以上当該の意匠を公開せず、公開時期への選択を認める必要がある。
※意匠の一部の部分のみを実線で表して権利範囲を広くする出願方法
※※一つの出願に複数の意匠を添付してまとめて出願する方法

意匠制度の国際調和やユーザーフレンドリーな観点から条約加盟の時期について綿密に検討

韓国特許庁は、ユーザーフレンドリーな観点や国内産業に与える影響などについて総合的に検討した結果、今回の外交会議では米国や日本と同じく条約への加盟には署名していない。今後、特許庁は説明会などを開き、採択された条約の内容を含む外交会議の結果について共有し、さまざまなユーザーから引き続き意見を聞く考えだ。また、主要国の加盟状況などを参考にして条約加盟への必要性やその時期について綿密に検討していく考えだ。

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