知的財産ニュース 世界のAIセキュリティ技術関連特許出願件数が10年間約40倍増

2024年11月25日
出所: 韓国特許庁

サムスン電子が上位10位にランクイン(6位)、ユーザー認証分野はトップ


#人工知能(AI)技術が産業分野のみならず日常生活に深く浸透し、AI関連セキュリティ技術が注目されている。コンピュータの活用と共にハッキング・セキュリティ技術が発展してきたように、AIを活用したハッキング検知技術とAIへの攻撃を防ぐセキュリティ技術も共に進化している。
#2024年AIセキュリティ市場規模は243億ドル(約34兆ウォン)に推定され、年平均21.6%成長し、2027年には531億ドル(約74兆ウォン)に達すると見込まれる※。急成長しているAIセキュリティ市場で優位を占めるための特許権確保をめぐる競争も激しくなっている。
※サイバーセキュリティ(中小企業における戦略技術のロードマップ2024~2026、2024年2月)

韓国特許庁は、この10年間(2012年~2021年)主要国特許庁(IP5:韓国、米国、日本、中国、欧州)に出願されたAI関連セキュリティ技術に係る特許を分析して発表した。特許庁によると、AIセキュリティ技術の特許出願件数は2012年37件にとどまっていたが、年平均51%ずつ大きく成長し2021年には1,492件に達している。

国別の出願動向:米国1位、中国2位、韓国3位

出願人を国別でみると、米国(45.9%、2.987件)が最も多く、2位中国(30.2%、1,961件)、3位韓国(7.6%、492件)、4位日本(3.5%、225件)となっている。韓国は2017年頃から日本を抜いて毎年その格差は広がっている。

技術別の出願動向:AI活用技術が全体の85%と大半を占める

AIセキュリティ技術は大きく2つに分けることができる。AIを活用してハッキングを検知し予防する「AIによるハッキング検知技術」と、AIシステムを攻撃から守る「AIを守るセキュリティ技術」である。AIによるハッキング検知技術は、AIセキュリティ技術の全体の85%を占める主要技術だが、2018年以降伸び率が鈍化(2019年~2021年、年平均1.7%)し、現在は技術の成熟期に入っているとみられる。AIを守るセキュリティ技術は、この5年間(2017年~2021年)年平均68.1%ずつ急成長を図り、注目されている分野である。

主要出願人:サムスン電子上位10位にランクイン(6位)、ユーザー認証分野はトップ

AIセキュリティ技術の出願件数上位10位の企業をみると、IBMのような米国企業が上位10位の中に9社がランクインした中で、米国以外の企業では韓国のサムスン電子が6位となっている。韓国はAIによるハッキング検知技術の中でもユーザー認証分野で競争力があるとみられる。サムスン電子とLG電子のユーザー認証分野は世界の出願件数順位でそれぞれ1位と6位となっている。

出願人の類型でみる出願動向:企業が78.5%と最も多い

世界的にAIセキュリティ技術の出願は企業がリード(78.5%)していることがわかった。技術分野別でみると、AIによるハッキング検知技術では企業による出願が全体件数の80%となっている。一方、AIを攻撃から守るセキュリティ技術では68%とやや低くなっているが、代わりに大学による出願が全体の29%と比較的に大きい割合を占めている。これは、AIを守るためのセキュリティ技術分野の研究開発が活発に行われているためだと思われる。

韓国ではAIセキュリティ技術の場合、企業による出願が全体の68%と世界に比べては低い方だが、代わりに大学や公共機関による出願が全体の26%を占め比較的に高くなっている。つまり、産学研における協力を強めることが重要である。

特許庁の人工知能ビッグデータ審査課長は「AI活用とデジタルトランスフォーメーションが日常になった今の時代においてAIセキュリティ技術は国の安全保障だけではなく我々の日常を守る必須的技術である」とし、「特許庁は、急成長しているAIセキュリティ技術分野で韓国企業がコア特許を確保できるよう産業界が必要とする特許分析資料を適宜提供するよう取り組む」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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