知的財産ニュース 韓国のIP金融規模額10兆ウォン突破…3年で1.7倍成長
2024年10月16日
出所: 韓国特許庁
IP金融の拡大に向けた共同ファンドの組成、IP金融価値評価の高度化、返済不能の予防などさまざまな政策を進める
韓国特許庁は16日、知的財産(IP)金融の規模が10兆ウォンを突破(2024年8月末時点)したと発表した。10兆ウォンを超える金額が優秀な知財を保有する企業に活用されているということである。
IP金融の残高10兆ウォン突破…3年で1.7倍成長
特許庁によると、企業が保有する特許など知財を活用して担保融資・保証・投資により資金を調達するIP金融の残高が10兆211億ウォン※に達していることがわかった。2021年の6兆90億ウォンから3年で約1.7倍成長※※した。
※調査(2024年8月末)時点、市場に供給されているIP金融の金額
IP担保融資2兆2,503億ウォン、IP投資3兆5,027億ウォン、IP保証4兆2,681億ウォン
※※IP金融残高の推移:(2021年)6兆90億ウォン→(2022年)7兆7,835億ウォン→(2023年)9兆6,100億ウォン→(2024年8月)10兆211億ウォン
とりわけ、IP担保融資を利用する全体企業の84.2%を信用格付けが高くない非優良企業(BB+以下)が占める※など、優秀な技術力を持つ低信用企業にとって重要な資金供給の役割を担ってきたことに大きな意味があるといえる。
※2023年IP担保融資を利用した企業の信用格付け:非優良(BB+以下)84.16%、優良(BBB-以上)15.83%
担保IP回収支援事業、IP価値評価にかかる費用の支援など引き続き取り組む
これまで特許庁は、IP担保融資に対し国策銀行から市中・地方銀行に拡大し、銀行の担保IPの回収リスクを軽減させるための「担保IP回収支援事業※」を導入するなど、制度的基盤を築いてきた。また、企業がIP金融を利用する上で行うべきであるIP価値評価※※にかかる費用を支援し、IPファンドを組成するために政府の予算(母胎ファンドの特許専用ファンド)を投入するなど、IP投資の呼び水となった。
※支払い不能になった融資の担保IPの処分を支援(買収・処分)して銀行側の回収リスクを軽減
※※企業が保有するIPの価値から等級または価額を算出するもので、IP金融を利用するために必ず必要な手続き
また、IP投資機関協議会、担保IP回収支援機構協議会などを開いて銀行や保証・投資機関などと緊密に協力し、金融委員会と共にIP金融フォーラムを主催(2019年から計5回)して政策づくりについて議論するなど、IP金融の拡散に向けて多岐にわたって取り組んできた。
特許庁はIP金融を利用する企業の困難を解消するための支援も拡大していく考えだ。企業の返済不能を防止するためにIP担保融資を利用する企業に対するモニタリングを強化し、IP支援事業およびIP投資・保証を連携した企業向け支援を進めるなど、予防システムを構築する計画だ。また、セール・アンド・ライセンスバック(Sale & License Back)※制度で返済に苦しんでいる企業の正常化を支援し、構造改善・再創業などで資金を調達できるよう回生法院及び中小ベンチャー企業部、信用保証基金、韓国資産管理公社(KAMCO)などと協力を進める考えだ。
※SLB(Sale & License Back):返済不能になった企業が担保IPを回収支援機構に売却(sale)した以降もそのIPを利用して事業を続けられるように実施権(license)を与える制度
特許庁長は「革新的なアイデアと研究開発の賜物である知財を活用して資金を確保するIP金融が企業の成長に大事な役割を果たしている」とし、「今後も特許庁は金融委員会などほかの部処と共同ファンドを組成してIPファンドの規模を拡大し、IP価値評価システムを高度化するなど、さらに多くの企業がIP金融により資金を確保できるよう政策を有効に活用する」と述べた。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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