知的財産ニュース 8月21日から技術奪取防止の強化対策を盛り込んだ改正「不正競争防止法」および「特許法」を運用開始
2024年8月20日
出所: 韓国特許庁
技術奪取行為に対し最大5倍の懲罰賠償を請求する
8月21日から技術奪取行為に対する懲罰的損害賠償の限度が3倍から5倍に強化され、アイデア奪取行など等不正競争行為に対し特許庁長が是正命令を下すことができるようになる。不履行時には最高2,000万ウォン以下の罰金が科される。
韓国特許庁は21日から上記の内容を盛り込んだ改正「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下、「不正競争防止法」)及び「特許法」が施行されると発表した。
①技術奪取の場合は最大5倍の懲罰賠償
特許権、営業秘密、アイデア奪取行為など技術奪取行為の厳重さに対する意識を高めるために懲罰的損害賠償の限度を3倍から5倍に引き上げた。これは、技術を開発して特許や営業秘密などを保有するよりは「技術を真似した方が利益になる」という認識が広がり、被害企業の立場では訴訟で勝っても損害賠償額が十分ではないため、訴訟を諦めるケースが多くなるなど、悪循環を改善するための措置である。
5倍懲罰賠償は国内外の法令と比べても非常に高い水準である。営業秘密に対し強力な保護措置を取っている米国の場合も最大2倍までの懲罰賠償を科しており、5倍賠償は中国が唯一である。
②アイデア奪取行為など不正競争行為に対し特許庁長が直接是正命令を下す
事業提案、入札、公募など技術取引の過程におけるアイデア奪取行為、有名人の氏名・肖像などを無断使用するパブリシティ権の侵害など、不正競争行為に対して特許庁長が直接是正命令を下す。
これまでも特許庁は不正競争行為などに対し行政調査を行い、違反行為が認められた場合には是正勧告を下すことができた。しかし、是正勧告は勧告に過ぎず強制力がないため、不正競争行為が相次ぐ状況を防ぐには限界があった。
今回の改正は、このような問題を解消し行政救済の実効性を確保することで、相次ぐ技術奪取の状況を迅速に解決できるとみられる。特許庁による是正命令に従わなかった場合、その違反行為者に対し最高2,000万ウォン以下の罰金を科す。
③法人に対する罰金刑3倍強化、営業秘密侵害時には侵害品およびその製造設備までを没収
営業秘密の侵害犯罪、不正競争行為の犯罪は、法人の加担率※が非常に高いことを鑑みて法人による営業秘密侵害行為、不正競争行為を抑制できるよう、法人に対する罰金刑を行為者に科された罰金の最大3倍まで強化する。
※(2017~2021年)法人が加担した犯罪の状況:不正競争防止法の違反罪(34.3%)≫全体犯罪(1.6%)
さらに、営業秘密の侵害品だけではなく、その製造設備までを全て没収する規定を新しく設ける。これにより、侵害品の再生産などによる二次被害を事前に防ぐことができる。
④ハッキングなどによる営業秘密の毀損・削除に対する処罰
営業秘密の毀損、滅失、変更行為に関する規定が新設される。不正取得・使用・漏洩など伝統的な営業秘密侵害行為の範囲を超えるハッキングなどによる営業秘密の毀損・削除に対しても不正競争防止法による処罰が可能になる。
営業秘密を不正な目的で毀損・削除する者に対し10年以下の懲役または5億ウォン以下の罰金刑を科すことで従前より重い※処罰が下される。
※(従前)情報通信網法により5年以下の懲役または5,000万ウォン以下の罰金
特許庁の産業財産保護協力局長は「最近、国内外で頻繁に発生する技術奪取行為に有効に対応するためには技術保護に関する制度を現状に合わせて改善していく必要がある」とし、「今後も特許庁は企業が成長の原動力をなくしてしまうことが起こらないよう、技術奪取などを防ぎ、技術保護の強化に向けて取り組んでいく」と述べた。
特許権の侵害、営業秘密の侵害およびアイデア奪取など不正競争行為により困難な場合は、特許庁の「知識財産侵害ワンストップ通報相談センター
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