知的財産ニュース 自然災害対策に採用するAIoT技術の特許出願を韓国がリード
2024年6月24日
出所: 韓国特許庁
世界でAIoT基盤防災技術の特許出願がこの10年間、毎年19.5%増
#世界気象機関によると「アジア地域では温暖化の進行スピードが世界の平均よりはるかに早く進んでおり、急変する気象状況に備えた国レベルでの支援や情報の提供が急がれている」と強調した。また、国連防災機関による調査の結果※※、2000年以降の20年間、これまでの20年より洪水による災害が2.3倍増加すると見込まれている。
※2023年アジア地域における気候現況レポート、WMO
※※The human cost of disasters: an overview of the last 20 years, UNDRR, 2021
#自然災害が増加すると予測される中、世界の自然災害観測AIoT産業の市場規模は、2023年66.8億ドルが毎年平均27.9%ずつ成長し、2030年には373.2億ドルに達すると見込まれている※。
※マーケットアンドマーケットリサーチ、https://www.marketsandmarkets.com
気候変動により自然災害が急増している中で、最新技術のモノのインターネット(IoT)と人工知能(AI)の融合した防災関連技術が注目を集めている。
モノの人工知能(AIoT)基盤防災技術の特許出願、10年間毎年平均19.5%増
韓国特許庁が主要国特許庁(IP5:韓国、米国、中国、EU、日本)に出願された世界のAIoT基盤防災技術の特許を分析したところ、IoTとAIの技術を組み合わせたAIoT※を活用して洪水など災害を予防する技術の出願がこの10年間(2012年~2021年)年平均19.5%増加したことがわかった。
※AIoT基盤自然災害防災技術:衛星データ、気象データ、IoTセンサーのデータなどビッグデータを収集し、AIへの学習により被害状況を予測し、位置情報基盤の避難経路を提供する技術
国別の出願動向:韓国出願人による特許出願件数が1位(48.5%)
全体の出願件数1,598件のうち、韓国籍による出願が48.5%(775件)と上位であり、米国(18.1%、290件)、日本(14.4%、230件)、中国(10.3%、164件)の順である。韓国は出願件数2位の米国より2.7倍多く、当面、AIoT基盤の防災技術分野で韓国が優位に立つとみられる。
類型別の出願動向:地質災害分野の出願件数1位、風水害分野の年平均の増加率1位
類型別※でみると、地質災害分野の出願が51.4%と最も多く、風水害分野(23.9%)、気象災害分野(17.0%)、海洋災害分野(7.7%)の順である。出願増加率は風水害分野が最も大きく(年平均28.9%)、世界的に洪水など風水害が急増しているため、関連防災技術のニーズが高まっているとみられる。
※自然災害の類型:(風水害)台風、洪水、強風など、(気象災害)干ばつ、猛暑、寒波、オゾンなど、(地質災害)土砂崩れ、地震、地盤沈下など、(海洋災害)赤潮、津波、風浪、海岸浸食など
<出典:災難安全R&D情報ポータル>
主要多出願人:サムスン電子、LG電子が1、2位
出願件数でみると、サムスン電子(36件)、LG電子(35件)が1位と2位と占め、3位スカイモーション(32件)、4位クアルコム(29件)、5位インターデジタル(26件)である。韓国が世界で初めて移動通信ネットワークを利用して災害通知メッセンジャーサービスを提供した以降、各国の通信会社が災害通知技術を活発に出願しているとみられる。
特許庁のモノのインターネット審査課長は「異常気象による自然災害が増えているが、AIoT基盤防災技術の発展が自然災害による被害の軽減に寄与すると思われる」とし、「特許庁は国民の命や財産を守る技術の価値を高め広く普及されるよう、高品質の審査はもちろん、関連統計データを適時提供していく」と述べた。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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