知的財産ニュース 韓国特許庁、先進五大特許庁長官会合を開催

2024年6月21日
出所: 韓国特許庁

五庁共同宣言文の採択により、持続可能な開発目標の実現に向けたガイドラインに合意

韓国特許庁は、韓国、欧州、日本、中国、米国の知的財産庁からなる先進五大特許庁(IP5)と「産業界代表※との連席会議」および「先進五大特許庁(IP5)長官会合」を6月19日、20日にソウル市※※にあるフォーシーズンズホテル(ソウル市鐘路区所在)にて開催したと発表した。

今回の会合は2019年、仁川(インチョン)松島(ソンド)での会合以来、5年ぶりに韓国が主催し、五庁長官と産業界の代表など約100名が参加した。長官会合で五庁長官は、①知的財産分野における持続可能な開発目標※※※(Sustainable Development Goals: SDGs)の実現方策、②グローバルな権利移転などユーザーフレンドリーな知的財産システムの構築、③人工知能(AI)など新技術発展への対応策などについて踏み込んだ議論を行った。
※韓国知識財産協会(KINPA)、米国知的財産権者協会(IPO)、米国知的財産権法協会(AIPLA)、 日本知的財産協会(JIPA)、中国特許保護協会(PPAC)、ビジネスヨーロッパ(BE)
※※世界知的所有権機関(WIPO)が行った2023年世界の科学技術クラスター評価においてソウルが3位にランクイン(1位東京・横浜、2位中国の深圳・香港・広州クラスター)
※※※人間、地球、豊かさ、平和、パートナーシップの5つの領域において持続可能な開発目標を実現するための17のゴールと169のターゲット(2015年第70回国連総会で採択)

五庁(IP5)は世界全体の特許出願の約85%を占める知的財産分野のG5である。韓国特許庁は、世界4位規模の特許出願を担当する先進的な知的財産機関として、欧州、日本、中国、米国の知的財産庁と共に2007年に五庁の協力体制を作り、「ユーザーフレンドリーな世界の知的財産エコシステムづくり」をリードしている。

主な議論と成果は以下である。

①持続可能な開発目標の実現に向けた知的財産分野における協力策の模索

五庁は、今回の長官会合で「国連の持続可能な開発目標の実現」に向けた中長期計画を盛り込んだ「先進五大特許庁の共同宣言文」を採択した。これまで五庁は、持続可能な開発目標の実現に向けて知的財産分野での協力について深く議論してきた。昨年、米国のホノルルで開かれた五庁長官会合では「持続可能な開発目標の実現」を五庁ビジョンとして掲げ、五庁による主な協力目標の一つになっている。今回の会合では、韓国特許庁(KIPO)と日本国特許庁(JPO)が共にリードする「持続可能な開発目標の実現に向けた先進五大特許庁(IP5)の協力指針(Guideline for Building a Sustainable Future)」に五庁が合意し、今後の履行に向けて五庁が協力していく。

また、五庁長官は「持続可能なイノベーションに向けた包括的な知的財産システムの構築」をテーマに、中朝企業の成長を促進するための知財の役割について深く議論した。とりわけ、KIPOは、中小企業向け出願費用の支援、知的財産価値評価の支援など、出願から企業化に至るまで中小企業の成長を支える韓国の支援策や今後の計画を紹介して、五庁と産業界から大きく注目を受けた。

②グローバルな権利移転などユーザーフレンドリーな国際的知的財産システムの構築について議論

五庁長官はユーザーフレンドリーなシステムの構築についても意見を交わした。特許権者が特許権譲渡の申請書を一つの庁に提出すれば、ほかの四庁においても当該特許権譲渡の効力を認めるという「グローバルな権利移転」のテーマの進捗状況についてKIPOがリードして発表し、四庁の長官は施行に向けて必要な制度への検討を迅速に行うことに合意した。また、中国特許庁(CNIPA)は「特許審査ハイウェイ(PPH※)」に基づく特許出願の審査結果を3月以内に出願人に通知する日・米・韓の共同プログラムに参加することにした。これにより、中国への出願※※に対する審査が迅速化し、審査結果が通知される時期について出願人が予測できるようになると期待される。
※Patent Prosecution Highway:第一庁(先行庁)で特許可能と判断された出願について、出願人の申請により、後続庁においても早期審査を受けることができる枠組み
※※ここ10年間(2014年~2023年)韓国→中国PPH出願:2,983件

③人工知能など新技術発展に伴う知的財産分野での協力について議論

五庁は人工知能(AI)など新技術発展に伴う知的財産分野の対応策についても議論した。五庁長官はKIPOのリードで第14回五庁長官会合(2021年)において承認された「新技術/人工知能(NET/AI)ロードマップ」の推進状況を共有し、今後の計画について議論した。とりわけ、KIPOがリードするテーマである「人工知能(AI)を発明者として認めるかどうかに関する5か国の法制・判例の動向(Inventorship of AI generated inventions)」に関する研究結果が今回の長官会合で承認された。この研究結果には、米大統領令(2023年10月)により米国特許庁(USPTO)が発表した「人工知能(AI)を利用した発明に関する発明者権ガイドライン」など五庁の関連政策の動向が反映されている。

KIPOのキム・シヒョン長官代理は「2019年の仁川(インチョン)松島(ソンド)での開催以降、5年ぶりに韓国が主催する五庁長官会合が、ダイナミックな革新都市、ソウルで開かれることとなり、大変嬉しく思う」とし、「今回の会合を機に韓国が、持続可能な開発目標の実現と国際調和を図る知的財産制度の発展をリードする先進国家として位置付けられるよう、最善を尽くしていく」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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