知的財産ニュース 韓国政府、「海外直接購買(個人輸入)の急増による消費者の安全強化及び企業競争力の向上策」を発表

2024年5月16日
出所: 国務調整室・国務総理秘書室

国民安全を脅かす、海外直接購入による危害製品の遮断を徹底する

□韓国政府は5月16日木曜日、仁川空港の税関にてハン・ドクス国務総理の主催で開かれた国政懸案関係長官会議で「海外直接購買(個人輸入)の急増による消費者の安全強化及び企業競争力の向上策」について発表した。
Οこれは最近、海外直接購買が急増していることを受けて、有害物質の流入など、現在、取り上げられている様々な課題に対応する趣旨で、韓国政府は昨年3月に国務調整室主管の関係部処※TF(チーム長:国務2次長)を立ち上げ、関連状況について点検し、対策を議論してきた。
※関税庁、産業部、環境部、食薬処、公取委、特許庁、放通委、個人情報委など14の部処
Ο政府レベルのTFは、▲消費者の安全確保、▲消費者の被害予防及び救済強化、▲企業の競争力向上、▲免税及び通関システムの改編など、分野別の対策を検討した。

1.消費者の安全確保

<有害製品の管理強化>

□これまで国民の安全・健康に直結する製品が、海外直接購入のルートでは安全装置※なしで国内搬入されてきたが、今後は安全性が確認された製品が国内に搬入されるよう、有害製品に対する管理を強化する。
※海外直接購入ではなく、正式な輸入手続きを経た製品はKC認証など安全装置により国内に流通されている

□第一、国民の安全・健康を脅かす有害性が高い海外直接購入による製品は安全認証がない場合、海外直接購入が禁じられる。
Οまず、13歳以下の子どもが使用する子ども製品34の品目(ベビーカー、玩具など)に対し、徹底した安全管理のため、KC認証がない場合は、海外直接購入が禁じられる。
Ο未認証製品を使用することで、火災、感電など事故の発生が起こり得る電気・生活用品34の品目(電気温水マットなど)は、KC認証がない場合、海外直接購入が禁じられる。
Ο生活化学製品12の品目(加湿器用消毒・保存剤など)は有害成分が含まれている製品を使用する場合、身体に深刻な危害を引き起こす恐れがあるため、申告・承認を受けていない製品の海外直接購入は禁じられる。

□第二、危害成分が含まれている製品が無分別に国内に搬入されないよう、事後管理を徹底し、国内搬入を遮断する。
Ο肌に直接使われる化粧品・衛生用品は、使用禁止原料(1,050種)が含まれる化粧品のモニタリング、衛生用品の危害性検査などを行い、危害性が確認された製品に対しては国内搬入を遮断する。
Ο最近、国内流入が頻繁に起こるアクセサリー、生活化学製品(芳香剤など32の品目)など有害物質含有製品※は、モニタリング、実体調査などを行い、基準値を超える製品に対しては国内搬入を遮断する。
※事例)指輪などアクセサリー(カドミウムの基準値の最大700倍)、バイク用ブレーキパッド(アスベストの基準値1%超過)

□第三、海外直接購入が禁じられている医薬品、医療機器なども毎年摘発される件数が急増※しているため、従来の禁止製品に対する管理も強化する必要がある。
※不法の衣類機器の摘発件数(件):(2021年)678→(2022年)849→(2023年)6,958
Ο医薬品・動物用医薬品は、改正薬師法により海外直接購入を禁じることを明確化し、法改正前までは、現行通り、危害の恐れが大きい医薬品を中心に集中的に遮断する。並びに、不法医薬品の販売サイトの遮断や国民向け啓発活動を強化していく。
Ο電子血圧計、補聴器など医療機器は、通関段階から協業検査や通関データの分析に基づく特別・企画点検を強化し、海外プラットフォームによる遮断を誘導する。
Ο鉛溶出など恐れがある水道蛇口類や下水の水質悪化の恐れがある厨房用の汚物粉砕機は、通関段階で認証有無を別途確認して搬入手続きの管理を徹底する。

<模倣品の遮断及び個人情報保護の強化>

□海外直接購入による模倣品搬入の急増※につれ、Kブランドや韓国消費者の被害が増加しており、海外プラットフォームによる個人情報侵害の恐れも指摘されつつあるため、模倣品の遮断と個人情報保護を強化する。
※通関における知財権侵害の摘発件数(関税庁、万件):(2021年)2.9→(2022年)4.5

□第一、模倣品を遮断するために、ビッグデータ基盤のAIモニタリングなど海外プラットフォームに対するモニタリングを強化し、特許庁・関税庁間で保有する情報をリアルタイムでマッチングする遮断システムを採用(2024年5月~)する。
Οプラットフォーム企業が模倣品遮断措置などを履行しなかった場合、制裁(対外公表など)できる根拠を設ける(改正商標法、2024年)。

□第二、個人情報の侵害を防ぐために政府は、プラットフォーム企業を対象に個人情報保護法の違反有無、アプリへのアクセス権限の告知有無などを調査・点検している。上半期中、結果を公表し、対応が不十分な事業者に対して必要な措置を行っていく方針だ。
Ο並びに、海外直接購入に必要な個人通関符号を盗用・悪用する事例が相次いでいるため、これに対応できる保護措置※も強化していく。
※事前検証の強化、名義貸与罪の適用対象の拡大の検討など

2.消費者の被害予防及び救済強化

□海外直接購入の急増につれ、消費者の被害、不便・不満、紛争なども増加しているため、消費者被害の事前予防及び事後救済方策も推進する。

□第一、海外プラットフォームが行っている消費者保護義務の現状、販売製品の危害性など綿密に状況を把握するために、政府レベルで実体調査や点検を進める。
Ο10の部処で調査や点検を行っており、結果出次第、対外に公表し、必要な措置を施行する予定だ。
※消費者保護義務履行の実態(公取委)、通信販売者による管理及び不正輸入物品流通の実態(関税庁)、危害製品(産業部、環境部、食品医薬品安全処、特許庁、女性家族部)、情報管理(科学技術情報通信部、個人情報委、放送通信委)

□第二、海外プラットフォームを利用する中で発生し得る消費者被害への救済、又は、法的制裁の実効性を確保するために、海外プラットフォームに対し、国内代理人の指定を義務化する。
Ο指定された国内代理人は、消費者被害救済を担当し、KC未認証製品の販売情報削除、不法製品の流通遮断、模倣品の遮断措置などを履行する。公取委、産業部、特許庁などで国内代理人指定に関する法律改正を進める※。
※電子商取引法(公取委)、電気生活用品安全法・子ども製品法(産業部)、商標法(特許庁)などが改正推進

□第三、消費者被害を事前に予防し、実効性確保の補完措置として海外プラットフォーム企業と自律協約を締結し、ホットラインの構築について協議する。また、国内顧客センターを設置するよう推奨する。
Ο自律協約は、公取委、放送通信委、食品医薬品安全処、科学技術情報通信部などが海外プラットフォームによる自律的な被害予防措置に向けて進められている。危害製品の流通・販売の遮断、青少年に有害な情報に対する青少年のアクセス制限、食品・医療製品の不法流通遮断、商品の検索・推奨サービスの基準公開などが盛り込まれる予定だ。
※5月13日月曜日、公取委(消費者院)-アリ・テム間で自律製品安全協約を締結済み

□第四、各部処に分かれている海外直接購入に関する情報に対し、消費者のアプローチや利便性を高めることができるよう、「消費者24※」に関連情報をまとめて提供する。
消費者24外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(公取委運営)
Ο改善した消費者24は5月16日から稼働され、消費者24にて海外直接購入の点検項目、海外直接購入の禁止物品、被害注意報、海外のリコール情報、紛争の相談事例などを確認できる。

3.企業の競争力向上

□政府は海外直接購入の急増により、関連産業が受けるダメージの緩和や企業の競争力向上のために支援の努力を強化していく。

□第一、先端の流通物流インフラの構築及び技術開発など、流通プラットフォームの高度化を支援し、中小流通企業・小規模事業者が新しい事業の機会を生み出せるよう促す。
Οフルフィルメント※普及の拡大及び高度化した技術開発※※、デジタル統合物流システムの構築などを進めて中小流通業者にまで先端の流通物流インフラを拡散する。
※製品入庫→管理→包装→配送まで全てのプロセスを自動化・効率化するインフラ
※※中小流通型フルフィルメントのスタンダードモデルの普及拡大、AI自律運営型の無人流通物流センターの技術開発など
Οまた、配送段階の短縮及び配送物流の効率化を図るために、製造及び納品業者の保管施設から消費者に直接配送※する物流センターの共有を活性化する。
※製造/納品業者の物流倉庫に保管されている商品をプラットフォーム業者が消費者に直接配送
(従来)製造・納品業者→プラットフォーム業者→消費者/(改善)製造・納品業者→消費者
Ο並びに、中小流通業者に新しい事業の機会を与えるために、ブランドインキュベーティングなど品目の多角化、ソーシング対象国の多角化などを支援する。

□第二、オンライン上の海外販売(逆直接購入)の拡大のために、世界的なプラットフォームの出店への支援を強化し、中小出店業者による物流・配送に支障がないよう、電子商取引の進出が活発な地域を中心に海外共同物流センターを拡大※する。
※(2023年)261→(2024年)270

□オンライン流通産業のエコシステムを活性化するための基盤を構築する。海外プラットフォームとの公正な競争のために、「大型マートによる明け方配送」など流通規制を改善し、学界・業界・政府が共同で参加する「流通産業未来フォーラム」を開き、グローバルスタンダードに合わない規制を洗い出し、解消していく計画だ。

□政府は今回の対策に続き、「小商工人(小規模事業者)向け総合対策(仮名称)」(2024年6月暫定)、「流通産業発展基本計画」(2024年9月暫定)及び「流通・物流におけるAI活用戦略」(2024年10月暫定)など、オンライン流通産業や小規模事業者の競争力強化に向けた対策を引き続き講じていく計画だ。

4.免税及び通関システムの改善

□政府は国内事業者、逆差別問題の解消に向けて少額輸入物品の免税制度を見直す。
Ο並びに、少額免税制度を悪用して意図的な分割後、免税通関を行うことを防ぐため、事後の情報分析・常時取り締まりなどを強化する。

□危害製品の搬入遮断に向けた通関システムも改善する。
Οまず、危害製品の遮断に必要なモデル・規格などが記載されるよう、通関手続きのひな形を見直し、アルゴリズムなどを活用して電子商取引による危害物品搬入の遮断に最適な通関プラットフォームを2026年まで構築する。
Οまた、X線の判読・改装検査・通関審査など関連人員を確保する一方、子ども向け製品、電気・生活用品などの分野で専門人員が中心となる協業検査を拡大していく。

5.今後の推進計画

□政府は危害製品の管理強化及び国内代理人指定の義務化など、法律改正に必要な事項に対しては、今年度中の迅速な改正を進める。
Ο法律改正前までは、関税法に基づいた危害製品の搬入遮断を行う方針だ。関税庁と所管部処が準備を経て6月中施行する。
※(関税法第237条)国民保健などを脅かす恐れがある場合、当該の危害製品を遮断する

□海外直接購入に関する情報提供のために改善する「消費者24※」は、5月16日から稼働し、消費者を対象に海外直接購入を行う際の注意点や危害製品の情報などを簡単に確認できるようにするなど、案内や広報に取り組み、情報が不明な製品に対しては消費者が慎重に購入するよう誘導する。
※※消費者24外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(公取委運営)

□政府は今回の対策の発表後にも、関係部処TFなどによる対策推進状況を引き続き点検しつつ、追加・補完対策を策定していく計画だ。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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