知的財産ニュース 韓国裁判所、一審に続き二審でもAIを発明者に認めないと判決

2024年5月16日
出所: 韓国特許庁

6月のIP5長官会合でAI発明者に関する結果を発表

韓国特許庁は、人工知能(AI)を発明者と記載した特許出願※に対する特許庁による無効処分に不服して提起された行政訴訟(2022年12月)と関連して、ソウル高等裁判所が現行法上、人間のみを発明者として認めるとの理由により、AIを発明者として認めないとの判決(2024年5月16日)を下したと発表した。特許庁による無効処分を支持したソウル行政裁判所の第一審判決(2023年6月30日)に続く第二審の判決である。
※アメリカのAI開発者(スティーブン・テイラー氏)が自分で開発したAI(DABUS)が食品容器など2つの発明をしたと主張→16か国で特許出願

アメリカ・ヨーロッパ・オーストラリア・イギリスでも最高裁がAIを発明者として認めないとの判決を下し、ドイツでは最高裁に係留中であり、アジアでは韓国が初めて第二審のソウル高等裁判所がAIを発明者として認めないとの判決を下した。

<主要国におけるAI(DABUS)発明者による特許出願に関する訴訟経過>
韓国 アメリカ、ヨーロッパ(EPO)、オーストラリア、イギリス ドイツ
第二審の裁判所が不認定(上告可能) 最高裁が不認定(確定) 最高裁に係留中(抗告裁判所が不認定)

このように現在、主要国の裁判所による判決はAIの発明者性を認めないとしているが、①数か月がかかる半導体チップを6時間で完成するか、②新型コロナウイルスのワクチンなど新薬の候補物質を迅速に発掘するなど、人間による技術開発がAIに代替される事例が増えているため、AIの発明者性について多角的な検討が求められている。

世界の主要特許庁は、このようなAI技術の進化スピードを踏まえて、今後、考えられる特許制度の変化に対応するためにさまざまな議論の場を設けてきた。代表例としては、昨年6月にアメリカで開かれたIP5長官会合で、韓国特許庁が提案した「AI発明者に関する法制の現状と判例の共有」という議題が案件として最終承認された。
※IP5:五庁(日米欧中韓の知的財産庁)

この結果、今年6月にはソウルで開かれるIP5長官会合で、韓国特許庁は今回のソウル高等裁判所による判決の内容を反映して「AI発明者に関する主要国における法制の現状及び判例動向」の分析について発表する考えだ。併せて、昨年、韓国で初めて実施されたAI発明者に関する国民向けアンケート調査の結果を発表し、これに関して主要国の特許庁と話し合う考えだ。


※AI発明者に関する国民向けアンケート調査結果(約1,500人参加、2023年7月20日~9月30日)

①(AIの技術水準に関する認識の違い):AIに対し、一般人はパートナー、専門家はツールとして認識
②(AI発明者、特許権者に関する認定可否):AIを発明者や特許権者に認めることは時期尚早
③(特許権の付与時にその対象者):AIプラットフォームを活用してAIに発明をさせたAIのユーザー
④(特許権の付与期間):AIが発明した特許権は、現行の特許権保護期間より短くすべきである

特許庁長職務代理は「昨年のIP5長官会合で主要国の特許庁だけではなく、産業界でもAIに関するさまざまな知財権のイシューに関心が非常に高いことがわかった」とし、「今後、韓国特許庁がIP5、WIPOなどとAI関連特許制度について話し合う上で、リーダーとして国際的調和を図る特許制度を策定していきたいと思う」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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