知的財産ニュース 韓国特許庁、「不正競争防止法の制度改善委員会」を発足

2024年5月8日
出所: 韓国特許庁

学界・法曹界・産業界の専門家が集まり、先端技術など営業秘密の保護策について話し合う

韓国特許庁は5月7日火曜日、特許庁ソウル事務所(ソウル市江南区所在)にて先端技術など営業秘密流出を防止するために、学界・法曹界・産業界の専門家からなる「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」※(以下、「不正競争防止法」)の制度改善委員会を発足すると発表した。
※不正競争防止法は、模倣品の流通、他人のアイデアを奪取するなどの不正競争行為を防止し、営業秘密を保護する目的の法律である

制度改善委員会には、営業秘密分野に詳しい専門家、営業秘密に関わる事件の実務経験が豊富な弁護士、大・中小企業で営業秘密保護業務を担っている産業界の専門家など計12名が参加する。

最近、デジタルトランスフォーメーションや第四次産業革命の加速化により、半導体や人工知能など先端技術の確保が求められ、技術覇権争いの深刻化を受けて、営業秘密保護の重要性がいつにもまして高まっているため、制度改善を求める声が相次いでいる。

これを受けて、営業秘密侵害を防止するために、営業秘密侵害に対する懲罰的損害賠償の限度を3倍から5倍に引き上げ、組織的な営業秘密侵害に対応できるよう、法人への罰金刑を行為者に賦課した罰金の最大3倍に引き上げる(2024年2月)など、不正競争防止法を改善している。

しかし、強力な処罰の規定が定められているにも関わらず、侵害された営業秘密の価値・重要度・被害規模を正確に証明できない場合は、正当な処分が下されないことも多く、裁判過程でこの問題を改善する制度の見直しが必要だとの指摘があった。

弁護士の陳述権の導入、営業秘密の海外流出防止に向けた制度見直しについて議論

営業秘密侵害に関わる刑事裁判において被害者側の弁護士が営業秘密を裁判官に直接説明できるようにする弁護士の陳述権を導入する。

弁護士の陳述権を導入する必要性については、営業秘密侵害事件の実務経験が豊富な法務法人セジョンのジョン・チャンウォン弁護士が発表を行い、専門家ディスカッションを行う計画だ。

国境を超える企業や人材交流の拡大により、営業秘密の海外流出問題への対策にも迫られている。とりわけ、企業のコア人材を引き抜く営業秘密侵害斡旋行為、外国人直接投資企業による韓国企業の営業秘密流出事件などは、韓国の先端技術の海外流出につながるリスクが高い行為として指摘されている。この問題を防ぐための制度見直しの必要性についても踏み込んだ議論を進める考えだ。

特許庁は、年末まで制度改善委員会で主要懸案について話し合い、必要に応じて来年から立法手続きを進める方針だ。

特許庁の産業財産保護協力局長は「世界各国で自国の先端技術への保護を強化しており、サプライチェーンの見直しが進められている現状で、先端技術など営業秘密を保護することは企業や国の競争力に直結する課題である」とし、「特許庁は、不正競争行為および営業秘密に関する各界の専門家らの意見を取りまとめて、時宜に適した体系的な制度の改善策を策定する考えだ」と述べた。

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