知的財産ニュース 技術奪取の懲罰的損害賠償額を3倍から5倍に引き上げ

2024年2月14日
出所: 韓国特許庁

特許権・営業秘密侵害、アイデア奪取の損害賠償額を5倍に引き上げる改正特許法・不正競争防止法が国会で成立され

今年8月※から技術奪取の3種と呼ばれる▲特許権侵害、▲営業秘密侵害、▲アイデア奪取の行為に対する損害賠償額が最大5倍まで引き上げられる。
※2024年2月公布、2024年8月施行予定

韓国特許庁は、上記の内容が盛り込まれた「特許法」、「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(以下、「不正競争防止法」)改正案が13日、国務会議で成立したと発表した。

現行法では、企業の技術競争力を保護するために、特許権及び営業秘密侵害行為、技術取引過程で起こるアイデア奪取行為を禁じており、違反した際には民事上の損害賠償訴訟により救済できるよう定めている。
※事業提案、入札、公募など取引過程において経済的価値を持つ技術的又は営業上のアイデアが含まれた情報を無断使用する行為

しかし、特許権や営業秘密の侵害や中小企業に対するアイデア奪取の事件が起きた場合、侵害事実の立証が難しく実証したとしても被害額の算定が難しいため、侵害者に十分な損害賠償を請求できないとの問題が指摘されてきた。

特許権侵害の損害賠償認容額の中間値1億ウォン…米国の7分の1水準

特許庁が行った研究※結果によると、2016年から2020年まで起きた特許権侵害の損害賠償請求訴訟で原告は平均6億2,829万ウォンを請求したが、認容額の中間値は1億ウォン程度※であることがわかった。これは米国での特許権侵害に対する損害賠償額の中間値65.7億ウォン(1997年から2016年まで)に比べても非常に少なく、両国の経済規模を鑑みても(2018年時点)7分の1に過ぎない水準である。
※特許侵害の判例分析を通じた中小ベンチャー企業向け侵害訴訟対応戦略の研究(特許庁、2021年)
※※“Patent Litigation Study”, PWC

そのため、技術を開発して特許や営業秘密などを保有するよりは「技術を真似した方が利益になる」という認識が広がり、被害企業の立場では勝訴したとしても損害賠償額が十分ではないため、訴訟を起こすことを諦めてしまうケースが多くなるなど、悪循環が続いている現状だ。

懲罰的損害賠償の限度を3倍→5倍に引き上げ…主要国と比べても高い水準に

今回の改正は懲罰的損害賠償の限度を既存の3倍から5倍に引き上げ、悪意的な技術流出を防ぎ、被害救済の実効性を確保する趣旨である。

懲罰賠償5倍は主要国と比べても高い水準である。①日本は技術奪取に対する懲罰的損害賠償制度が設けられておらず、技術を強力に保護する米国も特許侵害に対しては最大3倍、営業秘密侵害に対し最大2倍の懲罰賠償を定めている。最大5倍まで損害賠償を定めている国は中国が唯一である。

②韓国国内でも重大災害処罰法など社会的に大きな話題になった一部の分野のみ最大5倍の損害賠償を導入している。つまり、今回の改正は最近、深刻化している技術奪取をめぐる問題に対する社会的コンセンサスが形成されている背景を受けた措置である。

特許庁の産業財産保護協力局長は「今回の改正により技術侵害に対する実質的な賠償を行われることを期待する」とし、「懲罰的損害賠償制度が効果的に運営されるためには、損害額の算定に必要な証拠をより簡単に収集できる環境が求められるため、後続措置として特許侵害訴訟での活用できる韓国型証拠収集制度導入など制度改善に取り組んでいく」と述べた。

一方、特許権侵害、営業秘密侵害およびアイデア奪取の被害に巻き込まれ困難を抱えている場合は、特許庁知的財産侵害ワンストップ申告相談センター外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます, 1666-6464)にて不正競争調査チームによる行政調査、技術・商標警察による捜査を依頼できる。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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