知的財産ニュース 技術・商標警察による捜査範囲が拡大…不正競争行為と実用新案権の侵害までを捜査する

2023年12月21日
出所: 韓国特許庁

「司法警察職務法」改正案が成立(12月20日)、知財権保護強化への貢献が期待される


(「模倣店」など不正競争行為)最近SNS上で有名になった飲食店Aは、看板や雰囲気を似せたBという店が隣で営業を始めたため苦痛している。BをAのチェーン店だと勘違いする顧客が多く売上高にも大きなダメージを受けている。これを特許庁の商標警察に通報したところ、捜査範囲ではないとの答えが返ってきた。しかし、これからは模倣店の営業など「営業主体誤認混同の行為」も特許庁の商標警察の捜査対象となる。
(実用新案権の侵害)C氏は特許・実用新案権の侵害を受けて特許庁に通報したが、実用新案権の侵害は特許庁の技術警察の捜査範囲には入らないため、警察庁による捜査が行われた。そのため、C氏の権利が救済されるまで長期間を要した。しかし、これからは実用新案権の侵害も特許庁の技術警察による捜査対象となり、効率かつ迅速に権利救済を図ることができる。
※掲載のケースはいずれも説明のための架空の事例です。

韓国特許庁は、技術警察と商標警察による捜査範囲を不正競争行為と実用新案権の侵害および営業秘密の侵害行為にまで拡大する内容の「司法警察職務法」の改正案(国民の力党のイ・チョルギュ議員(2020年11月提案)、共に民主党のジョン・テホ議員(2021年12月提案)が20日、国会本会議で成立したと発表した。

「不正競争防止法」第2条第1号各目に基づき、現行上の不正競争行為では商品主体誤認混同の行為(イ目)、商標形態の模倣行為(リ目)が捜査範囲となっているが、改正により営業主体誤認混同の行為(ロ目)、周知・著名表示の希釈化行為(ハ目)、データ保護措置の無力化行為(ル目の4)に拡大される。営業主体誤認混同の行為と周知・著名表示の希釈化行為の提案者はイ・チョルギュ議員、データ保護措置の無力化行為の提案者はジョン・テホ議員である。産業財産権では、特許・商標・意匠権の侵害行為が現行の範囲となっているが、改正により実用新案権の侵害行為まで拡大される。提案者はイ・チョルギュ議員である。現行では営業秘密の取得・使用・漏洩となっているが、改正により営業秘密の侵害行為の全般(営業秘密の予備・陰謀罪などを含む)にまで拡大される。提案者はイ・チョルギュ議員とジョン・テホ議員である。

「司法警察職務法」は、高度の専門性が求められるか、接近に制限がある空間で発生する犯罪行為など、それに関わる行政機関の方がさらに有効に対応できる犯罪に対して行政公務員に警察の権限を与える「特別司法警察制度」などを定める法律である。特許庁はこの法律に基づいて博士・弁護士・弁理士・技術士および審査・審判業務の経験を持つ専門人員からなる知的財産専門の特別司法警察である「技術警察」と「商標警察」を運営している。

これまで特許庁の技術・商標警察は、専門性を基に技術侵害事件の全体の約2割を捜査※し、毎年数十万点の模倣品を押収するなど知的財産保護に貢献している。最近は半導体のコア技術を中国に流出した組織を逮捕するなど海外への技術流出の防止にも大きく貢献している。
※検察庁が受付けた技術侵害事件のうち特許庁による捜査の割合(2022年):特許・意匠の事件44.1%(116/263)、営業秘密の事件8.0%(42/523)

しかし、技術・商標警察による捜査範囲が不正競争行為と営業秘密の侵害罪の一部に限られており、実用新案権は含まれていないため、知的財産権を侵害した事実を把握したにも捜査ができないか警察庁による追加の捜査が必要となったため、事件処理にタイムラグが生じる問題が起こっていた。

技術・商標警察による捜査範囲を不正競争行為と実用新案権の侵害および営業秘密の侵害行為の全般にまで拡大

今回の「司法警察職務法」の改正は、こうした問題を改善する趣旨であり、有名な商標を営業所・広告物などに無断使用して営業主体を混同させる行為(営業主体誤認混同の行為)や有名商標を関係のない製品に無断使用して商標の価値を毀損する行為(周知・著名表示の希釈化行為)など、商標権の侵害と密接に関わっている不正競争行為に対しても特許庁の商標警察による捜査対象にする内容である。

また、技術警察による捜査範囲を実用新案権の侵害行為と「不正競争防止法」に基づき保護される情報に対する保護措置をハッキングなどで無力化する行為(情報保護措置の無力化行為)まで拡大し、営業秘密の予備・陰謀罪など営業秘密の侵害行為の全般までを範囲に含める。

特許庁の産業財産保護協力局長は「特許庁の技術・商標警察による捜査範囲が拡大され、より有効に捜査できる環境が整ったことは非常に意義がある」とし、「捜査範囲が広がっただけにさらに強い責任感を持って知財権侵害・技術流出の犯罪を積極的に捜査し、韓国企業の被害を最小限に抑えるよう努力する」と述べた。

知財権侵害や技術流出の問題を抱える企業が個人は、特許庁の「知的財産侵害のワンストップ通報相談センター外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます, 1666-6464)」にて技術・商標警察による捜査を依頼できる。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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