知的財産ニュース 高効率の環境配慮型青色量子ドットの特許出願の増加率、韓国が51.3%と世界トップ
2023年12月4日
出所: 韓国特許庁
高効率の環境配慮型青色量子ドットの技術で次世代ディスプレイ市場をけん引する
#量子ドット(Quantum Dot)は、サイズによって色が変わる直径2~10ナノメートルの半導体結晶のことで、光安定性と色純度が高く明るさと消費電力が優れるため、ディスプレイ、太陽電池、バイオセンサーなどさまざまな分野に活用される。2023年ノーベル化学賞を量子ドットの発見と合成に貢献した科学者が受賞したことからその重要性がわかる。
#量子ドット素材の市場※は、2023年から年平均12.3%成長し、2034年には5.5億ドルに達すると見込まれ、活用が最も多いとされる量子ドットのディスプレイ市場※※は、2022年の40億ドルから年平均12.4%成長し、2030年には101.8億ドルに達するとみられる。
※IDTechEx, “Quantum Dot Materials and Technologies 2024-2034: Trends, Markets, Applications”, 2023.08.
※※Virtue Market Research, “QLED/QD-OLED display market research report”, 2023.07.
#2006年、欧州連合(EU)が特定有害物質を含んでいる電子製品を制限した※以降、関連業界はカドミウムを含まない環境配慮型量子ドットを主要な開発方向としている。青色量子ドットは、赤や緑に発光する量子ドットに比べて寿命が短く効率が低いとされており、高効率の環境配慮型青色量子ドット※※は次世代ディスプレイ分野のカギとなっている。
※電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限するEUの規制(RoHS: Restriction of Hazardous Substances): 2006年に発効した電気・電子機器に含まれるカドミウム、鉛、水銀など特定有害物質の含有量を制限するEUの規制
※※高効率の環境配慮型青色量子ドット:注入される電流に比べて放出や変換された光子数が多く、寿命が長くて有害物質を含まない青色に発効する直径2ナノメートル以下の半導体結晶
ここ10年間、次世代ディスプレイの中核素材とされる「高効率の環境配慮型青色量子ドット」の世界の特許出願は年平均27.8%増加している。同期間、韓国の特許出願は年平均51.3%増加し技術開発をリードしている。
高効率の環境配慮型青色量子ドットの特許出願、ここ10年間年平均27.8%成長
特許庁が五庁(IP5:日米欧中韓の知的財産庁)に出願された世界の特許を分析した結果、高効率の環境配慮型青色量子ドットの出願件数が2012年13件からここ10年間年平均27.8%増加し、2021年には118件となっている。とりわけ、129件が出願された前期5年(2012年から2016年まで)に比べ後期5年(2017年から2021年まで)には752件の特許が出願され、約5.8倍増加していることがわかった。
韓国、年平均51.3%増加し世界トップ、出願件数も47.6%とトップ
国別の出願人をみると、韓国の出願の増加スピードは年平均51.3%と世界トップであり、中国が年平均40.3%成長して2位となっている。
同期間、出願件数は韓国が47.6%(419件)と最も多く、2位は中国26.2%(231件)、3位はアメリカ14.4%(127件)、4位は日本5.8%(51件)、5位は欧州5.2%(46件)であり、登録特許の順位も同じとなっている。
主要出願人10位内に韓国の出願人が4社と最多
主要出願人は、韓国のサムスン電子が32.7%(288件)と最も多く、2位は中国のTCL14.8%(130件)、3位はアメリカのナノシス10.7%(94件)、4位は韓国のサムスンディスプレイ4.1%(36件)、5位はイギリスのナノコテク4.0%(35件)などとなっている。ほかには9位が韓国の弘益大学(1.5%、13件)、10位が韓国のドンウファインケム(1.2%、11件)となり、10位内に韓国の出願人が4社と国別では最も多くなっている。
登録出願をみると、1位サムスン電子(29.7%、123件)、5位弘益大学(2.4%、10件)、6位サムスンディスプレイ(2.2%、9件)、6位ドンウファインケム(2.2%、9件)、9位蔚山科学技術院(1.7%、7件)と10位内に韓国の機関が5つ入っている。
高効率の環境配慮型青色量子ドットの技術、特許技術の成長段階のうち2段階の成長段階にある
分析対象の期間を4区間に分けて出願人数と出願件数を両軸にした変化から特許技術の成長段階※がわかるが、高効率の環境配慮型青色量子ドットの技術は世界および主要国においてそれぞれ2段階の成長段階にあることがわかる。
※特許技術の成長段階:1段階(胎動)-2段階(成長)-3段階(成熟)-4段階(衰退)-5段階(回復)
特許庁の半導体素材審査チーム長は「次世代ディスプレイ市場をリードするためには高効率の環境配慮型青色量子ドットの技術において特許を獲得することが何より重要だ」とし、「カーボンニュートラル、環境保護の時代の流れに合わせて韓国企業が高効率の環境配慮型ディスプレイ用の新素材を開発して市場をけん引するよう、高品質の審査のみならず関連する特許情報を引き続き提供していく」と述べた。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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