知的財産ニュース ソウル行政裁判所の判決、AI発明者を否定した特許庁の無効処分を支持
2023年7月4日
出所: 韓国特許庁
特許庁、国民と共にAI発明者の法的地位を話し合う
韓国特許庁は、AI(人工知能)を発明者として記載した特許出願(※)に対する特許庁の無効処分に不服して昨年12月にソウル行政裁判所に提起された行政訴訟事件と関連し、ソウル行政裁判所は現行法上人だけが発明者として認められるという理由で特許庁の無効処分を支持する判決(2023年6月30日)を下したと発表した。
※米国のAI開発者(スティーブン・テイラー)が、自分が開発したAIが食品容器等2つの異なる発明を自ら行ったと主張→世界中16か国に特許出願
米国・欧州・オーストラリアでも最高裁判所でAIを発明者として認めないことが確定し、英国・ドイツでは最高裁判所に係属中であり、アジアでは初めて韓国の裁判所で判決としてAIを発明者として認めなかった。
主要国のDABUS特許出願関連訴訟の進行経過
1審裁判所の不認定(不服可能):韓国
最高裁判所の不認定(確定):米国、欧州、オーストラリア
最高裁判所に係属中(控訴裁判所の不認定):英国、ドイツ
このような主要国の裁判所の結果にもかかわらず、AIが数か月かかっていた半導体チップを6時間で完成したり、新型コロナウイルスワクチンの安定性を高めて効能を100倍以上増加させたりするなど、人がしていた仕事をAIが代わりに行う事例が増えている。特許分野ではないが、最近、AIが美術や音楽などの著作物の制作に関わった事例が相次いでいる。米国著作権庁は、人が表現した創作物とAIが作った結果物が相互結合している著作物に対し、人を著作者にして著作権として登録するという指針を今年3月に発表したところである。
特許庁は、このようなAI技術の発展速度を考慮し、今後あり得る特許制度の変化に備えるため、さまざまな議論を行ってきた。先月は、米国で開かれたIP5(韓国、米国、欧州、日本、中国)庁長会合で韓国特許庁が提案した「AI発明者に関連する法制の現況・判例の共有」の議題が案件として最終承認されるという成果を収めた。同時に、主要国産業界からの要求により、AI関連発明(※)に対するIP5共通の審査基準を提示することも議題として採択された。
※AIはビッグデータを内部のアルゴリズムを通じて自ら学習するため、AI技術に関連する発明の内容をどの程度まで詳細に記載すべきか、明細書記載要件の問題が発生する
IP5庁長会合の後続措置として、特許庁は特許庁ウェブサイトに「AIと発明(仮称)」コーナーを7月20日付けで開設する計画である。このコーナーには、AIを発明者として認めるか否かに対する国内外の議論事項および主要国の裁判所判決、AI関連発明の審査基準などが開示される予定である。 また、将来に必要な特許法制の改正方向を公正かつ透明に定めるために、上記ウェブサイトのコーナーを活用して7月20日から9月末まで国民向けアンケートを実施する予定である。これに加えて、10月には国民向けアンケートの結果を参照し、2021年度にも運営している産業界、学界、研究界などAI専門家協議体を再構成してAI発明者に対しどのような特許法体系を整えるべきか、韓国の立場をまとめていく計画である。
これらの国民向け議論の結果を踏まえ、今年10月に開催されるWIPO(世界知的所有権機関)のSCP(特許法常設委員会)(※)と、来年6月に韓国で開催されるIP5庁長会合を通じて国際知的財産会議体に韓国の立場を伝える計画である。
※「AI発明者の法的地位」が議題として上程されている
特許庁長は、「前回のIP5庁長会合を通じて、主要国の特許庁だけでなく、産業界でもAIと関連する多様な知財権の懸案に多大な関心を寄せていることが実感できた」とし、「韓国特許庁は、これからIP5やWIPOなどとのAI関連特許制度の議論に当たって主導的な役割を担い、国際的に調和した特許制度を確立していきたい」と述べた。
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