知的財産ニュース 韓国大検察庁・特許庁、技術流出犯罪の量刑基準セミナーを共同開催
2023年5月2日
出所: 韓国特許庁
特許庁・大検察庁、技術流出犯罪の「軽い処罰」解決に団結
- Aさんは、韓国内鉄鋼企業の製造技術を中国の競合他社に流出させた。被害企業は技術開発に3年間100億ウォン以上の費用を投入するなど相当な努力を重ねてきたが、裁判所はAさんが初犯という理由などにより懲役1年、執行猶予2年を言い渡した。
- Bさんは、転職を目的に在職中の会社のブロックチェーンセキュリティ技術を流出させた。被害企業は技術開発に2年間70億ウォン以上を投資したが、裁判所はBさんの犯行により会社に発生した損害を特定しにくいという理由で懲役1年と罰金1千万ウォンおよび執行猶予2年を言い渡した。
韓国特許庁と大検察庁は、技術流出犯罪の軽い処罰問題を解決するために力を合わせることにした。両機関は、5月2日火曜日午後4時にソウルで「技術流出犯罪の量刑基準セミナー」を共同で開催し、営業秘密侵害犯罪に対する処罰水準を強化し、技術流出犯罪の被害規模を算定する案などを議論する。
※量刑基準:懲役刑を定め、執行猶予を決定する際に参考となる基準
最近、国家間の技術覇権争いが激化するに伴って韓国企業を対象にした技術流出の試みが相次いでいる。国家情報院によると、この5年間(2018~2022)摘発された産業技術の海外流出事件は計93件であり、それによる被害額も約25兆ウォンと推計される。摘発されていない事件まで考慮すると、技術流出による経済的被害はさらに甚大になると予想される。
しかし、苦労して技術流出犯罪者を捕まえても、初犯であるか被害程度を算定しにくいという理由でその大部分が「軽い処罰」で済まされ、技術流出犯罪が毎年繰り返されているのが実情である。国家コア技術海外流出の法定刑は懲役3年以上最大30年まで、営業秘密海外流出の法定刑は最大懲役15年までと規定されているが、2019年から2022年まで言い渡された技術流出事件のうち実刑は10.6%(※)にすぎず、営業秘密海外流出の場合、2022年に言い渡された刑量は平均14.9月(※※)である。犯罪の抑制と予防のためには、適正水準の処罰が必要なだけに、技術流出犯罪の量刑基準に対する検討を通じて処罰を強化できる改善案づくりが急がれる状況である。
※不正競争防止法第18条第1項及び産業技術保護法第36条(国内、国外を含む)に違反した技術流出事犯に対する裁判所の言渡し445件のうち47件(2019~2022)
※※平均懲役刑量(月):12.7(2018)→14.3(2019)→18.0(2020)→16.0(2021)→14.9(2022)(大検察庁)
特許庁と大検察庁は、昨年から技術流出犯罪の量刑基準に対する研究委託と国家情報院、産業通商資源部、警察等技術流出対応政府機関との協力を通じて初犯が多く被害規模の算定が困難な技術流出犯罪の特殊性に合わせて量刑基準と関連制度の改善案を議論してきた。今回のセミナーでは、これまで議論してきた制度の改善案を発表し、量刑委員会に対し改善案に関する意見を述べる予定である。 セミナーの第一発題は、「営業秘密侵害犯罪量刑基準の整備案」をテーマに韓世大学のチョ・ヨンスン教授が発表する。海外流出の場合、勧告刑量を2~5年などへと従来の2倍以上に引き上げ、初犯であっても強度の高い刑を受けられるようにするなど、営業秘密侵害罪の特性を考慮した意見を提示する。
第二発題は、「技術流出犯罪の被害規模算定案」をテーマに、全州地方検察庁のアン・ソンス重要経済犯罪調査団長が発表する。技術流出犯罪による経済的被害規模の立証の現実的な困難と限界を議論し、その代案として量刑基準による刑量決定過程で研究開発費用などを考慮する案などを提示する。
最後に、「最近の量刑基準整備の動向」をテーマに、檀国大学のチェ・ホジン教授が量刑委員会の量刑基準整備の動向に基づいて知的財産権犯罪の量刑基準整備に向けて克服しなければならない課題などを発表し、その後質疑応答および討論が行われる予定である。
検察総長は、「知的財産は金の卵を産むガチョウのようなものだ。知的財産を侵害して技術を流出させる犯罪は、金の卵を産む前にガチョウの腹を切ってしまうのと同じだ」と話した上で、「技術流出犯罪に力を集中させて捜査を徹底する一方、企業と国民経済に及ぼした被害に相応する厳重な処罰が下されるよう、制度的基盤の強化が強く求められている」と述べた。
特許庁長は、「今日の技術流出犯罪は、企業の存続と国の経済、安全保障に直結する重大な犯罪だ」とし、「特許庁は知的財産の主務官庁として、『現代販の売国』に他ならない技術流出犯罪が最小化するよう、役割を忠実に果たす考えだ」と話した。
一方、この日のセミナーには、国家情報院、国家知識財産委員会、産業通商資源部、関税庁等技術保護関連政府機関からの関係者と技術流出関連捜査検察官が多く参加し、イベントは特許庁の公式YouTubeチャンネルを通じてオンラインでも生中継される。
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