知的財産ニュース 韓国特許庁、有名商標に対する先使用者保護規定を制定

2023年3月28日
出所: 韓国特許庁

私が使用していた未登録商標、他人が使用して有名になったら?

事例

先にA商標(製品:おもちゃ)を使用していた甲がおり、後にA商標と類似しているA'商標(製品:おもちゃ)を使用した乙がいる。乙は商標の有名性を獲得し、甲に使用禁止を警告した。

甲は、特許庁に商標登録をしないまま、Aという商標を使用しておもちゃを販売してきた。ある日、別の人である乙が、偶然甲が使用する商標と類似しているA’を自社の商標として使用しおもちゃを販売し始めた。A’はテレビ広告・SNSの広報などを通じて大きな人気を博し、おもちゃ分野で韓国内売り上げ1位に上るなど、韓国に広く知られるようになった。その後、甲は乙からA商標を使用しないようにという警告状をもらった。

今年9月29日から国内に広く知られている他人の商標(以下「有名商標」という。)と同一・類似の商標を先に使用していた者は、不正な目的がない限り、当該商標を引き続き使用できるようになる。

韓国特許庁は、このような内容を盛り込んだ改正「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」(※)(以下「不正競争防止法」)が3月28日火曜日に公布され、9月29日金曜日から施行予定であると発表した。法改正の前は、自分が商標を先に使用していたとしても、同一・類似の他人の商標が有名になった時点からは当該商標をこれ以上使用できなかった。先使用者は、製品や営業所の看板などを廃棄・交換するなどの経済的損害を甘受しなければならなかった。今回の改正法は、そのような不合理を改善し、善意の先使用者を保護するためのものである。ただし、このような規定が導入されても、先使用者は自分の商標を他人が使用することを禁止するなどの積極的な権利行使を行うことはできない。したがって、自分が使用する商標を積極的な権利として認められるためには、他人より先に出願して商標登録を受けることが望ましい。有名商標と先使用者の商標の共存によって発生し得る消費者の誤認混同を防止するため、改正法には、有名商標の保有者が先使用者に誤認混同の防止に必要な表示を請求できる規定も設けられている。
※ホン・ジョンミン議員代表発議(2021.1.26)、イ・ギュミン議員代表発議(2021.1.29)、ハン・ムギョン議員代表発議(21.3.16)

また、アイデアの奪取行為差止請求権に対する時効が奪取したアイデアの無断使用行為を認知した日から3年、または不正競争行為が始まった日から10年と明確に規定される。アイデアの取引関係がより安定し、アイデアの活用・普及に役立つと予想される。

不正競争行為の行政調査で現場調査の対象を書類、帳簿・製品だけでなく、デジタルファイルなども含む「資料」に拡大する内容と、営業秘密原本証明機関が国から受け取った補助金を他の目的で使用した場合、それを義務的に回収するようにする改正も行われた。

特許庁の産業財産保護協力局長は、「最近、SNSなどの発達により、特定の商品や営業が短期間で有名性を獲得する事例が増加すると予想されるが、今回の改正案は、そのような場合、善意で商標を先に使用していた者を保護できる有意義な法案だ」とし、「公正な取引秩序の確立など、制度の整備に向けた取り組みを続けていきたい」と強調した。

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