知的財産ニュース 審判請求された紛争、10件に9件は特許審判院で終わる

2023年3月2日
出所: 韓国特許庁

特許審判院開院25周年契機に25年間の特許審判を分析

韓国特許庁の特許審判院は、3月1日水曜日に開院25周年を迎え、過去25年間(1998~2022)処理した産業財産権紛争に関する審判を分析した結果、審判件数計277,160件のうち253,718件は裁判所提訴など追加の手続きなしに特許審判院段階で終わり、事件終結率が91.5%を記録したと発表した。また、特許審判院発足前は13.5か月(1997年)かかっていた審判処理期間は、7.9か月(2022年末)に短縮され、40%以上改善されたことがわかった。

特許審判院:特許、商標、デザインなどの産業財産権の出願に対する審査官の処分や登録済みの産業財産権の効力の有無などに関する紛争を解決する特別行政審判機関として、過去の特許庁審判所と抗告審判所を統合して1998年3月1日に発足した

特許審判院の審決に不服し、特許裁判所に提訴する割合も、特許審判院発足初期(1998年3月~2002年12月)は23.9%であったのに対し、この5年間(2018年1月~2022年12月)は10.7%へと半分以上下落した。過去25年間、特許裁判所に提訴可能な特許審判院の審決(145,879件)(※)のうち実際に訴訟につながったのは23,442件と提訴率の平均は16.1%となり、特許裁判所に提訴された23,442件のうち75.4%の17,680件は特許審判院が下した結論が特許裁判所で維持されるなど、特許審判の正確性と迅速性が高まっていることを示している。
※審判請求件数全体のうち取り下げられたか、拒絶決定不服審判の請求後に登録された件数などを除く

このような成果は、発足当時26人であった審判官を107人にまで拡大したことに加え、口頭審理の拡大などにより当事者の手続権を保障し、審判品質評価委員会の運営、審判官の職務教育・研究など特許審判の品質と専門性の向上に努めてきた結果とみられる。これとともに、昨年から特別審判部(※)を運営して法律・技術の争点が複雑で社会的影響が大きい事件を専担させることで、審理の充実と正確な審決を図っている。今年は両当事者がいる審判事件の場合、口頭審理を原則として全面的に開催し、審理過程で証人尋問や現場検証などの証拠調査を積極的に実施することで、審判の正確性を高めていく考えである。
※常設審判部ではなく、審判事件の特性に合わせて審判経験が豊富な局長級審判長や専攻分野の審判官などで合議体を構成する

特許審判院は、中韓特許審判院長会談(2012)、欧韓特許審判院長会談(2019)を始めて以来、世界5大特許庁(IP5)(※)特許審判院長会談を創設(2021)するなど、国際協力を拡大している。審判制度の国際的な比較・研究、審判の動向に関する情報交換などを通じて、急増する国際知的財産紛争の結果に対する予測可能性を高め、審判能力を強化していく計画である。
※IP5(Intellectual Property 5:韓国、米国、欧州、日本、中国)

また、中小企業が希望する場合、中小企業と大企業間の審判紛争を他の審判より早く処理する迅速審判を施行(2015)し、低所得層、障害者、小企業などが特許審判で弁理士の助力を無料で受けられる国選代理人制度を施行(2019)するなど、社会的弱者向けの支援を強化している。

特許庁の特許審判院長は、「韓国の審判官は、1人当たりの審判処理件数が他の国に比べてはるかに多い(※)にもかかわらず、審判品質の面で良い成果を挙げている」とし、「デジタル審判システムの構築など、特許審判制度とインフラのイノベーションを通じて、変化する知的財産環境に素早く対処していきたい」と述べた。
※審判官1人当たりの特許審決件数(2021):韓国(49件)、米国(32件)、日本(29件)、欧州(17件)

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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