知的財産ニュース 韓国特許庁、2023年度の業務計画を発表

2023年1月19日
出所: 韓国特許庁

知的財産で先端技術をより堅固に、イノベーション企業をより強く

韓国特許庁は、1月19日(木曜)、知的財産を通じて国の競争力を高めてダイナミックな経済を回復するための「2023年度業務計画」を発表した。

主な先進国も技術覇権争いや不況の克服に向けて積極的に知的財産政策をとっている中、韓国特許庁は2023年、政府競争力、技術競争力、企業競争力の強化という3大推進戦略の下、12の重点課題を策定した。

第一に、知的財産行政システムの革新を通じて政府競争力を強化する。

巨大人工知能モデルの開発、審査検索の高度化、審判方式の自動化などの人工知能基盤の知能型知的財産行政システムを構築して審査業務の効率化を図る。

デジタルトランスフォーメーションへの対応と国民の利便性向上の観点から、知的財産制度の合理化に向けて、商標併存同意制度(※)の取り入れと医薬品特許権存続期間延長制度を先進国並みに改善する方策も推進する。
※登録商標と類似であるという拒絶理由がある場合であっても、商標権者が人の後願商標を登録することに同意すれば商標登録を認める制度

昨年確保した半導体分野の専門審査官30人を3月に早期投入し、専門審査組織も先立って構築することで、韓国企業が半導体分野で超格差が確保できるように支援する。

技術犯罪捜査支援センターを新設して科学捜査機能を強化するなど、技術警察の捜査能力を高め、検察庁やアメリカ合衆国移民・関税執行局と協力体系を構築することで国際技術犯罪に係る捜査を強化する。

第二に、先端産業分野の未来成長動力の確保のために技術競争力を強化する。

5億件以上の全世界特許ビッグデータを分析して重複研究を防止し、有望な技術を発掘して研究開発(R&D)システムを革新する。特に今年には半導体、ディスプレイなど先端産業の9分野に集中して支援する。

1月中に特許、経済、統計の各分野の専門家に構成された特許ビッグデータ分析専門組織の「特許統計センター」を設置する。

関係機関とともに12大国家戦略技術分野に特許基盤研究開発(IP-R&D)の義務化も推進し、優秀特許の先取りを支援し、主な技術分野へと持続的に拡大する。

対外依存度の高い品目を対象に代替技術確保戦略を設けるなど、供給網の安定化を推進する。

第三に、イノベーション企業における知的財産基盤成長エコシステムを構築して企業競争力を強化する。

人工知能と新しい評価モデルに基づいた知的財産価値評価システムの革新を推進し、下半期に知的財産評価管理センターを設置して価値評価の品質管理を強化する。

知的財産権を事業化して発生した所得に対して租税を減免する特許ボックス制度を導入して技術事業化を促進する。

有望な企業が海外における知的財産問題で困らないように、侵害が頻繁に発生する国への特許官の派遣を拡大して死角地帯を解消し、特許紛争リスク警報サービスも米国から欧州・中国にまで拡大し、特許管理金融会社(NPE)に対して体系的な対応システムを構築する。

中東・アセアンなどを中心に韓国型知的財産システムの輸出を拡大し、知的財産行政韓流を普及して戦略市場の開拓の支援をリードする。

韓国特許庁長は、「世界の覇権争いと直面している複合危機が克服できる核心動力こそ知的財産である」と強調し、「韓国特許庁は知的財産の担当機関として、質の高い知的財産行政サービスを実現し、知的財産に基づいて未来の先端技術をリードし、韓国企業を世界的なイノベーション企業に成長させてダイナミックな経済成長の実現をサポートする」と述べた。

【参考1】ビジョン体系図

「知的財産でダイナミックな経済成長を実現」とのビジョンの下、政府競争力(国民が体感できる質の高い知的財産行政を実現)、技術競争力(デジタル時代における未来の先端技術をリード)、企業競争力(知的財産基盤のグローバルイノベーション企業を育成)という3つの目標が設定されている。その下の3大推進戦略および12の最重要課題は、次の本文を参照。

【参考2】2023年度業務計画の主要内容

主要内容

1.知的財産行政システムのイノベーション

  • 人工知能(AI)が審査・審判を補助…より速く、より正確に
  • 半導体専担審査組織を構成…コア特許の先取り等、超格差を支援
  • 科学捜査機能が強化された「技術犯罪捜査支援センター」を新設
  • 米国国土安全保障捜査局と技術犯罪の捜査に向けた国際共助体系を構築

2.先端産業分野の未来成長動力の確保

  • 世界中の特許ビッグデータ(5.3億件)を分析…半導体等の先端産業分野を集中支援
  • 12大国家戦略技術分野の特許基盤研究開発(IP-R&D)の義務化を推進
  • 6G・人工知能大国の立地を明らかに…標準特許の先取り支援の期間・範囲を拡大
  • 11の主要品目のサプライチェーンの安定化及び防衛産業技術の特許管理体系の新規構築等、知的財産の戦略的活用を拡大
  • 登録料の引き下げ、手数料免除の整備等、産業発展の観点から手数料体系を全面改編

3.イノベーション企業の知的財産基盤成長エコシステム作り

  • 人工知能と新評価モデルに基づいた知的財産価値評価システムのイノベーション
  • 知的財産の事業化収益に税制面の特典(パテントボックス)…技術の事業化を促進
  • サウジアラビア・UAE等に行政システムを輸出…知的財産の韓流化で戦略市場を開拓
  • 知的財産の侵害が多い国に特許官の派遣を拡大…保護の死角を解消

戦略1.知的財産行政システムのイノベーションによって政府の競争力を強化する

  1. デジタル時代にふさわしい知的財産体系に改編
    1. 人工知能(AI)技術を活用して巨大人工知能モデルを開発、審査検索の高度化、審判方式の自動化等、人工知能基盤知能型知的財産行政システムを構築することで審査業務を効率化する
    2. デジタルトランスフォーメーションへの対応と国民の利便性の増進の観点から知的財産制度を合理化するために、商標併存同意制度(※)の導入と医薬品特許権の存続期間延長制度を先進国水準に改善する案も推進する
    3. ※登録商標と類似して拒絶理由がある場合でも、商標権者が他人の後願商標登録に同意する場合、商標登録を許可する制度
  2. 需要者中心の高品質の審査サービスの提供
    1. 半導体専担審査組織を先行的に構築し、昨年確保した半導体専門審査官30人の早期審査投入により、韓国企業のコア特許の早期確保と半導体分野の超格差確保を支援する
    2. また、高品質の審査サービスを提供するために、チーム長中心の品質管理を強化し、官民合同の審査品質諮問委員会を通じて顧客のニーズに応えられる審査政策を見いだす
  3. 正確かつ迅速な知的財産紛争の解決
    1. 先端技術等の高難度事件を処理するための特別審判部の運営方式を改善(※)して審理の専門性を高める
    2. 産業財産権紛争の全ての段階(審判・検察・裁判所)で紛争調停制度との連携を活性化することで、迅速かつ経済的な知的財産紛争解決体系を構築する
    3. ※審判官専攻分野のデータベースの提供、特別審判部の指定基準の明確化等
  4. 知的財産侵害に対する捜査・調査の実効性の向上
    1. 今年中、知識財産保護院内に技術犯罪捜査支援センターを新設して科学捜査の機能(※)を補強する等、技術警察の捜査能力を強化する
    2. 検察庁との協力体系(※※)や米国国土安全保障捜査局(HSI)との国際共助体系を構築する等、技術犯罪の捜査に向けた国内外の捜査機関との協力も拡大する
    3. ※デジタルフォレンジックの支援、最先端科学捜査装備の拡充等
      ※※捜査情報システムの連携、デジタルフォレンジック等の科学捜査での協力、検察捜査と調停の連携等

戦略2.先端産業分野の未来成長動力を確保して技術競争力を強化する

  1. 知的財産ビッグデータ基盤国家研究開発(R&D)のイノベーション体系の構築
    1. 5.3億件の世界中の特許ビッグデータを基に半導体・二次電池等9つの先端産業分野を集中的に支援して有望技術を見いだす
    2. 「特許統計センター(※)」を新設(1月)して知的財産の動向や知的財産の価値と経済的効果等に対する統計・データの統合分析を行う
    3. また、科学技術情報通信部等の関連政府機関との協力を通じて、12大国家戦略技術分野で政府研究開発(R&D)課題を遂行する際に特許基盤研究開発(IP-R&D)の義務化を拡大することで、重複研究の防止及び優秀特許の先取りを支援する
    4. ※知識財産研究院内の特許・経済・統計の博士級専門家で構成
  2. 先端産業分野のコア・標準特許への戦略支援の拡大
    1. 6G・人工知能等、国際標準の先取りが重要な分野の標準特許確保戦略に対する支援の期間(※)及び範囲(※※)を拡大する
    2. 韓国企業が海外の標準技術を導入する際に適正なロイヤルティだけ支払うよう必須性の検証(※※※)を拡大し、標準特許への対応能力を強化する
    3. ※期間:3年以上の標準特許確保中長期支援の拡大(2022年)30%→(2023年)50%
      ※※範囲:科学技術情報通信部・産業通商資源部が管理する韓国内事実標準化対応団体を含める
      ※※※海外企業等が標準特許と宣言した特許が実際に標準と一致するか否かを検証
  3. 経済安全保障のための知的財産の戦略的活用
    1. 特許と輸出入の連携分析により海外依存度が高いサプライチェーンの主要品目を導出し、11の主要品目に対する深層特許分析(※)を通じて技術の国産化戦略及びサプライラインの多角化等、代替技術の確保戦略を設ける
    2. また、国家戦略技術の海外流出を防止するために、特許管理体系の構築を国家コア技術から防衛産業技術に拡大し、経済安全保障上重要な発明に対し、必要な場合、秘密特許制度の適用対象を先進国水準に拡大する案も検討する
    3. ※特許出願人、権利者、発明者の情報を通じて代替技術の企業・発明者を把握
  4. 創意能力の向上に向けたイノベーションインフラの拡充
    1. 発明者が貢献度に応じて正当な報奨をもらえるよう職務発明関連制度を改善して発明人と企業の発明意欲を高める
    2. 登録料の引き下げ、手数料免除の整備等、産業発展を促進する観点から、審査・審判・権利維持関連の手数料制度の全般的な改編を推進する
    3. また、国家教育課程で発明教育の正規化、広域発明教育センターの新設、地域特化人材の育成に向けた知的財産重点大学2か所を追加で指定・運営(※)する等、対象別のオーダーメイド型教育を拡大して創意人材を育成する
    4. ※(2022年)4大学(慶尚大、全南大、忠北大、忠南大)→(2023年)大学2か所の追加を推進

戦略3.イノベーション企業の知的財産基盤成長エコシステム作りを通じて企業の競争力を強化する

  1. 市場中心の知的財産の取引・事業化の促進
    1. 官民協力を通じて知的財産金融と取引の根幹となる価値評価体系をイノベートするために、知的財産・技術市場全般の特性を反映した新評価モデルの開発を推進する
    2. また、人工知能基盤の定量評価と専門家(弁理士・評価機関等)の定性評価を融合した価値評価システムを構築し、「知的財産評価管理センター」を下半期に設置して価値評価に対する品質管理を強化する
    3. 一方で、企業が知的財産を事業化して上げた収益(※)に対して税額を減免するパテントボックス制度を導入する等、税制面の特典を拡大することで技術の事業化を促進する
    4. ※知的財産を適用した製品の販売収益のうち知的財産の寄与分等
  2. 知的財産基盤創業・成長への支援
    1. 政府と民間、中央と地方の協力を通じて知的財産支援事業の構造を改編することで、首都圏集中を克服し、現場寄りの支援が行われるように改善する
    2. また、政府機関間の協力を通じて、優秀な知的財産を保有している創業企業を対象に事業化と投資・販路の確保まで提供する政府全体のリレー支援を強化する
  3. 中小・ベンチャー企業の知的財産セーフティーネットの構築
    1. 特許侵害訴訟時に技術・特許の専門家である弁理士を代理人として追加で選任できる「共同代理制度」と権利侵害証拠を円滑に確保するための「韓国型証拠収集制度」の導入により訴訟法制を先進化する
    2. 特許と営業秘密を適切に活用した「技術保護最適化(IP-MIX)戦略コンサルティング」を新規で支援することで、企業の自主的な知的財産保護能力の向上を支援する
  4. 輸出企業に有利な国際知的財産環境の構築
    1. 有望企業が海外で知的財産問題により困らないよう特許官の派遣を拡大することで、保護の死角を解消し韓国企業を体系的に保護する
    2. 海外特許紛争リスク警報サービスを拡大して技術分野別の紛争危険度と行動要領まで提供する予定である
    3. さらに、中東・ASEAN等を中心に韓国型知的財産システムの輸出を拡大し、国別のオーダーメイド型協力(※)を通じて知的財産行政の韓流を拡散することで戦略市場開拓の支援を主導する
    4. ※第1回韓国・ASEAN特許専門家会合の開催(2023年2月)、インドネシア・タイ等との審査協力(PPH)の推進

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:大塚、柳(ユ)、李(イ)、半田
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
Tel :+82-2-3210-0195