知的財産ニュース 10年間エッジコンピューティング基盤のクラウド特許出願3.5倍増

2022年12月5日
出所: 韓国特許庁

肥大化しているクラウド、エッジコンピューティングが解決する
米中覇権争いの中、韓国の特許出願成長率世界2位

モノのインターネット(IoT)技術が適用されたクラウドサービスが普遍化し、クラウドサーバーが処理しなければならないデータ量が幾何級数的に増加している。サーバーの限界を解決するための代案として、ユーザー端末で一部のデータを分散処理する「エッジコンピューティング」が浮上している。エッジコンピューティングは、中央サーバーですべてのデータを処理する従来のクラウドサービスとは異なり、センサーやユーザー端末など、データが発生する周辺(エッジ)でデータを処理する技術である。データの負荷と応答時間を減らしてリアルタイムでのサービスを可能にする。自動運転や没入型サービス(AR/VR)およびスマートファクトリー/ファームなどで活用されている。エッジコンピューティング市場は毎年45%ずつ成長し、2027年には48億5,000万ドルに上ると予想(※)され、その分技術競争も激しくなっている。
※Markets And Markets, Edge computing Market, 2020.8.
韓国特許庁によると、主要国の特許庁(IP5:日米欧中韓)に出願されたエッジコンピューティング基盤のクラウド技術に関する特許がこの10年間(2011~2020)3.5倍増加(1,033件→3,659件)したことがわかった。

出願人の国籍別では、米国が40.8%(8,228件)と最も多く、中国35.5%(7,175件)、日本5.8%(1,169件)の順である。韓国は3.8%(776件)と4位、ドイツは3%(602件)と5位となっている。特に、韓国の出願増加率は年平均15%と中国(35.2%)に次いで2番目に高い成長を示し、最近エッジコンピューティング分野で韓国の研究開発投資が非常に活発である点がうかがえる。

主要出願人を見ると、1位マイクロソフト(2.3%、460件)、2位アップル(2.1%、427件)、3位インテル(1.9%、387件)、4位メタ(1.5%、295件)、5位グーグル(1.4%、281件)等、米国のビッグテック企業が上位圏を席巻している。韓国内出願人の中では、サムスン(1.2%、250件)が最も多く出願し、LG(65件)、電子通信研究院(ETRI)(38件)の順である。それに次いでベンチャー企業のXAVISnetが4番目に多い出願(15件)をした。

細部技術分野別では、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)のような没入型サービス分野(7,322件)と製造/農業分野(7,309件)の出願が多く、通信プロトコル分野(5,666件)、人工知能(AI)学習モデル分野(2,231件)、自動運転分野(273件)の順である。このうち、人工知能学習モデルに関する出願が年平均49%増加したことが目立ち、今後、人工知能基盤のエッジコンピューティング市場が急速に成長するものと予想される。

特許庁の人工知能ビッグデータ審査課長は、「クラウドサービス自体は大規模な投資が必要な特徴のため大企業がリードしているが、モノのインターネット(IoT)などと融合するエッジコンピューティングでは、中小ベンチャー企業もチャンスを見つけられるだろう」とし、「特許庁は、韓国の中小ベンチャー企業がこの分野の特許競争力を備えるよう積極的に取り組んでいきたい」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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