知的財産ニュース 韓国特許庁、「人工知能発明者」に対するこれまでの議論を白書として発行

2022年3月23日
出所: 韓国特許庁

「人工知能も発明者になれるか?」、議論は続く

韓国特許庁は、「人工知能(AI)が発明者になれるか」などをテーマにこれまで国内外の主要専門家と議論・研究してきた内容を集大成した「人工知能(AI)と知的財産白書」を3月23日に発行(※)した。白書には、人工知能(AI)が作った発明の現況、それを特許でどのように保護するかについて韓国の専門家と議論・政策研究した内容、知的財産主要国が参加した国際コンファレンスでの議論内容などが盛り込まれている。
※「特許庁ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます→冊子/統計→刊行物→その他刊行物」に発行

米国のスティーブン・テイラー博士は、自分が開発したAI(DABUS(※))がレゴのように結合しやすい容器等を自ら発明したと主張し、2018年から世界16か国に特許を申請して論争に火を付けた。これに対し、韓国を含む米国・英国などのほとんどの国では、現行の特許法上、自然人である人間のみ発明者になれるという理由で人工知能(AI)を発明者として記載したテイラー博士の特許申請を拒絶した。しかし、これとは異なり、昨年7月豪州連邦裁判所では豪州特許法の柔軟な解釈(※※)により人工知能(AI)を発明者として認める最初の判決を下した。
※DABUS:Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience
※※人工知能は発明者になれないという明示的な規定がなく、特許法上発明者を表す「inventor」はelevatorのように発明する物としても解釈できる

それを受け、韓国特許庁は人工知能を発明者として認めるか否か、人工知能が作った発明をどのように保護するかをより多角的に議論するため、産業界・学界・法曹界の専門家でつくる「人工知能(AI)発明専門家協議体」を昨年8月に発足させた。協議体の専門家たちは、人工知能(AI)が人間の介入なしに自らすべての発明を完成させるにはまだ厳しい技術水準であるという意見が多数であった。ただし、現在も人工知能が人間にサポートされて発明する程度は可能であり、人工知能技術が発展するに伴って近いうちに人工知能が自ら発明できることに備えて関連法制度を準備していかなければならないという意見も提示された。これとは別に、特許庁は昨年10月から政策研究委託業務を通じて、これから人工知能技術の急激な発展に伴い人工知能発明者を認める状況に備えて多様な立法案を模索してきた。

また、特許庁は昨年12月に政府大田庁舎の国際会議室で米国・中国などの7か国(※)が参加した「人工知能(AI)発明者国際コンファレンス」をオンラインで開催した。国際コンファレンスで、一部の国は、急速に発展している人工知能技術が未来社会・経済と科学技術イノベーションに与える影響を考慮し、政府全体で特許制度を含む人工知能総合戦略を樹立していると明らかにした。
※韓国(主催)、米国、中国、欧州(EPO)、英国、豪州、カナダの特許庁

特許庁はこれからも人工知能分野で韓国が競争力を確保できるよう「人工知能(AI)と知的財産」について専門家の意見を持続的に聞くとともに、国際的にも主導的な役割を果たしていく計画である。今後開かれる先進5か国特許庁会議(IP5(※))を通じて人工知能発明者に対する議論を続けていくだけでなく、世界知的所有権機関(WIPO(※※))でも国際的な議論を先導する計画である。
※IP5:韓国、米国、欧州(EPO)、中国、日本特許庁の会議で、毎年定期的に開催
※※WIPO:「AI and IP」というパネルを年に約2回運営中(今年9月にAI発明者に関する議論を予定)

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