知的財産ニュース 燃えにくい建築仕上げ材で火災事故を予防する
2022年2月28日
出所: 韓国特許庁
火災安全機能強化された高性能準不燃断熱材関連特許が活気
大火災の発生時に断熱材のように燃えやすい建築仕上げ材が被害を拡大させる原因として指摘され、韓国政府は建築物仕上げ材の火災安全性能基準を強化している。これを受け、関連業界では火災に強い建築仕上げ材の開発に力を注いでおり、特に、既存の難燃材料より火災安全機能が強化された準不燃材料の出願が急増し、注目される。火災発生時に利用者の安全を確保するため、物流倉庫などの建築物に使われる仕上げ材の火災安全基準が強化されたことに伴い、関連技術の開発も活気を帯びている。
韓国国内建築物仕上げ材の火災安全性能基準の強化
韓国政府は2015年、6階以上の建築物の外部には火災に強い不燃、準不燃仕上げ材の使用を義務付け、2019年からは3階以上の建築物に適用対象を拡大した。今月改正および施行された「建築物の避難・防火構造等の基準に関する規則」には、建築物仕上げ材の「実物模型試験」を義務付けている。
※国土交通部報道資料参照2021.03.05.
建築物仕上げ材の性能基準が強化され、今後、不燃、準不燃材料などの火災に強い建築仕上げ材への需要も増加すると予想される。建築物仕上げ材は、不燃材料、準不燃材料、難燃材料などに区分される。不燃材料はコンクリート、金属などの素材で、燃えない性質を持つ。準不燃材料は火災に10分間、難燃材料は火災に5分間耐えられる性能を持つ。
韓国特許庁によると、準不燃材料(有機断熱材)関連特許出願は2012年1件、2013年2件から、基準が強化された2015年には8件、2021年は15件と、年平均11%増加したことがわかった。建築物仕上げ材に対する火災安全基準が強化され、難燃材料から準不燃材料へと市場の関心が集まっている。
準不燃材料の出願は中堅・中小企業が主導していることが調査により明らかになった。特許出願は中堅・中小企業52件、個人28件、大企業8件、研究機関7件の順となっている。準不燃材料の国内・海外出願は、国内出願人が95件、海外出願人が3件と、内国出願人の出願が大半を占めている。これは、海外出願人の出願が28%を占めている難燃材料とは対照的であり、韓国建築法の火災安全基準強化に合わせて韓国国内出願人が素早く対応しているものと分析される。
準不燃材料の素材別出願件数はポリウレタンフォーム38件、発砲スチロール34件、フェノールフォーム18件の順である。火災安全基準が強化された2015年以降、優れた断熱性能と難燃性能を掲げたフェノールフォームやポリウレタンフォーム関連出願が増加し、これらを活用した準不燃材料技術が注目を集めることと見られる。
一方、これまで建築物仕上げ材市場を主導してきた難燃材料関連特許は、同じ期間、特許出願が減少傾向にある。2015年33件から2021年には13件と、特許出願が年平均14%減少した。これは、建築物仕上げ材の性能基準が強化されたことに伴って、比較的に火災安全性能の劣る難燃材料の技術開発も減少したものと分析される。
断熱材の国内外市場の展望
2022年、韓国国内における断熱材の市場規模は1兆5,300億ウォンと予想される。全世界の断熱材の市場規模は、2026年まで約5.9%の年平均成長率で成長するものと期待されており、市場規模は817億ドル(約98兆ウォン)に上る見通しである。
※興国証券リサーチセンター 2016、Global Market Insight 2019
特許庁の基礎材料化学課審査官は「建築仕上げ材の性能基準が強化され、準不燃級以上の有機断熱材を開発するための激しい技術競争が予想される」とし、「今後、既存の難燃材料より火災安全性能が向上した準不燃材料が市場を主導すると見られる」と述べた。また、「これから高性能有機断熱材市場を先取りし、不要な紛争を避けるためには、新素材の技術開発だけでなく、特許権の確保による技術保護への努力も重要だ」と強調した。
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