知的財産ニュース 韓国特許庁、「非代替性トークン(NFT)含む知的財産」の青写真描く

2022年1月18日
出所: 韓国特許庁

非代替性トークン専門家協議等を通じて関連知的財産政策の総合分析を推進
特許庁はすでに10年以上前から非代替性トークン概念を活用して「営業秘密原本証明サービス」実施
特許権・商標権などに代替付与、発明者研究ノートに非代替性トークンの適用などを議論

非代替性トークン※(Non-Fungible Token、NFT)が主流である。非代替性トークンは、英国コリンズ辞典で2021年今年の単語に選ばれ、美術家ビープルのデジタル美術非代替性トークン作品『エブリーデイズ:最初の5000日』は、ニューヨーククリスティーズ競売で、約780億ウォンで取引された。最近、非代替性トークン市場は従来の芸術・ゲーム産業を超えて、新事業、基盤産業などの多様な領域(※※)に広がっている。
※デジタル環境での画像・商標などのデジタル資産の所有権を証明する一種の「デジタル証明書」であり、制限なく複製可能なデジタル資産に固有性と希少性の価値を与え、オンライン上の生成と取引が容易な特徴がある
※※(韓国)非代替性トークンで正規品を保証するオンラインブランド品流通サービス、(日本)非代替性トークンを活用した不動産・自動車取引履歴システムなど

フランスの高級ブランドH社の「バーキン」を非代替性トークン化した非代替性トークンブランド「メタバーキン」が昨年計上した収益は約10億ウォンで、バーキンの非代替性トークン1個当たり最大1億ウォンで取引されるなど、大きな人気を集めた。しかし、H社は当該製品の非代替性トークン化に同意したことがないとし、「メタバーキン」に対して商標権および著作権侵害を主張したことがある。

世界1位のスポーツブランドN社は昨年、仮想スニーカーの販売開始7分で約37億ウォンの収益を上げた仮想スニーカーブランドR社を買収した。一方、N社はスニーカーの情報を非代替性トークンとして提供する方法などに関する特許を出願して昨年6月に登録された。このような非代替性トークンを通じて消費者は実体スニーカーの所有権を追跡し、正規品であるかどうかを確認できる。

韓国特許庁は非代替性トークンと韓国の知的財産政策を融合するために、知的財産の視点から非代替性トークンを考える議論の第一歩を今年1月に踏み出す。特許庁はすでに知的財産制度に非代替性トークンの特性を活用してきたと見ることができる。2010年から提供している「営業秘密原本証明サービス(※)」がまさにそれに当たるが、企業の営業秘密に関する資料が固有の情報であることを電子的に認証するという点で、一種の「非代替性トークン活用サービス」といえる。
※営業秘密が盛り込まれた電子文書から抽出した固有の識別値を登録することにより、紛争発生時に営業秘密の保有事実、保有時点を証明できる制度

ここからさらに一歩進み、特許庁は「非代替性トークン-知的財産専門家協議体(仮称)」の発足とともに政策研究受託を開始して、知的財産権の観点から非代替性トークンを徹底的に分析し、活用案を模索する計画である。
「非代替性トークン-知的財産専門家協議体」は、非代替性トークン関連企業などの産業界をはじめ、学界、法曹界の最高民間専門家を委員として構成され、非代替性トークンが特許・商標・デザイン・営業秘密などの知的財産全般に及ぼす影響を分析し、さまざまな争点を見出す予定である。

具体的には、特許権、商標権などに非代替性トークンを適用して知的財産の取引を活性化し、発明・創作過程が盛り込まれた研究ノートなどに非代替性トークンを付与することで発明履歴などの固有性を証明する方法など、知的財産の観点から非代替性トークンの活用案を模索しようとする。加えて、非代替性トークンを活用することで、メタバースで新たに発生し得る商標、デザイン、パブリシティ権の侵害に対する規定を整備するなど、既制度の改善事項についても議論する予定である。さらに、協議体と並行する政策研究受託を通じて、一層深い非代替性トークンの分析および検討を始める計画である。研究結果に基づいて、今後、非代替性トークン市場に新しい道しるべを提示する知的財産政策樹立の基礎資料が作られるものと期待される。

特許庁の特許審査企画局長は「最近、非代替性トークン市場が知的財産の領域に急速に拡大され、非代替性トークンに関する知的財産政策の定立が極めて重要な時点である」とし、「特許庁はデジタル資産をより柔軟に保護する知的財産政策を設けるために、多様な専門家の意見を十分に受け入れ、綿密な研究を経て、知的財産全般に対する非代替性トークンの活用案を先行的かつ主導的に検討していきたい」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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