知的財産ニュース 韓国特許庁、「第1次不正競争防止及び営業秘密保護基本計画(2022~2026)」を発表

2021年12月23日
出所: 韓国特許庁

企業生存のカギ営業秘密、流出防ぐ青写真が出た

  • 国家経済と安全保障に重要なコア技術および保有企業に対する一足早い保護支援を強化
  • コア技術分野退職人材の特許審査官採用などにより海外への人材流出を防止
  • 技術流出の死角を解消するための大学・公共研究機関の営業秘密保護支援を強化

韓国特許庁は営業秘密の流出を防止し、公正な競争秩序を確立するための「第1次不正競争防止及び営業秘密保護基本計画(2022~2026)」を発表した。

近年、企業間競争が激化するに伴ってコア人材の引き抜きやサイバー攻撃、産業スパイなどによる営業秘密の国内外への流出(※)があとを絶たない。 一方、AI・半導体などの先端技術が軍民兼用に活用され、関連企業の技術・経営上の営業秘密の海外流出は国家経済や安全保障まで脅かしている。
※検察の営業秘密事件処理(人):(2017年)1,003→(2018年)975→(2019年)885(年度別検察年鑑)

また、デジタルトランスフォーメーションの加速化やメタバースの登場などにより経済活動がオンライン化することで不正競争行為が多様化し、これに対する対応策作りも急がれているのが実情である。

営業秘密保護に向けた基本計画の主要内容

国家経済と安全保障に重要なコア技術及び保有企業に対して一足早く保護支援を強化していく。また、コア技術研究に携わっていた退職技術人材を特許審査官に採用し、コア人材の海外転職による営業秘密の流出を予防する。これとともに、営業秘密の海外流出の立証要件を緩和(※)し、産業スパイ規定や公訴時効特例(※※)の新設等を通じて海外への流出を遮断する予定である。
※「不正な利益又は営業秘密保有者に損害を与える目的」要件を削除
※※外国の政府・機関・国営企業等のために海外に営業秘密を流出させる者を産業スパイと定義し、これに対する公訴時効の延長等を検討

特許庁技術警察の捜査範囲を営業秘密の無断流出と不当保有等の技術流出全般に拡大し、デジタル・フォレンジック要員等の専門人材を補強して捜査能力を拡充する。

営業秘密紛争の早期解決のために、証拠収集制度の改善と被害者の立証負担を緩和(※)し、営業秘密民事・刑事訴訟の管轄を集中させて裁判の専門性を向上させるための制度改善も推進する予定である。また、法人の組織的流出行為に対しては罰金を引き上げ、没収制度を導入するなど、営業秘密侵害によって発生した不当利益の返還を推進する。
※原告が被告の営業秘密使用の具体的実施形態を提示し、被告がそれを否認するためには自分の具体的実施形態を提示(特許法に導入)

さらに、これまで企業に比べて比較的に保護対策が不足していた大学等に営業秘密管理体系の構築と営業秘密保護専門家の派遣を推進する。加えて、企業と大学の研究開発の成果物を特許と営業秘密を活用して戦略的に保護するよう、方法論教育と戦略樹立も支援する。

不正競争防止に向けた基本計画の主要内容

不正競争行為を類型別に再分類し、新しい類型の不正競争行為の登場に柔軟に適用できるように法体系も整備する予定である。また、メタバース、NFT(非代替性トークン)等のデジタル環境で競合他社を貶めるなどの不正競争行為の類型を研究し、制度改善を推進する。

今年の11月に新たに追加されたデータ及びパブリシティ権の保護に関する「行政調査指針」を設け、「データの保護措置無力化行為」を技術警察の捜査範囲に含める予定である。また、不正競争行為の行政調査の実効性を確保するために、是正命令及び命令不履行時の過料賦課の導入も推進する。

今回の基本計画を樹立するため、今年4月に産業界・学界・法曹界などの約30人の民間委員で構成された推進団が発足し、13回にわたる議論と実態調査の結果をもとに政策課題を導き出した。来年からは第1次基本計画の実践に向けた細部計画を毎年樹立し、施行していく予定である。

特許庁長は「技術覇権時代において、技術競争力の維持と経済安全保障の脅威に対する対応を徹底するために、半導体、バッテリーなど、韓国の先端技術が海外に流出しないよう事前・事後対応を強化し、企業と大学に強力な営業秘密保護環境を構築するための全政府的協力を拡大していく」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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