知的財産ニュース 自動運転車開発業界の地殻変動の動き

2021年11月11日
出所: 韓国特許庁

自動運転技術確保の競争熾烈:完成車、情報技術(IT)企業、部品企業間三つ巴の争い

特許多出願の順位、韓国企業は現代自動車が3位、LGが6位で頭角

  • フォルクスワーゲングループのヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)は、「自動車市場でゲームチェンジャーは電気自動車ではなく、自動運転車だ」と話した。(2021年9月5日)
  • 自動運転車市場(※)は2025年には1,549億ドル(約181兆ウォン)、2035年には1兆1,204億ドル(約1,313兆ウォン)と、年平均41.0%の成長率で急成長すると予想される。韓国国内の自動運転車市場も2020年1,509億ウォンから2035年26兆1,794億ウォンに年平均40.0%成長すると見込まれる。

※出所:日本矢野経済研究所、ソフトウェア政策研究所、韓国科学技術情報研究院(KISTI)

最近、自動車産業は単なる移動手段から「モビリティプラットフォーム」へと変革を遂げている。特に、自動運転車が市場のゲームチェンジャーになると見通されているが、こうした自動運転車の開発をめぐって、関連業界で地殻変動の動きが起こっている

韓国特許庁の自動運転技術に関する特許分析の結果によると、完成車メーカー、IT企業、自動運転部品企業が自動運転技術特許分野の主導権を握るために三つ巴となって争っている。

特に、自動運転車市場が急激に成長していることによりグローバルIT企業が新規参入しており、既存の完成車メーカーとの市場での主導権確保競争に乗り出している模様である。

これにより、完成車メーカー(トヨタ自動車、ゼネラルモーターズ、現代自動車など)、IT企業(ウェイモ、アップル、バイドゥ、LG、テスラなど)、自動運転部品企業(NVIDIA、Velodyne Lidar、Mobileye等の半導体・ライダーのメーカー)が活発に特許を出願している。

既存の完成車メーカーはすでに構築されている製造基盤を、IT企業は検索・スマートフォン・家電・航法等のIT企業ならではの強みを、部品企業はコア部品に対する技術力をもとに、自動運転車関連特許権の確保に取り掛かっている。

特許庁がIP5(※)の自動運転車特許出願動向(2006年~2020年)で完成車メーカー、IT企業、部品企業等グループ別先導企業(17社)のIP5国家内の自動運転特許出願件数を分析したところ、計2万4,294件であることがわかった。

※IP5:全世界で特許出願の85%を占める先進5カ国(米・EU・中・日・韓)の特許庁

出願件数は、全体24,294件のうち完成車メーカーが13,280件(55%)と、最も高い割合を占めている。次いでIT企業は5,765件と24%、部品企業が21%のシェアとなっている。

自動運転車の主要技術別に見ると、完成車メーカーは認知(5,630件)と制御(5,423件)技術分野に強みを持っており、IT企業と部品企業は認知(IT企業:3,704件、部品企業:4,663件)技術分野で比較的に特許出願が多いということがわかった。

IT企業と部品企業は、最近、完成車メーカーより一足早く特許出願量を急激に増やしており、今後の特許主導権争いで優位に立つと予測される。

多出願の順位はトヨタ自動車(5,239件)、ソニー(3,630件)、現代自動車(3,080件)、ホンダ(2,844件)、フォード(2,069件)、LG(2,019件)の順で、韓国企業の現代自動車、LGがそれぞれ3位、6位に名をあげた。

多出願の順位でもソニー(2位3,630件)、LG(6位2,019件)、グーグル(8位1,727件)など、IT企業が頭角を現し、自動運転の技術開発に積極的に取り組んでいると分析される。

韓国企業では現代自動車が伝統的な完成車メーカーで、LGは情報通信技術などIT企業の強みを活用して特許権の確保に積極的に乗り出している。

現代自動車の場合、ここ5年間(2016年~2020年)の出願件数(2,104件)が前の5年(2011年~2015年、893件)に比べて2.4倍増加した一方で、LGはここ5年間(2016年~2020年)の出願件数(1,691件)が前の5年(2011年~2015年、252件)に比べて6.7倍増加し、より積極的に出願していることがわかる。

特許庁の自動運転審査チームの特許チーム長は、「未来の自動車産業は自動運転、接続、共有、電気自動車などを中心に変化」しているが、「特に自動運転車は自動車とIT技術が融合し、自動車メーカーがIT企業を買収したり、スタートアップと連合したりするなど、さまざまな企業の間で投資・提携を通じたパートナーシップの強化が予想される」と語った。また、「今後、完成車メーカーとIT企業間の特許紛争も増加すると予想されるため、特許訴訟に備えて自動運転技術の特許ポートフォリオを強化し、中核特許の保有企業との協力も強化する必要がある」とアドバイスした。

一方、特許庁は11月25日木曜日13時30分、韓国知識財産センターで産業界と学界に今回の特許分析の結果を共有し、関連政策および技術動向を議論する自動運転知的財産戦略フォーラムを開催する予定である。

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