知的財産ニュース 完全自律走行時代、人工知能がリードする

2021年8月11日
出所: 韓国特許庁

人工知能(AI)基盤の自律走行技術に関する特許出願が急増

「自律走行車の先行条件」 自律走行車が走るためには、(1)認知(2)判断(3)制御機能が必ず必要とされる。(1)認知機能とは、カメラ・レーダー・ライダーなどのセンサで周辺環境情報を把握することである。(2)判断機能とは、認知された情報に基づいて最も安全かつ効果的な走行オプションを選択することで、(3)制御機能とは、選択したオプションに応じて自動車を動かすことである。

運転者を必要としない完全自律走行が可能になるために必要な認知・判断・制御機能の自動化を支援する技術として、人工知能(AI)基盤技術が浮上していて、最近関連特許出願も増えている。

ドイツ連邦下院は5月、一般道路の特定固定区間でいわゆる「完全自律走行」段階である4段階(※)の自律走行を許可する道路交通関連法の改正案を議決した。同改正案は連邦上院を通過すれば、世界で初めて来年からドイツは、完全自律走行車が一般道路を走ることになる。

※自律走行の4段階では、運転者の監視なくコンピュータが自動車を制御することができ、運転者の介入を必要としない。非常時にも運転者の介入なくシステム自体が自動車を道端に止める。ドイツの交通部では、この技術はシャトルバスや貨物車両に適用できると見込んでいる。

ドイツでは現在、安全管理者が搭乗する自律走行テストだけが認められているが、同改正案が通過すれば、人間の安全管理者が搭乗しない無人走行車も可能になる。

ドイツの自動車研究センター(Center Automotive Research)の研究員は、「2030年の世界の自律走行自動車市場規模は600億ドルに達する」と予想した。

この状況を受け、毎年15件以内だった自律走行分野の人工知能技術に関する韓国国内の特許出願が、2016年31件、2020年155件へと、2016年を起点として年平均50%以上ずつ増加している。

最近の5年間(2016年~2020年)、全体の自律走行技術に関する出願は2,860件から4,082件と、年平均9.3%増加している。その中でも人工知能関連技術に関する出願比率が増えていて、2016年の前は1%以内だったのが2019年は5%を超えている。

このような傾向は、自律走行分野においても人工知能技術の活用可能性が高まったことを反映していると考えられる。

また、最近相次ぐ自律走行車事故で完全自律走行に対する懐疑論が盛んで、人工知能を通じて自律走行の安定性と信頼性を高めようとする技術への需要が増加しているためであると解釈できる。

細部技術別に見ると、自律走行の核心技術である認知・判断・制御技術よりは配車、交通制御のような自律走行支援インフラ技術に関する出願が285件(46%)で最も多かった。

スマート交通体系が拡散されていて、人工知能を簡単に組み合わせる分野であるため、最近の5年間(2016年~2020年)年平均66%という速いスピードで増加していると見える。

自律走行の核心技術に関しては、認知技術が171件(28%)、判断技術が113件(18%)、制御技術が48件(8%)出願されている。とりわけ、認知技術に関する出願が多数だが、これは人工知能技術が、自律走行に重要な車線・交通信号などの静的環境情報と車両・歩行者などの動的環境情報を正確に把握するための核心技術として急浮上しているためだと分析される。

出願人の国籍別では、韓国人による出願が90%以上で圧倒的に多く、外国人による出願は10%内であった。

韓国人による出願の中には大企業が23%(140件)、大学・研究所が22%(136件)、中堅企業が5%(31件)、中小企業が30%(186件)、個人が8%(49件)を占めた。

大企業、大学・研究所とともに、中小企業の出願が多く、最近は中小企業の出願が全体出願の半分ぐらいを占め、この分野における中小・ベンチャー企業の技術開発が活発に行われていることが分かる。

全体における自律走行技術の多出願企業は現代自動車、起亜自動車の順であったが、人工知能と関連してはLG電子(66件)、サムスン電子(27件)、現代自動車(18件)、MOBILE EYE(14件)、電子通信研究院(9件)、マンド(8件)などの順でIT企業が全体出願をリードし、完成車および部品企業がその後に続いた。

外国人の場合、MOBILE EYE(14件)、BAIDU(5件)、Waymo(5件)などグローバル走行リード企業が出願している。過去5年間(2011年~2015年)の外国人による出願は5件に過ぎなかったが、直近5年間(2016年~2020年)は58件に増加し、外国企業が徐々に韓国市場へと参入していることが分かる。

韓国特許庁の自律走行審査チームの審査官は、「人間が信頼できる完全自律走行を実現するためには認知分野だけでなく、判断と制御分野にも人工知能の活用は必須であるため、今後関連分野の特許出願も増加するものと見込まれる」とし、「急成長する自律走行車市場を先取りするためには、韓国企業が認知・判断・制御関連の自律走行の核心技術に人工知能技術を積極的に活用することが何よりも重要である」と発表した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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