知的財産ニュース 商標の先願主義の100%活用法

2021年8月2日
出所: 韓国特許庁

ペンス商標権紛争は、2019年11月、第三者が「ペンス」商標を出願したことから始まった。第三者がEBSより先に商標を出願したのである。韓国特許庁は第三者の「ペンス」商標について不正な目的をもって出願したものと判断し、商標登録を拒絶した。このように最初EBSは、商標出願が遅れたことで商標紛争に巻き込まれた。

「ボラムチューブ」商標においても、2019年1月、第三者が「インターネット放送業」などに出願したことを分かったチャンネル運営者((株)ボラムファミリー)が特許庁に異議申立書を提出してからやっと2020年11月、最終的に第三者の商標登録が拒絶された。

韓国特許庁は、商標権の未確保による被害にあわないように、積極的に商標の先願主義制度を利用して商標権を確保しておくことを呼びかけた。

韓国国内の商標法は、商標を最も先に出願して登録する人に商標権を付与する「先出願・登録主義」を採用している。

商標出願は商品開発または営業構想段階にしておいた方が、将来の紛争発生を予防し、安定した事業運営ができる。このように商標を出願することで商標権としての権利を確保しておくことが最も大事だと、強調している。

先出願・登録主義は、商標権がいつから発生してどういう商品に有効なのかを一般人も明確に分かるため、法的安定性の確保に資する。

ただ、商標を登録しないまま使用する場合は保護が難しく、悪意の出願人により商標を先取りされる可能性も発生する。

韓国商標法は、こうした欠点を補うために商標の不使用取消審判、先使用権制度、不正目的による商標出願の登録拒絶など、様々な制度を用意している。

日本、中国、欧州などの主要国も、法的安定性の面から商標の先出願・登録主義を採用している一方、米国などの一部の国だけは商標使用者に商標権を与える「使用主義」を採用している。

「商標法制フォーラム:商標の先出願・登録主義の必要性に対する共感」

学界・法界・企業などが参加した「商標法制フォーラム」(※)でも、現行の先出願・登録主義を維持する必要があることに共感した。

※合計4回開催(2021年1月~5月)、専門家(弁護士・弁理士・教授など15名)、多出願企業、中小企業中央会、小商工人連合会、フランチャイズ協会など

使用主義制度について参加企業は、管理・対応に関する費用が増加し、事業拡大が困難であることから、商標使用実績を提出する制度の導入に反対している。専門家も使用主義の導入は法的安定性を害し、現行商標法と衝突する可能性があるため、慎重になる必要があるとの見解を示した。

ただし、商標法制フォーラムの参加企業は、商標権濫用に該当する侵害禁止請求を制限するなど、商標制度を補完する必要はあるという意見を取りまとめた。

また、商標登録の重要性が分からない自営業者がまだ多いため、特許庁が積極的に周知していくことを要求した。

韓国特許庁の商標審査政策課長は、「特許庁では、商標出願人が必ず知っておくべき商標制度、商標登録の重要性などを周知していくために、地域の知識財産センター、小商工人市場振興公団、韓国国税庁の協力のもと、教育・広報を強化している」と述べた。

続いて、「商標審査段階から商標の先取りと疑われる悪意の出願を管理していて、使用しない商標権に対する無分別な訴訟など、権利の濫用を防止するための制度改善方策に関しても検討している」と付け加えた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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