知的財産ニュース 「チョコパイ」が誰でも使えるようになった理由は?

2021年7月8日
出所: 韓国特許庁

商品名と区別できない商標の場合、商標権が無効になる可能性も

  • チョコパイという言葉を聞くと丸いパンの生地にチョコレートをコーティングし、マシュマロを挟んだ形のお菓子を思い出す。元々チョコパイは、新しく発売されたお菓子の商標だったが、競合他社がチョコパイの名称を商品名として使用した時、適切に対処しなかったため慣用商標になってしまった。
  • 2021年5月、有名な製薬会社は、マスコミの方に協力依頼文を送った。依頼文を通じて、「最近、韓国国内の製薬会社が紛争している医薬品の名称は『ボトックス』ではなく『ボツリヌストキシン』である」と説明し、「今後それに関連する報道には、この名称を使用すること」を要請した。

韓国特許庁は5日に、商標の慣用商標化を防ぐため、商標権者に細心の注意を払うことを呼びかけていると発表した。

商標の慣用商標化は、特定人の商標をその業界の他社や消費者が自由に使用した結果、商標が有名になりすぎて、その商品自体を指す言葉になった現象を意味する。

そうなると商標は、もはや商品が誰のものかを表示することができなくなり、商標としての価値を失う。さらに、商標を登録したとしても商標権を主張することができなくなる可能性もある。

「商標の慣用商標化事例」

グルダック(激辛鶏)は、2000年に商標登録された「商標」であった。しかし、2004年にグルダックが大人気になり人々はグルダックを辛い鶏料理だと思い始めるようになったが、商標権者は積極的に対処しなかった。
その後、グルダックの商標権紛争が起きた際に裁判所は、グルダックはすでに料理の名前として認識するようになって慣用商標化されており、従って、グルダックを使用した他社が商標権を侵害したとは認められないと判決(2008年4月24日宣告2007ホ8047判決)した。
それ以外にもマジックブロック、ドライアイス、アップストア、ヨーヨーなどが商標の慣用商標化の事例でとして挙げられる。

このように、新しい類型の商品に使用される商標の場合、慣用商標になる可能性がより高い。消費者は、新しくて慣れない商品を商品名ではない商標で呼ぶ傾向があるからである。

商標の慣用商標化を防ぐためには、商標権者が商標と商品名を明確に区分できるよう、商標を積極的に管理することが重要である。

まず、他人が無断で商標を商品名のように使用する場合、直ちに商標権侵害の禁止を請求し、必要に応じて侵害による損害賠償を請求することで、他社による無分別な商標使用を制止しなければならない。

それと同時に、消費者やマスコミが商標を商品名のように使用する場合、持続的な広報により、該当の名称が商標であるという事実と別途の商品名を消費者やマスコミに知らせることも重要である。

特許庁の商標デザイン審査局長は、「新しい類型の商品が急増しており、商標が商品名と誤認される可能性も高まっている。そのため、それに対する商標権者の管理がこれまで以上に重要になっている」と説明し、「商品名と商標を明確に区別するように商標を積極的に管理することは、自らの商標を守る一番大事なことであるため、商標権者はそれに注意する必要がある」と述べた。

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