知的財産ニュース 損害賠償額の現実化に向けた商標法、デザイン保護法、不正競争防止法の改正法施行(6月23日)

2021年6月23日
出所: 韓国特許庁

  • 2020年12月10日に施行された特許法と同様に、商標・デザイン・不正競争行為・営業秘密など、すべての知的財産法制に改正した損害額の算定方式を適用
  • 従来導入されていた3倍賠償制度に加わり、強力な知的財産権の保護が可能

※商標・デザイン・不正競争行為・営業秘密の侵害に対する損害額の算定方式
(従来)権利者が生産できる限度内でのみ、損害賠償
(改正)権利者の生産可能限度+生産能力を超えた範囲の販売数量は、それに対する「合理的な実施料」を追加で賠償しなければならない

2021年6月23日から知的財産(商標、デザインなど)に対する正当な権利者の生産能力を超えた侵害行為に対してもロイヤリティを賠償しなければならないなど、現実に合わせて調整した損害賠償額の改正法が施行される。

韓国特許庁は、権利者の生産能力を超える侵害行為についても損害賠償を受けられる「商標法」、「デザイン保護法」、「不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律」の一部改正法律を6月23日(水曜)から施行すると述べた。

これまで、先発企業が革新的なアイデアや技術を開発しても、後発企業が正常な使用契約を締結するより、それを無断で奪取・模倣する状況が多く発生していた。

これは、基本的に権利者の生産能力を超えた範囲については、損害賠償を受けることができなかったためである。それにより、生産設備などが不足している零細企業は、他の企業が自社技術を奪取や模倣して莫大な収益を得られたとしても、どう対処すべきか分からなかった。

今後、改正法が施行されることにより、これまで補償を受けられる範囲に加えて、権利者の生産能力を超える侵害・奪取行為に対しても使用許諾契約を結ぶことで、もらえるべきである利益分(合理的実施料)まで賠償するようになる。

「改善された損害賠償額の算定方式」は、2020年12月に特許法に最初に導入され、今回の改正法施行により著作権を除いた大部分の知的財産において同様の損害賠償額の算定基準を適用できるようになる。

今回施行される損害賠償の算定制度に「3倍賠償制度」が組み合わさり、故意的な知的財産権の侵害行為から権利者をより強力に保護することができるようになる。そうなると、模倣するより正当な価格を払って使用する文化が定着され、中小・ベンチャー企業の技術革新を通じた成長がさらに加速すると期待できる。

このような知的財産保護の強化に向けた損害賠償制度の改善は、国際的な流れにも合致する。米国は故意的な侵害に対する3倍賠償制度が特許法などに定められており、今回改正された損害賠償額の算定方式(生産能力を超える範囲に対する合理的実施料の賦課)も判例として残っている。日本も、それと類似な損害賠償額の算定方式を2020年10月に特許法などに導入した。

特に、中国は2021年6月から故意的な侵害に対する5倍賠償制度を施行する一方、公務員が侵害者の工場などの侵害現場に直接行って侵害の証拠を調査・入手し、事件関係者を直接尋問することができるよう関連規定を整備した。

特許庁の産業財産保護協力局長は「改正法の施行により、知的財産を正当な価格で取引できる制度的な基盤は設けられた。ただし、損害賠償制度を改善しても、侵害を証明することができなければ制度導入の趣旨が薄まってしまう」とし、「グローバルスタンダードに準拠する証拠収集制度を一日も早く導入して技術奪取・模倣が蔓延していた業界の慣行を改善し、革新の成果がまともに保護できるように力を入れていきたい」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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