知的財産ニュース 今後、大学・公共研究機関の放棄特許を発明者が譲り受ける

2021年3月25日
出所: 韓国特許庁

特許成果の活用度を高めるための「発明振興法の改正案」を公布

大学や公共研究機関が研究開発の成果である職務発明の権利を放棄する場合、発明者に返すようにする、いわゆる「イ・ジョンホ法」の内容を盛り込んだ「発明振興法の改正案」が3月24日、国会本会議で可決された。

※職務発明とは、企業、大学、公共研究機関などで従業員など(職員、教授、研究者など)が担当している業務について発明(特許・実用新案・デザインを含む)したものをいう。

本法案の主要内容は、公共研究機関が放棄する特許を発明者が譲り受けるように根拠を設け、国家公務員の職務発明を独占的に使用できる契約(専用実施契約)の更新制限を緩和することを骨子としている。

現在、ソウル大学半導体共同研究所の所長であるイ・ジョンホ教授は、2002年に他の大学に在職した際に、大学が出願を放棄した職務発明(Bulk-FinFET技術)を米国に出願した。10年後イ・ジョンホ教授は、インテルから100億ウォンのロイヤリティをもらって、メディアからの注目を浴びた。

特許庁の集計によると、2019年の一年間に放棄された公共研究機関の特許権は約1万件に達している。しかし、現行の法令は、公共研究機関が職務発明に対する権利を放棄する場合、優れた特許がそのまま死蔵されるという問題があった。

今回の改正により、公共研究機関が特許権などを放棄しようとする場合には、それを発明者に通知しなければならない。公共研究機関と発明者間における通知や譲り受けなどの細部的な手続きも新設した。これにより、潜在力のある特許が維持できる環境を造成できると見込まれる。

また、現行法では国有特許について専用実施の契約を結んだとしても、同契約を1回のみ更新することができた。これにより、医薬・バイオ分野の技術のように事業化に長期間がかかるか、相当な開発コストを必要とする国有特許の技術移転は、民間企業が好んでいないという問題があった。

しかし、今回の改正により民間企業が専用実施中である国有特許の事業化に投資した費用を回収できなかった場合、その契約を延長することができる。これから、国有特許の民間企業への技術移転が弾力を受けると期待される。

高麗大学の産学協力団長は、「この改正案を通じて公共分野で研究と開発により作られた有望な特許(権)が死蔵されず、民間への移転・事業化が行われる礎が整えられたと評価している」と本法案の導入を歓迎した。

特許庁の産業財産政策局長は、「改正案が現場で誠実に履行されて定着するように、制度の広報および政策説明に向けて努力する一方、これからも特許の成果が活発に使用できる条件を造成するために制度を積極的に改善していくつもりである」と述べた。

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