知的財産ニュース デジタル時代、知的財産イノベーションにより産業競争力を備える

2021年2月23日
出所: 韓国特許庁

人工知能、データなどデジタル新技術を保護するシステムの構築および活用を強化する

  • データ、画像デザインなど、新しいタイプのデジタル知的財産を保護
  • オンライン配信など、デジタル環境における不当な知的財産権の侵害を防止
  • 特許・コンテンツ・研究・産業データの構築、個人・企業が保有する知的財産データの活用を最大化

デジタルニューディールにより創出される人工知能・データなどのデジタル新技術を保護し、国民に対する活用を拡大するための青写真が公開された。

韓国特許庁は、2月23日(火曜)に韓国の世宗市-ソウル市間のビデオ会議で行われた国務総理主宰の第28回国家知識財産委員会で、「人工知能・データに基づいたデジタル知的財産のイノベーション戦略」を発表した。

最近、新型コロナウイルスによってオンラインでの経済活動が増加し、デジタルトランスフォーメーションが加速化しているとともに、人工知能による創作物、データ、ホログラム商標、画像デザインなど、新たに保護すべきデジタル知的財産が台頭している。

そのため、人工知能・データのようなデジタル新技術から新しい知的財産を創出できる法制度の改善が急がれており、産業バリューチェーンの全般における特許・コンテンツ・研究・産業データなどの知的財産データを戦略的に活用しなければならない状況である。

そこで政府は、「人工知能・データに基づく知的財産のイノベーションでデジタル大国を実現する」というビジョンを掲げ、科学技術情報通信部、文化体育観光部などの関係部処と連携して4大戦略および8つの細部課題を設けた。

今回のイノベーション戦略の主要内容は次のとおりである。

1.デジタルトランスフォーメーションに備えるために、知的財産における法制度のイノベーションを起こす。

人工知能による創作物の権利を保護する方策について関係部処とともに模索し、国際的な議論の方向性に合わせて制度化の方向を決める。

※(2021年)部処レベルの議論を通じた争点の洗い出しおよび基本原則の確立→(2022年)WIPOの議論を主導、立法検討

また、制度化の方向が決まったデータ、ホログラム商標、画像デザインなど、残りの課題は速やかに法制の整備を推進する。

具体的には、不正競争防止法にデータの無断利用・取得防止の規定を設けるとともに、ホログラム‧動作商標など、デジタルにおける新しいタイプの商標と画像デザインに対する保護を拡大する。

それに加えて、デジタル環境により出現した新しい技術であるオンライン配信、仮想現実などに対する侵害防止制度を設け、オンラインでの模倣品取引による被害防止対策を推進する。

※オンライン模倣品の通報件数(特許庁):(2019年)6,661件→(2020年)1万6,693件

政府は、そのような対策のために不正競争防止法、商標法など6大知的財産法、10件の立法課題を推進する計画である。

6大知的財産法における10件の立法課題
知的財産法 立法課題 日程
不正競争防止法 1.データの無断利用・取得などの侵害行為を防止する規定を新設
2.仮想現実(AR・VR)で商標価値を毀損し、誤認・混同を誘発する行為を制裁
~2022年
著作権法 3.データマイニングに利用される著作物に対する著作権侵害を免責する規定を新設
4.違法著作物のURLを提供するウェブサイトを運営するなどの行為を「著作権侵害行為」とみなす規定
~2021年
特許法 5.デジタル融合・複合分野の特許審判に「専門審理委員制度」を導入 ~2021年
商標法 6.デジタル商品のオンライン配信・提供も「商標の使用」に含める
7.オンラインサービスの提供者に商標権侵害防止の義務を賦課
~2022年
デザイン保護法 8.「画像デザイン」を新たな保護対象に含める
9.電気通信回線を通じた提供など、デザインの実施行為を拡大
~2021年
発明振興法 10.知的財産データの活用・開放を拡大するために支援根拠を確立 ~2021年

2.個人・企業が特許、研究、産業などの知的財産データを便利に活用できるインフラを構築する。

戦略立案、製品生産、流通・販売などの産業バリューチェーンの全般に特許ビッグデータの分析結果を活用して産業競争力を強化する。

特に、デジタル・グリーンニューディールが急速に成果を上げることができるよう、特許ビッグデータ分析を優先的に支援し、特許分析システムに人工知能を適用して、リアルタイムで活用できるように推進する。

人工知能に基づいたリアルタイムの特許分析システム 人工知能に基づいたリアルタイムの特許分析システム

また、特許データだけでなく、国家研究データプラットフォームの高度化、マイ(My)製造データプラットフォームの構築など、研究・産業データの共有・活用も促進し、国家イノベーションシステムを強化する。

3.知的財産に基づいたデジタル産業競争力を強化する。

有望な中小・ベンチャー企業が人工知能などのデジタル産業分野における中核・源泉特許を創出できるよう、R&Dの段階の特許戦略・技術支援だけでなく、R&D以降の知的財産権の確保を支援する。

また、人工知能を学習させるコーパスなど、さまざまなコンテンツを構築し、人気映画・ゲーム・ウェブトゥーンなどを背景にした空間で実現される超臨場感コンテンツの開発とデジタル観光コンテンツの制作を支援する。

それに加えて、知的財産金融に参加する銀行を地方・インターネットの銀行に拡大(※)し、人工知能を活用した特許評価システムの開発を推進するなど、デジタル知的財産金融を活性化する。

※(2020年)国家政策(2ヵ所)・市中銀行(5ヵ所)・地方銀行(1ヵ所)→(2021年)地方銀行(4ヵ所)およびインターネット銀行の追加を推進

それとともに、地域別のBIG3特化大学を知的財産重点大学(※)に指定し、BIG3専門人材の知的財産能力も強化する。

※(2021年)3大学→(2023年)6大学→(2025年)10大学(累積、教育部の地域プラットフォーム事業と連携)

4.新たな知的財産における通商秩序をリードする。

データネットワークを通じた営業秘密奪取の防止やデジタル著作権など、デジタル時代の新しい国際的ルール作りを主導し、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)など新たな通商秩序と調和するように制度を改善する。

また、ウズベキスタン、ベトナムなどに知的財産制度のコンサルティングおよび電子行政システムの構築を支援(※)し、クウェート・バーレーンなどの中東諸国を対象に情報化・審査代行パッケージの輸出拡大を推進する。

※(2020年)6ヵ国にシステム構築・18ヵ国にコンサルティング支援を完了⟶(2021年)ウズベキスタン、ベトナムにシステム構築を推進

さらに、知的財産権紛争対応センターの運営を強化し、インターポール・警察庁と模倣品・違法コピーに対する合同取り締まりを実施するなど、韓国企業における海外での紛争解決も積極的に支援する。

※海外知財権確保およびデザイン開発の費用などを支援(2021年20社)
※※著作権侵害に対応する法律コンサルティング、モニタリング費用などを新規支援(2021年50社)

特許庁長は、「知的財産制度が発達している英国と米国が過去の産業革命を主導して、経済発展の恩恵を受けたように、知的財産のイノベーションを通じて、人工知能、データなどにおけるデジタル産業競争力を備えることで、韓国の経済がデジタル時代をリードできるように取り組んでいきたい」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
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