知的財産ニュース 韓国の知的財産(IP)金融、2兆ウォンを突破

2021年2月4日
出所: 韓国特許庁

イノベーションを推進する中小・ベンチャー企業における資金調達の通路に位置付けられ

韓国における知的財産(IP)金融の全体規模が2020年に史上初めて2兆ウォン台を突破したことが分かった。

※IP金融:知的財産権を用いて資金を調達する活動であり、IPの価値評価を経て金融機関がIP担保融資・IP保証融資・IP投資の形で企業に資金を提供すること。

韓国特許庁によると、知的財産金融の規模は2019年に1兆ウォンを達成し、2020年にも前年に比べて52.8%急増して2兆640億ウォンを達成した。

※IP金融規模:(2019年)1兆3,504億ウォン→(2020年)2兆640億ウォン(前年比52.8%増)

金融の類型別で企業に供給された金額を見ると、知的財産権を担保にして実行するIP担保融資額が1兆930億ウォン、知的財産権に基づいて保証書を発行するIP保証額が7,089億ウォン、優秀な知識財産権を保有している企業または知的財産権の直接投資するIP投資額が2,621億ウォンであった。

知的財産の金融を拡大することで、物的担保が不足して信用格付けが低い特許基盤のイノベーション企業に資金を集中支援し、新型コロナウイルスで苦労している韓国の中小・ベンチャー企業が経営難を克服できるように貢献したことも明らかになった。

2020年にIP担保融資を受けた企業1,608社を調査した結果、信用格付けが高くない企業(BB等級以下)の融資が74.4%(1,197社)を占めており、貸出金利も2%前後(※)で平均3〜4%台の中小企業信用融資の貸出金利より低いため、企業の負担を軽減した。

※2020年IP担保融資の金利優遇効果に対するアンケート調査の結果(626社回答、2020年12月)

IP担保融資額は、前年に比べて2.5倍増加し、1兆ウォンを突破した。これは民間銀行が積極的に参加した結果であり、民間銀行の融資が全体融資額の68.5%(7,483億ウォン)を占めている。

2020年には、IBK企業銀行、ウリィ銀行、新韓銀行が優秀な特許を保有している企業を対象にIP担保融資の新規供給を大幅に拡大した。それにより、資金不足で特許技術の商用化を諦めようとしていた中小・ベンチャー企業が、IP担保融資を活用して危機を乗り越える事例もあった。

中小企業のG社は、新型コロナウイルスのワクチンを開発するために臨床試験の資金が必要だったが、融資限度額を超えていて苦労していた状況の中で、ゲノム編集技術の特許7件を担保にし、運営資金20億ウォンの融資を受けてワクチンの開発を進めている。

IP保証書発行額は、前年に比べて小幅に減少したが、今後保証機関の政策資金によりIP保証書の発行が続く予定であり、2021年には例年水準に回復すると予想される。

※IP保証書発行額:(2019年)7,240億ウォン→(2020年)7,089億ウォン(前年比2.1%減)

一方、オンライン評価システムを活用した保証(※)は、2,500億ウォンを達成し、前年(1,730億ウォン)に比べて44.5%増加したが、これは速やかな評価で資金を適時に確保しようとする需要が増えたためであると解釈される。

※信用保証基金・ソウル信用保証財団:SMART3評価システム(信用格付け評価)を活用したIPスマート保証を拡大しており、SMART3評価はリアルタイムで信用格付けが算出できる。
※技術保証基金:KPASⅡ評価システム(価額評価、50〜100万ウォン)を活用したIPファースト保証を運営しており、KPASⅡの評価には1週間前後の時間がかかる。

オンライン広告プラットフォームを開発するスタートアップのG社は、最近、売り上げがなくて金融機関から運営資金を確保するのが困難であったが、技術保証基金のオンライン評価により発行されたIP保証書で銀行融資を受け、円滑に会社を運営することができるようになった。

IP投資額は2,621億ウォンで、知的財産金融投資の活性化政策(2020年7月に発表)を推進、民間投資機関のIP投資に対する意識向上などにより、前年比35.6%(688億ウォン)増を記録した。

また、有望な特許技術に投資する、IP直接投資額も前年実績(113億ウォン)に比べて4倍増加した462億ウォンと集計された。

中小企業がIP投資を誘致して素材・製品の国産化に成功し、グローバル企業に成長した事例もある。

LED・半導体の材料を生産する中小企業のL社は、素材に関する特許の価値に基づいて、特許アカウントの子ファンドから、2013年16億ウォンの投資を受け、素材の国産化に成功し、2020年の時点で太陽電池用の素材(TMA)で世界1位の企業に成長した。

特許庁の産業財産政策局長は、「IP金融が成長期に入っているため、金融市場内で自生的に成長していくことが重要である」と述べ、「特許庁は、金融市場に高品質のIP価値評価サービスを提供するなど、イノベーション技術を持つ企業に対する金融市場の資金支援が活性化するよう、全力を尽くしていきたい」とコメントした。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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