知的財産ニュース ヘラルド経済新聞(2020年11月25日付き1面・2面)記事に関する説明資料
2020年11月26日
出所: 韓国特許庁
「K-ディスカバリーが特許訴訟の殺到を招く」、「日本の輸出規制を忘れたのか、素材・部品・設備業界『訴訟が10倍以上増える』」に関して、一部において事実と異なる内容がありお知らせします(ヘラルド経済新聞、2020年11月25日付き1面・2面)。
[報道内容]
1.韓国型ディスカバリーは、裁判に入る前に特許訴訟の当事者が証拠と情報を相互公開して争点を明確にするための制度2.11月26日、産業通商資源中小ベンチャー企業委員会にイ・スジン国会議員の発議案が上程されれば、9月に上程されたキム・ジョンホ国会議員の案とともに法制化が加速すると予想
3.訴訟が進められる間、顧客社との取引や研究・開発(R&D)などの事業活動が全面中止、日本による輸出規制以降、政府が支援する非公開の研究開発課題が露出される可能性があり、R&D課題の推進保留を避けられない
4.日本など外国企業の素材・部品・設備企業の特許出願件数は、平均5,653件で韓国企業(平均548件)より10.3倍多い
5.2019年の輸出規制以降、2020年に素材・部品・設備において日本が韓国を相手に提起した特許訴訟は6件で、2019年の4件より増加
6.大企業と中小企業間における技術奪取に関する法令(下請法、相生協力法、不正競争防止法)など、活用できる制度があるが、あえてK-ディスカバリーを導入する必要があるかについて指摘
[事実関係および特許庁の立場]
1.韓国型ディスカバリーは、裁判に入る前に特許訴訟の当事者が証拠と情報を相互公開して争点を明確にするための制度・裁判に入る前に訴訟当事者が証拠と情報を相互公開するのは、米国式のディスカバリー制度であり、韓国型証拠収集制度とは異なる。
・韓国型証拠収集制度は、ドイツ式の「専門家証拠調査」導入と既存の資料提出命令を強化する方向で立法を議論している。
2.11月26日、産業通商資源中小ベンチャー企業委員会にイ・スジン国会議員の発議案が上程されれば、9月に上程されたキム・ジョンホ国会議員の案とともに法制化が加速すると予想
・産業通商資源中小ベンチャー企業委員会への法案上程は、立法議論を開始するための手続きであり、今後産業通商資源中小ベンチャー企業委員会と法制司法委員会の審査を経なければならないため、直ちに法制化するものではない。
※キム・ジョンホ議員案とイ・スジン議員案の併合審査は、まだ決定されていない。
・同法案について業界の懸念があるため、2021年第1四半期まで産業界、経済団体などと懇談会、公聴会(※)などによる充分なコミュニケーションを図り、修正・補完していく計画である。
※イ・スジン議員、特許庁主管で開催予定(12月24日9時30分、国会議員会館第1セミナー室)
3.訴訟が進められる間、顧客社との取引や研究・開発(R&D)などの事業活動が全面中止、日本による輸出規制以降、政府が支援する非公開の研究開発課題が露出される可能性があり、R&D課題の推進保留を避けられない
・特許侵害訴訟は、販売または商用化された製品などが特許を侵害した場合、その製品や製品を生産する方法に対して提起するものであり、侵害訴訟の対象となる製品に関する活動が影響を受ける可能性があるが、製品開発のための研究開発活動や政府が支援する非公開の研究開発課題は、特許侵害訴訟とは無関係である。
4.日本など外国企業の素材・部品・設備企業の特許出願件数は、平均5,653件で韓国企業(平均548件)より10.3倍多い
・外国企業の平均出願件数5,600件は、半導体設備分野のグローバルTop3企業が出願した件数であり、これらの3社の世界市場シェアは50.9%(※)。それと比較する韓国企業の出願件数(平均548件)は、半導体設備分野の中小・中堅企業である6社で、SEMES(大企業)などの韓国主要企業の出願件数は、除外された数値
※AMAT(Applied Materials、米国)、LAM Research(米国)、TEL(Tokyo Electron、日本)で、売上高基準でグローバル半導体設備市場の50.9%占める(2017年基準、出典Gartner)
・グローバルTop 3企業の出願件数と、韓国半導体設備企業の一部の出願件数を比較して韓国国内の半導体分野での特許競争力を判断することは難しい。
5.2019年の輸出規制以降、2020年に素材・部品・設備において日本が韓国を相手に提起した特許訴訟は6件で、2019年の4件より増加
・素材・部品・設備分野で日本側が韓国国内外で韓国企業向けに提起した特許侵害訴訟は、2017年2件→2018年2件→2019年1件→2020年3件で大きな変化はない。2020年に提起された侵害訴訟のうち2件は、同じ当事者が同一の特許で米国とドイツで紛争している一つの事件。
「主要国での日韓侵害訴訟の現状」
6.大企業と中小企業間における技術奪取に関する法令(下請法、相生協力法、不正競争防止法)など、活用できる制度があるが、あえてK-ディスカバリーを導入する必要があるかについて指摘
・現在、韓国型証拠収集制度の導入を推進している特許法は、特許として登録された権利を保護する制度であり、相生協力法、不正競争防止法などは秘密などで管理された経済的価値を持つ技術情報、営業秘密などを保護するためのものであり、保護対象が異なる。
7.特許庁は今後、財界、業種別の団体などと幅広く疎通し、予想できる問題点を最大限補完して中小企業への支援策を設ける計画である。
・半導体‧ディスプレイ産業協会などを中心に、財界、業種別団体、法曹界、素材・部品・設備企業などとの疎通を進めており、その過程で提示された意見を検討して予想できる問題点を最大限補完する計画である。
‐財界:大韓商工会議所、全国経済人連合会、韓国経営者総協会、中小企業中央会、韓国中堅企業連合会、イノビズ協会、韓国ベンチャー企業協会など
‐業種別団体:半導体、ディスプレイ、情報通信産業、製薬・バイオなど
‐法曹界:大韓弁護士協会、韓国知的財産弁護士協会、大韓弁理士会など
・韓国企業が予期せぬ被害を受けないように、(1)「知財権紛争対応センター」を新設(2020年11月)、(2)紛争モニタリングの強化および紛争対応戦略の支援拡大(素材・部品・設備企業を優先的に支援)、(3)強力な特許創出の支援(知財権と連携した特許開発戦略(IP R&D)の活性化、特許確保支援)および中小企業向けの特許教育の拡大など、総合的な支援策を関係部処と連携して確立していく計画である。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
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