知的財産ニュース 10ナノの壁、極端紫外線(EUV)で乗り越える

2020年11月12日
出所: 韓国特許庁

半導体における極端紫外線リソグラフィー技術を持つ韓国企業・学会の活躍

・アルファ碁(AlphaGo)のようにイノベーションに満ちた人工知能(AI)の誕生は、より速く、より集積された半導体の高性能・低消費電力技術のおかげである。フォトリソグラフィー(Photo-Lithography)は、このような高性能・低消費電力技術の半導体を製造するために、光を利用して、基板に微細な回路パターンを描く中核技術である。

・光の波長が短いほど半導体の回路をより繊細に描くことができるが(注1)、これは0.7mmのシャープペンより0.3㎜のシャープペンが繊細な文字が書けることと同じことである。例えば、半導体回路の線幅を半分に減らすと単位素子の面積は4分の1になり、同じ面積で4倍多い素子を製造することができて電気配線の長さも短くなるため、より低い消費電力(注2)の高性能及・低消費電力の半導体を生産することができる。

・既存のフッ化アルゴン(ArF)レーザー光(注3)を利用する場合、液浸およびマルチパターニング技術を適用しても線幅10ナノ(1nmは10億分の1m)以下のパターンの壁を乗り越えられなかった。

・EUV(Extreme Ultra-Violet)(注4)リソグラフィー技術は、フッ化アルゴンレーザーより10分の1 未満の短い波長を有する極端紫外線を利用して、半導体回路のパターンを描くことで、10ナノ以下の超微細回路パターンを描画するために不可欠なものである。

・EUVリソグラフィー技術は、多層膜ミラー、多層膜マスク、ペリクル、光源、レジストなど、高度な技術が集約されており、ここ10年間、サムスン電子をはじめとするグローバル企業が技術を先取りするために研究に励み、最近7ナノを越えて、5ナノのスマートフォン用アプリケーションプロセッサ(AP)の量産(注5)に初めて適用された。

韓国特許庁のここ10年間(2011年〜2020年)のEUVリソグラフィー技術の特許出願分析(注6)によると、2014年88件をピークに、2018年55件、2019年50件であり、特に2019年からは韓国人の出願が外国人の出願件数を追い越して韓国国内の技術が成長期に入っていると分析している。

企業別にみると、カールツァイス(ドイツ)18%、サムスン電子(韓国)15%、ASML(オランダ)11%、S&S Tech(韓国)8%、TSMC(台湾)6%、SKハイニックス(韓国)1%で6大グローバル企業が全体出願の59%を占めている。

詳細技術別では、工程技術(注7)32%、露光装置技術(注8)31%、マスク(注9)28%、その他9%に分布している。工程技術分野では、サムスン電子が39%、TSMCが15%で、両社の出願が54%を占めている。マスク分野では、S&S Tech 28%、HOYA(日本)15%、漢陽大学(韓国)10%、旭硝子(日本)10%、サムスン電子9%の順である。

特許庁の半導体審査課特許チーム長は、「EUVリソグラフィー工程およびマスク分野において、韓国企業と学界が活躍しており、第四次産業革命とともに高性能・低消費電力の半導体を製造するためのEUVリソグラフィー技術がますます重要になると予測している」とし、「露光装置分野においても技術自立に向けた研究開発とそれを保護できる強力な知的財産権の確保が必要である」と述べた。

注1 露光装置の解像度(R)は、λ(波長)/NA(開口数)に比例。
注2 電気抵抗(R)は、配線の長さ(L)に比例、消費電力(P)は、抵抗(R)に比例、従って消費電力(P)は、配線の長さ(L)に比例。
注3 フッ化アルゴン(ArF)レーザーの波長は193ナノメートル(nm)。
注4 極端紫外線(EUV)は13.5ナノメートル(nm)。
注5 TSMCがアップルの受注生産APである「A14バイオニック」の量産に初めて適用(2020年10月)。
注6 調査対象は、2011年1月1日〜2020年9月30日までの出願。組成物、化合物およびフォトレジストなどのケミカル(chemical)が主要特徴である出願は分析から除外。
注7 露光装置を用いた半導体素子の製造方法であり、パターン形成方法、露光工程レシピなどを含む。
注8 EUV光源およびレーザー生成プラズマ(LPP)、コレクタ、反射光学系、ステージおよびそれに関する制御技術などを含む。
注9 マスク分野は、反射型マスク、ブランクス、ペリクルとその製造技術を含む。

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