知的財産ニュース 商標・デザイン侵害に対する3倍賠償の導入など、知的財産保護法律の公布‧施行

2020年10月20日
出所: 韓国特許庁

商標法・デザイン保護法・特許法(2020年10月20日施行)

◆商標・デザイン権侵害に対する3倍賠償制度の施行(2020年10月20日)
<2020年10月20日以降、違反した行為から適用>
- 商標・デザイン侵害:故意的侵害の際、損害額の最大3倍まで賠償
- 商標・デザイン:使用料(実施料)の算定基準を改正(「通常的」→「合理的」)
- 商標:法定損害賠償額の引き上げ(5,000万ウォン→1億ウォン、故意の際3億ウォン)

◆特許侵害犯罪が親告罪から反意思不罰罪(※)(被害者の告訴不要)に転換(2020年10月20)
<2020年10月20日以降の犯罪から適用>
※特許侵害の刑事告訴期間(6ヵ月)の制限なしに、捜査機関が職権捜査して処罰可能

韓国特許庁は、商標・デザイン侵害に対し「3倍賠償」を導入する商標法、デザイン保護法などの知的財産保護法律が10月20日(火曜)に公布・施行されたと発表した。

主要内容として、商標法・デザイン保護法の一部改正法律は、故意に商標権やデザイン権を侵害した場合、損害として認められた金額の最大3倍まで賠償させる懲罰賠償制度の導入を骨子とする。

2018年に特許法と不正競争防止法に導入された特許・営業秘密の侵害に対する懲罰的損害賠償制度を商標とデザイン分野まで拡大するものである。

また、商標権とデザイン権が侵害される際に、ロイヤリティによる損害額算定基準を「通常的に受けることができる金額」から、「合理的に受けることができる金額」に改正された。従来の判例では、「通常的に受けることができる金額」を取引業界で一般的に認めるロイヤリティで判断するため、実際の損害額を算定するには不十分であるという指摘があった。なお、日本でも同様の理由で、「通常」という単語を削除した後、ロイヤリティの認定料率が上昇(※)した。

※1998年、日本の特許法改正によるロイヤルティ率:(改正前)3~4.2%→(改正後)7〜10%

さらに、2011年商標法に導入された法定損害賠償制度の最高限度を5,000万ウォンから1億ウォン(故意的に侵害した場合には3億ウォン)に引き上げた。これは、制度を導入した以降、韓国国内での商品取引市場の拡大、物価上昇の要因などを考慮し、3倍賠償制度とともに商標権保護の実効性を高めるためのものである。

[法定損害賠償制度]
‣(概念)一般の損害賠償請求は、商標権者が侵害と損害額を証明しなければならないが、法定損害賠償は、侵害さえ立証できれば、法院が法定額以内で損害額を算定することができる制度であり、商標権者の立証責任を緩和する。
‣(必要性)懲罰賠償制度の導入とともに、損害賠償額の上限も一緒に引き上げ、商標権侵害に対する損害賠償額の適正化を図る。

被害者の告訴がなくても、特許権の侵害行為を処罰することができる特許法の一部改正法律案も公布された。特許権者の告訴があってこそ、侵害捜査が可能な「親告罪」を特許権者の告訴がなくても職権捜査が可能な「反意思不罰罪」に改正し、特許権の保護を一層強化した。

今後、特許権者は、告訴期間(6ヵ月)に限らず、刑事告訴をすることができるようになった。上記の改正事項は、2020年10月20日に公布と同時に施行される。

※反意思不罰罪:権利者が侵害者の処罰を求めない場合、起訴不可

アイデア奪取行為による損害として認められた金額の最大3倍まで賠償させる懲罰賠償制度の導入、不正競争行為における是正勧告事実の公表などを骨子とする不正競争防止法の一部改正法律も公布された。10月20日に公布された不正競争防止法の一部改正事項は、2021年4月21日に施行される。

特許庁の産業財産保護協力局長は「今回の改正法施行により、懲罰賠償制度が商標、デザイン侵害まで適用されることになり、韓国の知的財産全般における保護水準がさらに上がることになった」とし、「また、侵害証拠の確保に限界がある特許訴訟制度を改善するために、韓国型ディスカバリー制度(証拠収集手続)の導入を進めており、今後、財界、業種別協会・団体、法曹界などからの意見を幅広く取り入れて立法を推進する計画である」と述べた。

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