知的財産ニュース 新型コロナウイルスの状況でも2020年上半期の知財権出願は増加

2020年8月10日
出所: 韓国特許庁

非対面産業分野における出願が著しく増加

世界中へと新型コロナウイルス感染症が拡散し、韓国をはじめとする世界の主要先進国のマイナス成長が予測されるなか、特許・商標などの知的財産権の出願は増加傾向を見せており、景気回復に対する前向きな兆しを示している。

国際通貨基金(IMF)によると、新型コロナウイルスによる各国の封鎖措置、国際貿易量の減少などにより、2020年の世界経済成長率はマイナス4.9%を記録すると見込まれている。特に、米国はマイナス8.0%、ユーロ圏はマイナス10.2%、日本はマイナス5.8%など、主要先進国のマイナス成長がさらに深刻化すると展望している。

韓国の経済成長率は、マイナス2.1%と予想されており、他の先進国より高い数値である。しかし、これは1998年の通貨危機(マイナス5.1%)以降22年ぶりの最低値という点では、韓国も景気低迷を防御するための多角的な対策を立てなければならない。

このようなネガティブな展望にも関わらず、2020年の知的財産権(※)出願件数は、むしろ2019年より増加し、景気回復および成長に対する可能性を示している。

※特許、実用新案、商標、デザイン(著作権を除く)

2020年上半期の知的財産権の出願件数は計253,027件で、前年同期比4.5%が増加し、特許権と商標権がそれぞれ2.1%、9.4%増加、全体の知的財産権出願件数の増加に大きく影響を与えた。

※上半期の増加率:(特許)9万9,336件、↑2.1%、(実用新案)2,306件、↓16.5%、(商標)12万833件、↑9.4%、(デザイン)3万522件、↓3.3%

新型コロナウイルスの拡散が本格化した3月以降、知的財産権の出願活動がしばらく低下したが、6月に前月比17.3%、前年同月比20.7%で出願が急増し、上半期を通して出願件数の増加傾向を回復した。

上半期の知財権出願現況と特許出願現況

経済活動の非常時にも関わらず、知的財産権の出願件数が増えたのは、非対面技術・サービスを通じた企業の新型コロナウイルスを克服するための努力が影響を与えたものであると分析される。

2020年1月から6月までのオンラインショッピングおよび物流配送など非対面関連分野では、特許出願が前年の上半期に比べて27.2%が増加した。月別では前年同月の基準で1月に出願件数が15.8%減少した後、残った期間で二桁の増加率を記録した。

商標およびデザイン権でも非対面分野での出願実績が目立つ。電子商取引と通信・放送業など非対面分野での商標権出願は、前年上半期に比べて12.5%、件数では4,209件増加した。該当期間の商標権全体の増加件数が10,356件であることを考えると、非対面分野が出願増加に40%以上貢献していることが分かる。

デザイン権の場合、2020年上半期の全体出願件数は、前年同期比3.3%下落した。しかし、マスク・診断ブースのような衛生・医療部門では出願が238.3%増加し、非対面分野全体では42.6%の増加率を記録した。

企業の知的財産活動は、新産業創出および競争優位性を確保するための意志を示す。そして最近の知的財産権活動は非対面産業を中心に行われているという点で、企業などでは、すでにポストコロナ時代に対する対応が本格的に行われていることを確認することができる。

また、知的財産権の出願件数の増加は、単純な指標の意味だけではなく、近い将来の景気回復の可能性をうかがえる。

世界的に特許出願件数とGDPの相関関係が立証されており、韓国でも1970年代以降の国内の特許出願件数とGDP規模の間で明確な相関関係が示されている。

[韓国のGDPと特許出願件の相関関係] 韓国のGDPと特許出願件の相関関係

そこで韓国特許庁長は、「ワットの蒸気機関特許とエジソンの電気特許がそれぞれ第1・2次産業革命時代を触発させ、1960年代以降は米国のコンピュータ関連特許の急増が知識情報中心の第3次産業革命をけん引した。このように、知的財産権は産業成長が変化を迎えるときに市場の秩序を再編することに大きな役割を果たしてきた」とし、「新型コロナウイルスの拡散のため、新たな変曲点を迎えている今、企業の積極的な知的財産権を創出しようとする努力が危機克服と経済成長に直結できるよう、特許庁も全ての能力と手段を活用していきたい」と述べた。

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