知的財産ニュース ドラッグ・リポジショニングの候補薬物に対する特許情報を収録した特許情報集を発刊

2020年6月26日
出所: 韓国特許庁

ドラッグ・リポジショニングに活用する新型コロナウイルス治療薬開発に向けた、抗ウイルス薬の特許情報集発刊

韓国特許庁は、新型コロナウイルス治療薬の開発を支援するために、ドラッグ・リポジショニング(既存薬の再開発)に対する有力な候補群である抗ウイルス薬の特許情報、許可事項、臨床情報などを盛り込んだ「抗ウイルス薬の特許情報集」を発刊した。

新型コロナウイルスを完璧に制御するためには、治療薬とワクチンの開発が必須であり、特に治療薬の場合、新型コロナウイルスの世界的な拡散と緊急性を考えると、通常の新薬開発プロセスに比べて開発期間を大幅に短縮できるドラッグ・リポジショニング戦略(※)が適切である。

※既存の薬物を他の疾患に対する治療薬として適応症を広げることで、新薬を創出する戦略

米国では、5月2日付けで緊急使用が承認され、韓国国内では特例輸入が決定されたレムデシビルも、エボラ治療薬として開発する過程で中断されたが、新型コロナウイルスの治療薬として適応症を拡大したドラッグ・リポジショニングの成果物である。

韓国でもドラッグ・リポジショニングによる新型コロナウイルス治療薬の開発が活発に行われており、韓国パスツール研究所のナファモスタット(抗凝固薬/抗炎症薬)、富光藥品のレボビル(Levovir)(B型肝炎ウイルス治療薬)、大熊製薬のニクロサミド(駆虫薬)などがこれに属する。

新型コロナウイルスは、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)と同様に、コロナウイルスに属するため薬物の作用ターゲットの類似性を考慮すると、新型コロナウイルス治療薬の開発に向けたドラッグ・リポジショニングの対象として最も有力な薬効群は抗ウイルス薬である。

今回発刊された抗ウイルス薬の特許情報集は、1987年以降、韓国食薬処または米国FDAの承認を受けて市販された抗ウイルス薬と、FDAまたは海外で臨床第2相または第3相の試験が承認された抗ウイルス薬など計130個の抗ウイルス薬に対する韓国国内の特許情報(※)、許可事項(※※)、臨床情報などを収録した。

※登録番号、存続期間の満了予定日、主要請求項、代表化合物、特許ファミリーの情報など ※※製品名、許可日、許可事項など

収録された抗ウイルス薬の中で、韓国での物質特許の存続期間が満了されていない薬物は、計59種、存続期間が満了された薬物は計62種、審査中の薬物は計6種であり、新型コロナウイルス治療薬として、外国で臨床試験をしているが、韓国国内には出願されていない抗ウイルス薬は、計3種である。

抗ウイルス薬ではないが、韓国国内で新型コロナウイルス治療薬として臨床試験をしているか、または薬効が確認された薬物の9種に対する情報も追加で収録した。

ドラッグ・リポジショニング戦略を活用する場合、治療薬の開発期間やコストを削減することができるが、既存の物質特許の存続期間が満了していない場合には、新しい医薬用途として特許を受けても、物質特許権者の許諾を得ないと治療薬の製造・販売することができない。

特許庁の化学生命技術審査局長は、「ドラッグ・リポジショニングを通じて新薬を開発する場合、開発の初期段階から物質特許に関する情報を把握し、予め特許紛争に備える必要がある」と強調し、「この情報集が新型コロナウイルス治療薬の開発方向の確立および治療薬の開発後に発生しうる特許紛争対応に有効に活用されることを期待している」と述べた。

一方、この資料は、関連協会および機関などに郵便または電子メールで配布する予定であり、特許庁のウェブサイト「新型コロナウイルスの特許情報ナビゲーション」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますからダウンロードすることができる。

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