知的財産ニュース 水素経済の尖兵、水素ガスタービンの特許出願が伸びる

2020年6月22日
出所: 韓国特許庁

直近5年間(2015〜2019)、水素ガスタービン関連の特許出願が増加

LNG(天然液化ガス)の代わりに水素燃焼ガスタービンを駆動して電力を生産する水素ガスタービン(※)の特許出願が増加している。

※ 水素はLNGに比べ火炎伝播速度が6倍、発熱量が3倍であるだけでなく、燃焼後には副産物としてきれいな水のみ残るため、CO2ガスの排出が全くない環境にやさしいエネルギー源として期待されている。

韓国特許庁によると、発電用の水素ガスタービンに関する特許は、ここ9年間(2011〜2019年)計36件が出願され、毎年約2件に過ぎなかったが、2015年以降は6〜7件に増加した。

※水素は、既存の石炭、LNGなどの化石燃料から抽出する方式に加えて、余剰電力を利用して水を電気分解するなど、さまざまな方法で経済的な生産が可能

2018年基準でLNG発電は韓国の全体発電量の26.8%で、石炭火力発電(41.8%)に続き2番目に高い割合を占めている。最近では、PM2.5の低減のために、石炭火力発電をLNG発電で徐々に代替しており、今後LNGガス発電の割合はさらに拡大すると予想している。

このような状況の中で、LNGガスタービンの効率を高めるために、燃料で使われているLNGに水素を混ぜる試みが行われているが、現在の水素の混合比率を約60%程度まで高めた事例が発表されている。今の水素ガスタービン技術の発展傾向を考えると、今後ほとんどのLNG発電所で水素を発電燃料として使用することになると思われる。

ここ9年間の韓国国内の特許出願動向を見ると、韓国電力公社など発電会社が水素ガスタービンに対する特許出願を主導しており、大宇造船海洋と日本の三菱がその後を追随している。一方、現在のガスタービン市場をリードしているシーメンス(独)、アルストム(仏)や斗山重工業の特許出願動向は低迷しており、明確な方向性は示されていない。

しかし、多くの専門家が2030年ごろには、水素ガスタービンの普遍化および商業化が可能になると予想しており、この技術分野への投資は、技術発展の初期段階で独自のコア技術を先取りすることができる良いチャンスである。

水素ガスタービンに関する特許出願を技術内容別で見ると、①石炭などの化石燃料から抽出された水素を利用する技術、②燃料電池と水素ガスタービンを統合して発電する技術、③高速火炎伝播の特性と高位発熱量を活用するためのLNGと水素の混合比を決定する技術、④水素燃料噴射ノズルの設計、⑤燃焼室の配置と形状設計に関するものが中心となっている。

今後、生産した水素を輸送、貯蔵する技術とともに、ガスタービンから発生する公害物質である窒素酸化物を減らすためにLNGとの混合比、燃料噴射ノズルおよび燃焼室の構造改善に関する方向に技術開発が展開されると見込んでいる。

韓国政府は、2019年に水素経済という名称でデータ、人工知能とともに3大次世代戦略の投資分野として選定し、世界最高水準の水素経済先進国を目指しているが、このような取り組みに水素ガスタービン分野が一助できると予想している。

※2019年1月17日。水素経済の活性化ロードマップ(韓国産業通称資源部) 特許庁の動力技術審査課長は、「現在、水素ガスタービン関連の年間出願件数は10件未満に過ぎないが、水素経済への関心向上および関連インフラの拡充に伴い、今後、この技術分野の特許出願は、ますます増加すると見込まれている」と述べ、「それとともに、現在取り組んでいる温室効果ガスやPM2.5の削減、そして化石燃料へのエネルギー依存度の減少を通じたエネルギー自立化にも貢献できる」と強調した。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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