知的財産ニュース 地震被害、揺れを抑制して備える

2020年6月15日
出所: 韓国特許庁

慶州・浦項での地震以降、免震関連の特許出願が活発

韓国気象庁の観測以来、最大規模を記録した慶州・浦項での地震以降、小規模地震の発生頻度が増加している。特に全羅南道の海南では、4月26日から1ヵ月間で地震が75回観測された。このような状況では、地震の防災技術への関心が高まるのは当然である。長い間、地震防災技術の主流は「耐震設計」であった。文字通り地震に耐えられるように建築物を頑丈に建てることである。しかし、1995年に発生した神戸地震では、耐震基準を満たしている建物の中で、約8%が破壊された。その後、地震に対抗するより柔軟に対応することを目的とする「免震設計(※)」が耐震設計の代案として注目されるようになった。

※免震設計:建物と地盤の間に別の構造物を設置して地面の揺れが建物に伝達されないよう低減する設計

韓国特許庁は最近、免震技術の特許出願が活発に行われていると発表した。

免震関連の出願は、大きな地震が発生した後に急増すると把握しており、東日本大震災が発生した2011年に32件で頂点を取ってから減少傾向を見せ、慶州地震が起きた2016年から増加し、浦項地震直後の2018年に最高水準(年間40件)を記録した。ただし、2019年から再び減少傾向に転じ、地震直後に高まった関心が長続きしないことが分かった。

最高値を記録したのは鼓舞的なことであるが、持続的な関心と研究が、技術の進歩に不可欠な要素であるという点では、残念な部分である。

一方、韓国初の免震技術の出願は1988年、日本のS社が出願した「周囲拘束型の免震装置」であり、1990年代までは、日本などの海外からの出願が全体37%で大きな割合を占めていた。しかし、2000年代に入ってから内国人の出願が急増し、外国人の割合は6%台に減少したことで、免震技術の国内化が行われていると把握される。

また、内国人も、他国で特許権を取得するために海外に出願しているが、1990年代以前には1件に過ぎなかった海外出願が、2000年代には6件、2010年以降は11件と徐々に増加していることが分かった。ただし、同期間の全体出願の増加傾向には(12件→231件)及ばず、海外進出に対する高い関心と支援が必要である。

分野別の出願動向をみると、地盤と建物を分離する「免震支承(※)」に関する出願が87%で他の分野(※※)に比べて高い割合を占めており、細部的には地震の復元力を強化する技術とゴムの老朽化を最小限に抑えて、メンテナンスコストを削減する技術が中心になっていると調査された。

※地盤と建物を分離する免震構造の核心部
※※エネルギー散逸装置3%、施工法2%、その他の周辺技術8%

その事例として、I大学の産学協力団は形状記憶合金を使用して、地震後の永久変位の発生が防止できる「自動復元型地盤隔離免震装置」を出願・登録し、また、韓国国内の中小企業H社は品質管理を要する支承用のゴム部分を最小化した「組合型地震隔離装置」などを出願・登録している。

特許庁の住宅基盤審査課長は、「慶州と浦項で発生した 規模と同じ地震は、いつでも発生しうるという声が高まっている」とし、「今後発生する可能性の高い地震に備えて、韓国も免震技術に対する継続的な研究と施工ノウハウの蓄積が必要である」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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