知的財産ニュース 損害賠償額の現実化に向けた特許法改正案、国会で可決

2020年5月21日
出所: 韓国特許庁

損害額の算定方式を改善し、3倍賠償制度の効果を最大化する見込み

中小ベンチャー・スタートアップ企業のイノベーションアイデアに対する保護強化を期待

知的財産先進5ヵ国のなかで唯一の特許侵害損害賠償体系を構築

韓国特許庁は、特許権者の生産能力を超過する特許侵害者の製品販売に対して損害賠償を適用する特許法一部改正案が20日(水曜)に国会本会議で可決され、2020年12月から施行される予定であると21日に明らかにした。

現行の特許法では、特許権者の製品生産能力が100個である場合、侵害者が1万個の侵害製品を市場に販売しても、特許権者本人の生産能力(100個)を超過する9,900個の製品については、まともな損害賠償を受けることができなかった。

不動産とは異なり、知的財産権は権利者自ら特許製品を生産しつつ、第3者にも特許権を使用するようにして実施料を受け取ることができる特性を持つ。しかし、現行の特許法では、このような知的財産権の特徴が正当に反映されておらず、この問題は中小・ベンチャー企業を中心に提起されてきた。

改正法が施行されれば、特許権者はこれまでの損害賠償の対象ではなかった残りの9,900個に対しても、特許発明の実施による実施料を侵害者から追加で補償を受けることができる。

今回の特許法一部改正法は、当初は侵害者の利益全体を特許権者の損害として認めることが主な骨子として発議されたが、国会議論の過程で、企業、法院行政処との協議を経て特許権者の生産能力の範囲内の販売数量については現行通りにし、超過した販売数量は特許発明の合理的な実施料で計算して、それを合算するようにした。

※(現行)特許権者の生産能力範囲×単位当たりの利益額
※※(改正)特許権者の生産能力範囲×単位当たりの利益額)+(超過分×合理的実施料率)

米国は既に、このような算定方式を1940年代から判例として認めており、日本も特許法を改正して2020年4月から、認めている。今回の改正内容のように損害額を算定しながら、特許侵害に対する3倍賠償を一緒に運営する国は米国に次いで、韓国が2番目である。特に、全世界の知的財産をリードする先進5ヵ国(日米欧中韓)のなかで、特許法に今回改正された損害額の算定方式と3倍賠償をすべて明文化した国は、韓国が唯一である。

注目すべき点は、損害額の範囲を拡大する今回の制度改善と、2019年7月から施行している特許権侵害の3倍賠償制度が結合されることである。改正により、損害賠償額が現実化となれば、3倍賠償額も自然に増額されると見込まれる。それにより、これまでの特許権保護の限界によって、滞っていた特許技術取引および知的財産金融の活性化を促進する効果も期待される。

一方、特許庁は、訴訟過程で侵害者に偏在している侵害および損害額の立証資料を特許権者がより確保しやすくする、「K-ディスカバリー制度」の導入も進めている。

韓国特許庁長は、「今回の改正法が第20代国会最後の本会議で可決され、損害賠償体系の基礎工事を完了したことにその意味があり、全世界で最も強力な特許権の保護体系を備えたことが何より意味深いことである」とし、「本改正により、韓国もこれから知的財産を適正価格で取引できる公正な文化が定着され、今回の制度改善がスタートアップおよび中小・ベンチャー企業を堅実に成長させる礎になることを期待している」と述べた。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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