知的財産ニュース 特許出願の際に自由形式の「臨時明細書」提出が可能となる

2020年3月30日
出所: 韓国特許庁

研究開発後の論文、研究ノートなどをそのまま提出して特許出願日を迅速に確保する

韓国大手企業A 社は、2018年初めに標準技術に対する特許を迅速に出願するために国際標準化会合において提出する技術書をそのまま出願できる方法はないのかという特許庁に問い合わせたが、特許庁では定まった出願書式に従って提出するように規定してため、提出が許容されなかった。そこで、A社は迅速な特許出願日の確保のために米国の仮出願(Provisional Application)のような形式に制約のない明細書の提出ができる制度を設けてほしいと要請した。
※米国は仮出願時に形式の制約のない明細書を提出した後、1年以内に正規の出願に転換すれば仮出願した日付を認めてもらえる。

韓国大手企業B社は、国際的に特許出願日を迅速に確保するために米国の仮出願制度を利用して米国に2017年11月に特許を先に出願した後、これを基盤に条約優先権を主張して韓国国内に2018年11月に特許出願する戦略を使った。
※特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)の加盟国に出願した特許を韓国に再度出願しながら条約優先権を主張する場合、最初に出願した国の出願日を認めてもらえる。

韓国特許庁は韓国企業が特許を迅速に出願できるようにこれまでの明細書書式に従わずとも、発明の説明を記載した「臨時明細書」を提出できる制度を設け3月30日から施行すると明らかにした。

特許は世界で最も早く発明を出願した人にその発明の独占権を与える制度であるため、企業間で類似な技術を他の企業より先に特許出願するための競争が熾烈である。

しかし、これまでは特許を出願する際に規定された書式と方法に従って作成された明細書を提出しなければならなかったため、論文などの研究結果を明細書形式に再作成するのに時間がかかり、迅速な出願ができなかったという意見が多かった。

※特許出願の際に提出する明細書は、特許法施行規則別紙第15号の書式に従い(規則第21条第2項)、電子出願時の書式の各項目を入力しなければ提出不可

そこで特許庁は特許や実用新案を出願する際に、これまでの書式に従わず、自由形式の臨時明細書提出ができるよう特許法・実用新案法の施行規則を改正した。

ただし、臨時明細書を提出した状態では特許審査が受けられないので、当該発明に対する特許を受けるには出願日から1年以内に優先権を主張し、再度出願して臨時明細書を提出した日付で出願日を認めてもらう方法が勧奨される。あるいは、臨時明細書を提出した日から1年2カ月以内に正式明細書を再度提出する方法も可能である。

特許庁は今回の制度改善に合わせ、臨時明細書で提出できる書類をその形式にこだわらずにPDF、JPGなど一般的な電子ファイル(※)であればすべて可能とする電子出願システムを改善した。従って出願人は論文・研究ノートなどに記載された発明を別途の修正作業なしでそのまま提出することができる。

※提出可能なファイル形式:PDF、DOC、DOCX、PPT、PPTX、HWP、JPG、TIF

このように、特許明細書の提出要件が緩和されることにより、韓国国内での研究結果を持ってすぐ特許出願することができるようになり、産業界で活発に利用されると予想される。

特許庁長は、「従来は明細書を作成する時間が別途必要であり、特許出願日を迅速に確保することが難しいという企業からの意見が多かった。今回新たに設けられた臨時明細書制度を活用すると、韓国の企業が開発した技術に対しても、優先権を主張して出願日を認められるなど、より効果的にイノベーション技術を守ることができると期待している」と明らかにした。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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