知的財産ニュース 大韓弁理士会ホン・ジャンウォン新会長、「現場で変化に対応して行く」

2020年3月19日
出所: 電子新聞

大韓弁理士会が前例のない変化に直面している。 1946年に大韓弁理士会の創立以降、初めて40代の会長時代が切り開かれた。

主人公は、ホン・ジャンウォン新会長。彼が候補として出馬したとき、このような結果になると予測した人はほとんどいなかった。

ホン会長は、「変化を求める会員たちの切実な思いが反映されたのではないか」と解釈している。

彼は、弁理士を取り巻く環境が歪曲されており、不合理な慣習が蔓延していると評価した。評価業務のような特殊業務は侵害され、その反面訴訟代理といった弁理士の権利はまともに行使できないということである。特許出願手数料においても米国、日本のような先進国との格差はますます広がっており、東南アジアの国々と比べても半分程度に過ぎないと指摘した。

また、「全員が問題意識を共有しているが、変化に向けた動きが弱かったのは事実である」とし、「任期中に弁理士が直面している問題点を明確にして改善するために、地道かつ徹底に対応していく」と述べた。

彼は、会員が権益増進の変化を肌で感じられるよう、さまざまな措置に踏み切る予定である。そして、任期の2年間の給与を協会に返納することにした。値上げが決まっていた会員会費の件は保留にする。

彼は、「弁理士会の財政悪化という指摘を看過できなかった」とし、「会費は出しても惜しくないと考える時に値上げすべきであり、今すぐ値上げするのは会員の負担を重くするだけである」と説明した。

ホン会長は、自分の長所として「現場感と推進力」を、短所として「経験値が低い」ことを挙げた。

「30代から50代を中心とする幹部体制を整え、経験値の高い弁理士の先輩を適材適所に配置して疎通し、助言を求める」と述べた。

また、弁理士組織での自浄努力も必要であると話した。

彼は、「非弁理士のことはさておき、弁理士自ら低価格競争に参入した」とし、「市場秩序を正すために、無料相談、低価格競争などを回避する雰囲気づくりを進めていかなければならない」と力説した。

40代のホン会長の一挙一動に注目が集まっている。

Q.新会長選出への感想と抱負は。

A.40代の会長という略歴に責任感を感じている。弁理士会に新しい風とエネルギーを吹き込ませたい。出馬を決心した理由も変化の必要性を感じたからである。弁理士業界は歪んだ現実に対する問題意識を持っていながら、変化のために行動しなかった。現場に詳しい人が先頭に立って、変化を導かねばならないという思いで出馬したが、これから実践の領域に足を踏み出したところである。

Q.会員から選ばれた理由は何だと思うのか。

A.報酬体系など弁理業務環境の改善や、弁理士法を改正することは、過去と未来の候補全員に適用されるアジェンダである。ただし、私の場合は、「今できることをする」というメッセージを伝えるために努力した。小さな成功が重要である。小さな成功によって、プライドを持つようになり、協会への関心も高まると思う。難しいからといって、最初から複雑に考えることなく、些細なことから着実に解決していくつもりだ。

Q.弁理士会の声と力を一つにするための腹案を持っているか。

A.弁理士会、業界の内部にさまざまな意見があると思う。弁理士のように分析的で知的な特性を持つ業界は少ない。また、弁理士が取り扱う法律のように頻繁に変わる法律はないと思う。それほど鋭くて正確な感覚を持つほかなく、関心のある事案については意見がさまざまな集団である。したがって意見や立場が異なり、激しく議論されても、これは自然な弁理士会のエネルギーであると考えている。

このエネルギーをどうやって一つの大きな力として集め、目標のために使うのかが課題である。そのためには、目標を明確に設定することが重要である。今回の執行部は、多くの弁理士が直面している業務環境改善の課題、不公正行為の根絶などを通じて肌で感じられるような、成果を出すことが最優先の目標である。

次の目標は、弁理士の社会的地位、存在感を高めることである。弁理士が産業発展の尖兵に例えられることもあるが、産業界で弁理士会の影響力はかなり微々たるものであるのが事実である。多様な産業分野で弁理士の活発な活動が求められている。弁理士がさまざまな領域に進出できるように、弁理士会が積極的に仲介の役割を果たさなければならない。

Q.会長選挙の時、強い弁理士会を作ると発言した。強い弁理士会とは、具体的にどういう内容なのか。その実践戦略は何か。

A.会員の支持と関心があってこそ存在するのが弁理士会である。弁理士会で何かを進めようとするとき、執行部だけが動くのではなく、会員もそれを受けて参加しなければならない。そのために会員に対し、会費減免などで弁理士会の意志を示す一方、業界の慢性的な悪弊を協会レベルで規律したい。どうしても弁理士業界はサービス業であるため、顧客から不当な要求があっても受け入れるしかないケースが多い。個人ができなければ協会が前に出て不当だと言ってあげるべきだと思う。困っている時に手を差し伸べる協会であることで会員の関心と支持を集めようとしている。

Q.就任後、すぐ解決すべき課題は?

A.低価格の報酬、未収金などといったパワハラ、非弁行為に対する不正事例を収集する予定である。クライアントによるパワハラとは、最近業界に蔓延している低価格報酬の慣例のようなことを言う。

政府出資研究所、産学協力団から弁理士が受ける出願の平均収益は70万ウォン台である。企業からもらうのは150万ウォン程度であるのに対し、約半分くらいの金額である。大手企業が負担する出願費用も海外の30%程度であるため、ひどい単価策定であることが分かる。相当長い期間で単価が固着しているため、調整することも容易ではない。政府の研究開発(R&D)の予算が24兆ウォンに至っているのに、特許費用は過去のままである。R&Dの最終産物が特許なのにも関わらず、関連投資をしないから、成果物も不十分なものだ。弁理士も、このような問題を知っていながらも、変化をけん引しようとする動きが弱かった。

非弁行為とは、コンサルティングや調査業務を弁理士でない者が行う行為のことを言う。これは明らかな規定違反であるが、弁理士法には処罰できる規定が設けられていない。適正収益の確保はその次の問題かもしれない。職域を保護するべきである。

Q.無料サービスの禁止キャンペーンを行うと発言したが、どういう趣旨なのか。

A.社会的弱者を配慮した公的相談窓口は維持すべきだと思う。多くの弁理士がボランティアでやっている。問題となる部分は、集客のために適正価格を諦め、競争的に無料サービスを提供する行為である。特許出願相談の依頼があると、それを受けるために競争する。他のところが無料だから、自分も無料にしなければならないと思っている。健全な法律サービスは、適正価格に基づいて行うべきである。それにより、サービスの品質が良くなる。無料の先行調査も同じである。

Q.最も重点を置いている法案は何か。

A.重要度ではなく、優先度で決める必要があると思う。法案は通過されないと意味がない。それを考えて、まずは抵抗の低い法案から推進しなければならない。弁理士資格を持っていない者による海外商標出願斡旋などを禁止する弁理士法の改正案を優先的に推進したい。消費者すなわち、一般国民の被害は明白であり、非資格者の事実上の法律代理という点で、弁護士協会も同じスタンスを取ると思っている。

Q.弁理士業界と特許庁との関係も非常に重要だが、これからどのような関係づくりをして行くか。

A.どう助け合うのかを明確に認識しなければならない。なぜお互いに必要な存在なのか、具体的なアジェンダを確立すべきである。「法律案の議決のためにお互いに助け合うことができる」という一般論では不十分である。具体的なアジェンダを中心に議論が行われれば、相互協力関係がより緊密になっていくと思う。

そうすることにより、特許庁と連携できる事業や政策が明確になり、役割も決まる。損害賠償額現実化の法律議決や知的財産庁の設立などについて協力をしていく考えである。

Q.事業費の不足などのため、前任の執行部が値上げしようとした会費を元に戻すと約束したが、財政には問題ないか。

A.弁理士会の事業費はいつも不足している。実質的に、ほとんどの予算を会費に依存していて、かなりの金額は人件費で支出する。会費を値上げすると財政の余裕はある程度確保できるが、足りない事業費が一気に余裕になるわけではない。大きな助けになるには限界がある。根本的に会費を払いたくない会員に対し、会費をもっと出せということは、結果的には協会への無関心が高まり、会員たちが加入を忌避する要因になると思っている。

会費の値下げは、会員特典を優先にするという、41代執行部の強い意志の表現である。会費を値上げする前に、優先的に協会の収益性を上げるのを目標にしたい。41代執行部は、弁理士会の収益事業を拡大するために、充実した企画力を備えようとしている。このような方向性に基づき、人選をしているところである。

Q.協会は構造的な特性がある。意欲的に変化を推進しても、結局、保守的に変わるケースが多いのではないか。

A.それに同意する。執行部や会長になると、どうしても保守的になる可能性が高い。しかし、今の幹部や執行部の方向性、政策は格別なものではない。弁理士の職域を守り、正当な権利を行使するための動きである。それは、基本中の基本だと思う。

「ホン・ジャンウォン弁理士」

1972年生まれ。延世大学化学工学科を卒業。2001年、第38回弁理士試験に合格し、現在特許法人ハナ代表弁理士として活動している。2018年知的財産権課題改善特別委員会の委員長を歴任した。弁理士資格を取得する前にはLG-EDSシステム(現LG CNS)で勤務した。著作権などの知的財産への興味を持つようになり、弁理士試験を受験した。

ホン会長は、「行動家」としてよく知られている。問題意識だけ持っていれば、状況は何も変わらないという持論により、変化の先頭に立って行動することで有名である。

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