知的財産ニュース 韓国企業の商標における無断商標先取りのモニタリング、ASEAN地域に拡大

2020年2月13日
出所: 韓国特許庁

中国、ベトナムに続き、タイへと調査対象国家を拡大

韓国のフライドチキンのフランチャイズであるネネチキンは、最近海外でのKフードの人気を追い風にシンガポールに初店舗をオープンするなど、海外進出の拡大を準備していたところ、韓国知識財産保護院から他人が既に類似商標をベトナムに出願しているという情報と、対応策に関する情報を聞いた。それにより同会社は、現地の特許法律代理人を選任してベトナムに商標出願書を提出した上に、無断先取り出願に対する異議申立書を提出することで、積極的に対応することができた。

特許庁は、韓国企業の商標を海外で無断先取りする行為に対応するため、「海外での無断先取り疑い商標の情報調査」を中国やベトナムに続き、タイにまで拡大すると発表した。

「海外での無断先取り疑い商標の情報調査」は、韓国企業の商標に対する無断先取りの有無を把握し、該当企業に通報することで、優先権の主張、異議申立などを利用して早期対応できるように支援する事業である。

2015年から中国を対象にしてモニタリングを施行しており、2019年のベトナムに次いで、2020年にはタイなどASEAN主要国へ対象地域を拡大する計画である。

無断先取りモニタリングの結果を見ると、中国では2019年の1年間に商標を多数先取りしている者(※)により韓国企業176社、計738件の商標が無断先取りの疑いがあることが明らかになった。

※現地で韓国企業の商標を3件以上の無断先取りしている者

先取り商標はネパ()、モノクロム(モノのクロムブランドロゴ )など衣類、人形メーカーなどの被害が把握され、先取り商標の言語種類を見ると英文が517件で最も多く、ハングル163件、中文の5件の順になっている。

業種別では、フランチャイズが130件(17.6%)、食品が117件(15.9%)、化粧品が58件(7.9%)、衣類が31件(4.2%)で調査され、フランチャイズや食品業種の被害が目立っていることが分かった。

そのため特許庁は、中国内で最も被害が大きいフランチャイズ業種を対象に、「中国内で韓国企業の商標を多数先取りしている者に対する深層分析報告書」を発刊し、韓国企業自ら商標先取りへの対応戦略を確立できるように支援した。

※IP-NAVi(www.ip-navi.or.kr)- 紛争情報 - 海外無断先取り疑い商標現況 - マイブランドの保護 - 関連資料で確認

ベトナムでは2019年の1年間に商標を多量に先取りしている者により、韓国企業33社の計66件の商標が無断で先取りされていることが把握され、言語は英文が計51件で大半を占めており、ハングルは15件であった。

先取りされた商標は、ネネチキン(ネネチキンのブランドロゴ)、ハンセム(ハンセムのブランドロゴ)のような食品、フランチャイズが被害を受けており、既に現地の商標として登録されているトムアンドトムズ(トムアンドトムズのブランドロゴ)は、第3者により類似商標が出願公告されたことが把握され、ベトナムサッカー代表の韓国人監督の人気に便乗した名前を商標として使用した事例もあった。

業種別では、食品(18件、27.3%)が最も多く、その次に化粧品(11件、16.7%)、フランチャイズ(4件、6.1%)、電気・電子(2件、3.0%)などの順で発見された。

特許庁からの調査結果と、優先権主張、異議申立てなどの対応策を案内された企業は、異議申立書を提出したり、商標権を現地に出願するなどの措置を取っていることが確認された。

2020年には、K-ブランドの需要が急増しているタイ(※)やベトナムを対象に、先取り疑い商標の情報調査を隔月に実施し、韓国企業に商標先取りの疑い事実を速やかに伝達し、早期対応できるよう支援する計画である。

※タイの対韓国化粧品輸入は、ここ5年間年平均32.8%増加 「2019、タイ進出戦略、KOTRA」
※※タイへの輸出額:(2016):64億8,000ドル→(2017):74億7,000ドル→(2018):85億ドル「韓国統計庁」

一方、2020年から中国内の先取り商標の情報調査における情報提供回数を従来の月1回から月2回に拡大する予定である。

それにより、被害企業が商標の先取り事実を迅速に認識することができ、異議申立など企業が適時に対応するための準備期間を従来の2倍である4週間まで延長できるよう支援する。

[中国の商標先取りに対する早期警報体系周期の変更] 中国の商標先取りに対する早期警報体系周期の変更

特許庁の産業財産保護支援課長は「最近、韓国企業の商標を多数先取りしている商標ブローカーの活動が中国だけでなく、ベトナム、タイなどASEAN国家でも発生している」とし、「韓国企業が海外に進出する前に、必ず現地での出願を先行する必要があり、もし、商標の先取り被害が発生した場合には政府の支援事業を通じて積極的に対応する必要がある」と述べた。

また、「特許庁が支援している国際知財権紛争への対応戦略、共同対応協議体のような連携事業を通じて商標先取りによる被害を最小化できるよう支援する計画である」と述べた。

海外での商標先取り被害相談および支援事業のご案内などに関する詳細事項は、海外K-ブランド侵害申告センター(www.ip-navi.or.kr/kbrand/kbrand.navi)、韓国知識財産保護院海外戦略チーム(+82-2-2183-5896)に問い合わせすればよい。

ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム

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