知的財産ニュース 企業の80%、「特許訴訟における強力な証拠確保制度が必要」

2020年2月13日
出所: 韓国特許庁

韓国の企業は、特許侵害訴訟での証拠確保において多くの困難を経験しており、より強力な証拠確保制度を要求していることが分かった。

韓国特許庁は、2020年1月に企業、弁護士、弁理士などを対象に、ここ5年間の特許侵害訴訟のための証拠収集確保手続きの利用経験と制度改善策に対する意見を調査(※)した。

※(調査期間)2020年1月6日〜31日、(対象)企業160社、弁護士38名、弁理士24名の回答(訴訟 経験、訴訟代理または支援経験のある企業50社、弁護士20名、弁理士17名)、(調査題名)特許侵害訴訟における証拠収集の実態調査

その結果、企業の88%は、特許侵害訴訟を提起するための証拠収集に困難を感じていると回答(※)した。最も大きな理由は、侵害行為が相手の工場など被害者が確認しにくい場所で行われているため、把握できないということだった。その他の理由としては、侵害物品に対する具体的な分析や損害額に関する証拠の確保、営業秘密による証拠収集への難しさを挙げている。

※企業の88%(50社のうち44社)、弁護士100%(20名のうち20名)、弁理士94%(17名のなかで16名)が回答

また、訴えを提起した後の裁判過程でも証拠の確保が厳しく、企業の80%(※)は、現制度より強化された証拠確保の手続きが必要であると回答し、弁護士の90%以上が制度強化の必要性に同意した。

※企業80%(50社のうち40社)、弁護士90%(20名のうち18名)が回答

具体的な改善策としては、現行制度をより実効性のある制度に改善することが最も重要(企業、弁護士全員100%)だと回答した。新たな制度の導入方法について、企業は第3者の専門家による証拠調査制度の導入(43%)が最も必要だと答えたが、弁護士は訴訟中の資料および資料リストの交換制度の導入(67%)を望んでいることが明らかとなった。

特許訴訟において営業秘密に当たる証拠を誰まで閲覧可能にするかの質問(※)については、企業は「法院と法院が指定する専門家 」まで閲覧を許可すべきという意見が多い一方、弁護士は「相手の代理人」も閲覧範囲に含むという意見が多数であった。

※現在、特許法132条によると、法院が営業秘密の閲覧可能な範囲または閲覧可能な者を指定できる。

一方、企業の過半数は現行の民事訴訟法と特許法の証拠確保制度(※)にあまり詳しくないと回答し、特許侵害の事実を立証し、損害賠償を受けるための証拠確保制度に対する認知度や利用率が低いことが分かった。

※文書目録提出命令、資料提出命令、具体的行為態様の提示義務、秘密保持命令など

特許庁の産業財産保護政策課長は「故意的特許侵害に対する3倍賠償制度が導入され、侵害事実と損害額立証の重要性がより高まる」とし、「今回の調査結果に基づいて、低コスト・高効率の証拠確保策を設けるために、各界の意見を取りまとめていく」と述べた。

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